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予想外に着物を着せられ、帯の苦しさで吐き気まで・・・実は朝の運転から緊張していたから頭もガンガンで倒れそうだった。
でもここはお仕事だから我慢するしかない。
何とか気持ち悪いのを誤魔化しながらお茶室に入ったら、西門さんが私を見て少しだけ驚いたようだった。

何処か変なのかと自分の姿を見たけど今日の着付けは志乃さん・・・私じゃないもん!と思いながら彼の正面に座った。


西門さんは1人お稽古をつけたばかりだから勿論着物のまま。

男の人の着物姿って西門に来るまで見ることがなかったから初めは新鮮だったけど、慣れてくると似合う人とそうでない人がいるんだなって思う。
この人は勿論似合う人・・・さっき部屋で見た時よりやっぱりお茶室での彼は中々色っぽい。

いや、いつもエロいけど特に色っぽい。
色っぽいけど男らしくて凜々しい・・・細い人だけど着物だから少し身体が大きく見えるから?何となくお嬢様達が逆上せるのも判る気がする。

そんな色気200%の西門さんが真面目な顔して私の前で姿勢を正した。もう腰は痛くないのかな?


「さっきの話だが、牧野が美作で茶を教える訳じゃないが、その場に居て何か質問されたら答えられないと俺の恥。だから急いで茶席の流れを覚えろ。この前茶道教室で見せたけど、騒々しくて指導出来なかったから暫く1対1で稽古する。いいな!」

「はい。宜しくお願い致します」

「ん、これも業務だからな・・・まずは稽古の意味からだ」
「・・・は?」


稽古の意味?お稽古って練習でしょ?それの意味からってなに?
私がキョトンとしていたら、またここでも通訳が必要な日本語の連発だった。


「稽古とは『古(いにしえ)を稽(かんが)う』という字の通り、先人の経験に習う事だ。身体全体で古くからの振る舞いを身に付け主客が心を通わせ礼をつくし、心身を養う。いいか?」

「・・・・・・はい(何の事だかさっぱり)」

「茶の湯は、点前の手順を覚えればいいってもんじゃない。点前や身のこなしを反復して稽古し、体と心を鍛え礼節ある人格を作ること、判ったか?」

「・・・・・・はい(礼節ある人がいきなり人にディープキスすんの?)」

「まずは割稽古(わりげいこ)からだ。点前作法を構成するひとつを集中して稽古し身につける。
割稽古では帛紗をさばく、棗、茶杓を清めるって言う所作を稽古だ。清浄な茶室で道具を清める事は自分自身の心を清めることだと思え」

「・・・・・・はい(それを稽古してきたのに心が汚れ過ぎてない?)」


お話しの最後は利休道歌。
千利休の教えを初心者にもわかりやすく歌にしたものなんだそうだけど『稽古とは一より習ひ十を知り、十よりかへるもとのその一』・・・割稽古はまさに「その一」なんだそうだ。

・・・全然判んない。




************************




返事をするのはいいがイチイチ疑問符つけたような顔しやがって・・・何をそんなに考えてんだ?っ思ったが時間もなかったから稽古を続けた。

あきらにどんな場所でやるのか聞いてなかったが恐らく会議室のテーブルだろう。
それなら歩き方やお辞儀の仕方まで言う必要もなかったが、これが入門したヤツが1番始めにギブアップする細かい作法だからと、そいつから始めることにした。


「じゃまずは歩き方から。で、廊下に出たら襖の開け方を教える」
「歩き方・・・?私、歩けますけど」

「そうじゃねぇよ!畳の縁や敷居は踏まずに畳一畳を約六足!半畳は三足で、歩く幅は自分の足幅ほどだ。部屋の中に入る時は必ず左足から。さ、やってみろ」

「は?」ってな声をあげたが俺が睨んだら立ち上がり、1度廊下に行ったが、その時既に畳縁を踏んでてアウト。「人の話を聞いてたのか?」って言えばすげぇ嫌そうな顔をした。

「襖は必ず座ってから開けろよ。もう何度かやってると思うがもう1度言っておく。
襖の引き手にかけて三分の二ほど開けたら、次に反対の手を襖の枠の下から30cmほどの所にかけて開け切る。閉める時も同じように手をかえて閉め切るんだ」

