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「・・・はい、判りました。では来週の生徒さんは6名ですね?そのように準備致します。それでは失礼します・・・。
もしもし、西門の秘書、牧野です!あぁ、先日はお世話になりました。入荷しましたか?はい・・・では伝えておきますので・・・え?持って来ていただけるんですか?助かります~!ありがとうございます!」


横浜の教室からの電話の後は茶道具のお店の旦那さん。
西門さんが頼んでいた「茶入」と「仕覆(しふく)」が入ったとの連絡。

陶磁器で出来た茶入と呼ばれる壺は濃茶を入れるもので、仕覆はその茶入を守る袋。
なんと7㎝ぐらいしかない壺なのに数万円して桐箱に入ってるんだとか!そして仕覆だって正絹で、これもお客様に見せるお道具のひとつらしい。その摩訶不思議な紐の結び方も決まってて、柄や色を楽しむとか・・・?

確かに綺麗だとは思うけど・・・って頭を捻る事ばかり。


スマホを机に置いた途端にまた鳴って、今度は工藤響子さん!
慌てて通話をタップしたら、名乗る前に怒鳴られたのが『この前頼んだ件はどうなったの?!』・・・私に名乗れと言うぐらいだから一応そっちも名乗りなさいよ!

「茶道会館で行う若宗匠の稽古予定ですよね?工藤さんのアドレスに送りましたよ?」
『はぁ?ちゃんと連絡して送ったの?もう探すのも大変だからもう1回メールして!あなたと違って1日にすごい数のメールが届くんだから教えてくれなきゃ判んないでしょう?!』

「申し訳ありません!すぐに送ります!」
『・・・ふん!だから直接総二郎君がいいって言ってるのに・・・すぐに送ってよね!』

「畏まりました!」


・・・・・・って、あなたが見てないんでしょーが!!💢

それを送ってからすぐに鳴る電話は西門さん。


「もしもーし!どうしたんですか?今は茶道会館じゃんなかったですか?」
『そこで雑誌の表紙撮影だ。お前、俺の部屋に行ってローテーブルに出してる角帯持って来てくれねぇか?やっぱあっちの方がいいと思ってさ』

「初めから持って行けばいいのに~!判りました、すぐに持って行きます!」
『走らずに急げよ』


も~~~~っ!!忙しいのにっ💢


だんだん要領ってもんが掴めてきたからやる事が増えてきたのに、西門さんが色々仕事を増やしてくれるから大変だった。
今度は自分が忘れたクセに取ってこい・・・ひと言『悪い』とか『申し訳ない』とかって言葉が出ないの?って思うけど、そんな事を愚痴ってる時間はないから急いで彼の部屋に走った。

走らずに急げよ?馬鹿言ってんじゃないわよ!
このお屋敷の広さを考えたらあなたの部屋と茶道会館は位置的に正反対なんだからね?チンタラ行ったら20分掛かるわよ!

誰も居ないと判っていても一応「失礼しまーす!」の声を掛けて中に入り、言われた通りにローテーブルの上の角帯を手に持った。


久しぶりに見た彼の部屋・・・あの時の場所が目に入ってドキッとした。

あそこで急に腕を引き寄せられてキス・・・したんだ。
凄く濃厚なヤツ・・・今でも覚えてるあの感触、この部屋の香り・・・彼の腕の強さ。


ちょっと自分の唇に手を当てて、その時の事を思い出してたら・・・身体の真ん中が熱くなってきた。


「はっ!こんな事してる場合じゃなかった!」

このお屋敷では私ぐらいじゃないのか?って思うような音を立ててドアを閉め、今度は正反対の茶道会館まで突っ走った。
そして「遅い!」と怒鳴られてしょんぼり・・・する暇もなく戻って仕事の続き!


「えーと!明後日のお茶会のお客さんの中にお誕生日の人が居たっけ・・・あぁ、この人だわ!お祝いの品物は・・・」

「くすっ・・・」
「・・・は?!」

笑い声が聞こえたかと思ったら堤さんが口元を押さえていた。
この人が笑うのは珍しい・・・どうしたのかと思ったら「牧野さんが楽しそうだから」だって。

「楽しくなんてないですよ!西門さんったら人任せで『アレやっとけよ』で終わるんですよ?まだ判んないことが多いのに!」
「でも自分でやれば早く覚えるでしょう?人のを見ているだけでは自分の習得には繋がらないものです。失敗しても自分で動けば判ってくることも多いですからね」

「そ、そうですけど・・・」

「これまで人に任せなかった総二郎様が任せてるんです。余程あなたに期待しているか・・・・・・」

「期待しているか?」

「・・・・・・何でもありません。先ほどの続きをどうぞ。誕生日プレゼントでしたね?事務室で西村さんが管理してくれていると思いますよ」
「は、はい!」


期待なんてしてないと思うけど。
どっちかって言うと失敗した私を叱ることに快感を得ているのでは・・・?