今度は「ん?」って声が聞こえていつまで経っても襖は開かなかった。
どうやら廊下でこんがらがって手が空中で舞ってたようだ。


「今度は正座の仕方だ。表千家では男の場合は両膝を安定する程度に広く開けて、女は両膝の間に拳が入るくらいあける。右足の親指を下に、左足の親指を上にして足の親指だけを重ねろ。猫背にならないようにな。手は亭主は両膝の上に置くんだけど、それ以外は組んで膝の上だ。右手左手どちらが上でも構わねぇから」

「へ?」って声と共に座ったがモジモジしてばかりで落ち着かない。
「何してんだ?」って聞いたら「足の親指が何処にあるかわかんない!」って泣きそうになってた。ま、そんなもんだろう・・・。


「座礼の時、女は両手を約7~8㎝開けとけ。男は20㎝程度だけどな。頭を下げるんじゃなくて体全体を前に下げる。30度くらいの角度でいいから」

「???」って顔して座礼をしたが、頭だけを下げるなと言ったら腰を反りすぎてケツを突き出してた。
「茶室でエロい礼をすんな!」って言ったら腰を反り過ぎて「いたたたた!」と身体をくねらせた。そしてそのまま足を崩して横倒れ・・・せっかくの着物が台無しだった。


「やる気あんのか?」
「やる気はあるけど難しいんですって!それじゃなくても着物が苦しくて・・・」

「牧野ぐらい胸がなかったら苦しくねぇだろう」
「胸が苦しいって言うより胃が苦しくて・・・」

「お前、胃が出てんのか?」
「判んないですよ、胃の出っ張りなんて人と比べた事もないんだから」


そりゃそうだ。
こりゃ着物に慣れさせるためにも週に何度か着せねぇとな・・・と、溜息しか出なかった。

その後は帛紗捌きを教えたが、まるで折り紙折ってるみたいで全然出来ない。
とうとう隣に並んで怒鳴りながらの稽古になって、俺の声を聞いた志乃さんが様子を見に来る始末。
「それでは時間がある時に私が教えましょう」、と言ってくれたので今日の稽古はここで終了・・・って、茶に関する事は何ひとつ出来なかった。


「もう着物脱いでもいいですか・・・うぇっ!
「・・・・・・いいぞ(カエルの正体はこいつかっ!)」



**



そんな稽古を何回かやるうちに部屋の入り方と座り方はマスターした。
その度に着物に慣れるために着せてやり、俺が1日中本邸で仕事の時にはその姿で過ごせるようになった。

あれからも雪乃と真凜は相変わらず仏頂面で稽古にやってくるが、牧野に絡むことはなかった。
「まだ居たの?」って言葉はあったようだが、「お気に召さない顔が出迎えて申し訳ありません」と強気に言い返すと聞いて笑えた。


「それでは成宮様、お気を付けてお帰り下さいませ」
「・・・あなたもしぶといわね、着物なんて着ちゃって。でも、和服って育ちが出るものよ?あなたなんかに似合わないわ」

「私もそう思うのですが若宗匠が選んで下さった着物なんですよ。今のお言葉、そのまま若宗匠にお伝えしますね」
「えっ?いや、総二郎様に言わないで!そのぐらい気を利かせなさいよ・・・ふんっ!」

「・・・はーい、お疲れ様でしたぁ~」


そんなやり取りをした後で「よーし、次はなんだ?」って、着物の袖をまくって秘書控え室に向かうのを今日も柱の陰から見ていた。

くくっ!やっぱり面白ぇ女だ。





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Comments 4

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2019/10/13 (Sun) 13:39 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/13 (Sun) 13:43 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。
あはは!邸内でね💦そうなのかもしれません。

多分お屋敷の人達は総ちゃんで笑ってるんでしょうね(笑)
それとも知らずご本人はつくしちゃんを見てクスクスしてるなんて、ある意味大馬鹿野郎の総ちゃんです♡

でも惚れさせて喜ぶ男ですから、なかなか自分からは言わないかも?(笑)
でも言われなかったらムカつくから、いきなり襲うかも?(笑)

やっと最近になって「私の・・・」の総ちゃんが抜けてきました。
ホント、シリアス書いたら取り憑かれたようになります・・・怖いわ~!



2019/10/13 (Sun) 22:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!それがあるんですよ。
表千家は右足の親指が上なんだそうです。裏千家はどちらでもいいとか。

畳を歩く歩数も微妙に違います。
座った時の手の置き方や、座礼の仕方もほんの少し違いがあるようです。
難しいですね~💦


うふふ!だんだん距離が近づいてきますよ・・・♡まだ先だけど・・。

2019/10/13 (Sun) 22:57 | EDIT | REPLY |   

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