♪~♪~~

「はい!西門の秘書、牧野でございます!あっ・・・・・・判りました。では取りに行きますね!」


それは先日注文したオーダーメイドの靴。それが出来たとの連絡だった。




********************




「あぁ、靴が出来上がったって?」
「はい。だから仕事が終わったら取りに行こうかなって思って・・・・・・思って・・・るんだけど・・・」

「・・・・・・?」

今日最後の仕事が終わりかけた時に牧野がモジモジしながらそんな言葉を掛けてきた。
確かにそろそろ出来る頃だと思っていたが、なんでそんなに困った顔をしてんだ?


「あっ、もしかしたら金か?それだったら受け取りに行っても請求されねぇようにもう手続きしてあるけど?」
「あっ、そうじゃないんですけど・・・」

「んじゃ、なんだよ。まさかその歳になって1人で取りに行けねぇって言うのか?」
「そ、それも違うんですけど、いや、当たってるのかしら・・・?」

「は?分かり易く言えよ!どうした?」
「そのお店に行くまでの運転が怖いんです!車通りの多い場所なんで・・・だから・・・」


あぁ、そう言う事か。つまりは俺に連れて行けと・・・?

確かにこの2週間、アパートからここまでは無事故で来ている。しかも俺と外出する時も半分ぐらいは運転させているが比較的近距離で都心の複雑な道には向かわないようにしていたからな・・・。
あの店がある場所だと不安・・・逆にそう思ってくれるのは有り難いことか?

『よっしゃー!行くわよ!』ってぐらいの勢いで飛ばして行かれると怖いし。


「判った。じゃあついでに飯でも食いに行こうか?」
「えっ?それはいいです。アパートで1人で食べます」

「・・・・・・なんで拒否る?」
「だ、だって!また難しい作法を言われたら嫌ですもん。まだ覚えてないから・・・」

「じゃ、牧野んちで手料理食うか・・・」
「はっ?!嫌です!」

「まだ『今日はこれまで』って言ってねぇし」
「はぁっ?!そこまでを業務にする気?!」

「取り敢えず靴を取りに行こうか。そうじゃなきゃ爺さんが困るだろうから」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」


ギャアギャア喚くのを無視して駐車場に行き、牧野の車の運転席に俺が座った。
あれから秘書控え室に荷物を取りに行った牧野は既にエンジン掛けて待機してる俺を見て真っ赤になって、半分諦めたみたいに助手席に乗り込んできた。

「じゃ、行こうか」ってなぜか上機嫌で車を出す俺。逆に牧野は嫌そうな顔して口を尖らせたまま、可愛くない顔をしてほっぺたを膨らましてやがった。



**



「・・・どうですかね?」
「うわっ、本当に歩きやすいしピッタリ!既製品とオーダーメイドってこんなに違うんですか?」

「少し歩いてみてください。違和感無いですか?」
「・・・全然無いです!これで100メートル全力疾走しても脱げそうにない感じ!」


・・・そんな返事するから爺さんが吃驚してるじゃねぇか。
大興奮の牧野はそいつを受け取ると宝物みたいに抱きかかえて、さっきまで尖らせていた口はニンマリと笑ってた。

感情の宝庫だな、と思いながら爺さんにはもう2足を急かして店を出た。



「これから買い物ってやつか?」
「・・・・・・ホントにうちで食べるんですか?」

「俺はいいぞ?近くの料亭で講習にしても。あれ以来本格的に指導してねぇからな~」
「・・・はぁ、じゃあ買い物で」

「前に行ったスーパーでいいのか?」
「・・・・・・はい」



何でだろ・・・すげぇワクワクしてんだけど。
「今日はこれまで」が勤務時間・・・なかなか良いシステムだ。





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Comments 2

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2019/10/14 (Mon) 17:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

コメントありがとうございます。

あっはは!そんなの出来ないでしょーーーっ💦
総ちゃんがやったらヤバいでしょーーーっ💦

何かのリハビリじゃないんだから、そんなところで止めないでしょーーーっ💦


やってみようか?(笑)

2019/10/14 (Mon) 20:17 | EDIT | REPLY |   

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