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それからも牧野は本邸に居る間、着付けやら茶の稽古やらを続けていた。

着付けはなんとか帯を結ぶ前までは1人で出来るようになり、志乃さんの熱血指導が続いていた。
毎度聞こえるのは「姿勢が悪い!」だったから、その度にバシッ!と背中を叩かれる音が響いてて笑えた。
その練習に使ってる着物がお袋のお下がりで、1枚数百万のものもあるんだけど、それを話したら気絶するからやめておいた。

茶道は、と言えば・・・


「歩き方、立ち居振る舞いについては説明済みだから後は常時気を付けて自分のものにしろ。で、茶の方に入るけど、いきなりは無理だからまずは略点前から」

「略点前?」

「盆点前とも言うんだが、盆を使った簡略点前のことだ。盆の上に点前に必要な道具を飾り付けてから運び出し、盆の上だけで点前を進めるんだ。多分美作でもこんな方法でやると思うから」


表千家では盆の右寄り手前に茶器、左寄り奥に茶碗を置き、その上に帛紗の輪を右にして広げて掛ける。火鉢や風炉はいくらなんでも企業では無理だから鉄瓶。多分湯はポットを使うだろうから風情なんて微塵も無い。

「でもやることは同じだ。心構えも同じ。盆の上だからって気を抜いてするんじゃないぞ」
「はい、判りました」


帛紗捌きをして茶器、茶杓を拭き、盆の上右寄りに縦に置く。
茶筅を取って茶器の右寄りに置き、茶碗を盆の手前に寄せ、今日は鉄瓶を使うからそいつの蓋を押さえて茶碗に湯を注ぐ・・・って時に勢い余って盆の上にまで湯を掛けやがった。


「だからそこで集中しろよ!客の前で湯を溢してどうする!」
「だって、鉄瓶が重たい・・・」

「あのなぁ・・・稽古中に『だって』とか言うなって!」
「は、はい!」

「もう1回始めから!茶道は作法を見せるところから始まってるからな。緊張しても伝わるし、手を抜いてもバレる。何度も稽古して自分の感覚を覚えろ」

「・・・あの、質問してもいいですか?」

「ん?」
「私、本格的なお茶なんて点てないんじゃなかったんですか?」

「・・・・・・・・・流れを知りなさい」
「ですよね?」


確かにそう言った。
何故だろう・・・ついムキになって指導してしまった。



**



「なんで今度は華道なんですか?これも秘書に必要ってこと?」
「誰も師範免状取れって言ってねぇだろ?これも何かの時に俺が説明出来なかったら牧野がする。そうしたら『流石、西門の秘書は教育が行き届いてる』って評価になる、そう言う事だ」

「何かの時ってどんな時ですか?でも普通の人は秘書の説明なんて欲しくないと思うんですけど。西門さんの説明だから納得するんじゃないですか?」
「・・・・・・外国人の場合、秘書も茶人も区別出来ねぇから大丈夫だ」

「そんな時ってあるんですか?第一私、英語で話せませんし」
「つべこべ言わずに行け!」


牧野の稽古のあと、俺は1人ほど後援会の爺さんに稽古をつける事になっていたから、そのまま志乃さんに華道を教われと言ったら激しく抵抗。それでも有無を言わさず志乃さんに引き渡したら「本当に役に立つんですかぁ?!」って叫びながら二部屋奥の茶室に向かった。

まぁ、牧野の言う事の方が正論・・・花の事なんて茶席の茶花しか話題にはならねぇ。
この屋敷に出入りするなら華道が出来てた方がいいじゃん・・・ってそのぐらいの気持ちだった。



「・・・・・・若宗匠、如何ですかな?」
「結構でしょう。もう少しここで・・・」

   「牧野さんっ!!お花はそんな風に振り回してはなりません!」
    「で、でも大き過ぎてっ!こうでもしないと・・・!」


「「・・・・・・・・・」」

声がデカいっつーの!


「もう少しここでゆっくり茶筅を止めると泡立ちがなくていいかと・・・薄茶ですから」
「おお、そうですか。それでは・・・」

   「きゃあああーっ!どうして花の真下を切るのですっ!そこを切ったら生けられないじゃないですか!」
    「えっ!でも志乃さんが5㎝って・・・」
    「5㎝ってのは下からですっ!上から切ってどうするの!」


「「・・・・・・・・・」」

何やってんだ?あいつ・・・志乃さん、血圧上がるんじゃねぇの?


「今日は何やら賑やかですな・・・」
「・・・申し訳ございません。新入りが生け花の稽古をしてるのでしょうね」

   「いたあぁぁぁーーっ!」
    「自分の指を剣山に刺してどうするの!花を生けなさいっ!」

    「血が出たぁ~~!」
    「大袈裟なっ!ああぁーっ!畳に血がっ!」



大丈夫なのか?あいつの華道は・・・。




*************************




お茶とお花のお稽古が終わり、着物から洋服に着替えて秘書控え室に戻ると、丁度堤さんも外から戻ったみたいで背広を脱いでる所だった。
その見慣れない姿に一瞬ドキッとしたけど、今ではもう始めの頃のように顔が火照ったりはない。

これも西門さんに振り回されたおかげかな?なんて、冷静に自分の机に戻った。


「はぁ~、やれやれ肩凝ったぁ・・・」
「どうしました?」

「え?あはは!西門さんのお言い付けで茶道と華道のお稽古をして来ました。堤さんも少しは華道ってやったんですか?」
「いいえ、1度もした事はありません。知識としては調べましたから知っていますが、自分でした事はないですね」

「・・・・・・・・・」


そうだよね?それが普通だよね?
茶道家の秘書なのに華道までする方が不思議だよ・・・そう思ってほっぺたを膨らましたら、それを見た堤さんがクスクス笑った。
慌ててほっぺたは戻したけど気持ちは複雑・・・これからもするのかと思うと気が重かった。


「おかしいですよね?どうしてやらなきゃいけないのかしら・・・私が説明する場面なんて茶道ですらないと思うのに華道ですよ?」
「くすっ・・・そうですね。確かにそのような機会はないかもしれませんが、もしかしたら総二郎様には何かお考えがあっての事かもしれません。まぁ、言われたのでしたらおやりなさい。それも仕事ですから」

「はぁ、そんなもんですか・・・」


やっぱり堤さんだって笑うぐらいおかしい事なのよ!
今度言われたらもう1度抗議してやろうかしら、なんて思っていたらメールが入って来た。

それは美作商事の美人秘書、野中小百合さん!
今度の茶道部の日にちと人数の連絡だった。


「うわっ!ホントにこんな人数でやるのかしら?」
「今度はなんです?」

「美作商事の茶道部の件です。初回活動日が来週の火曜で、部員42名ですって。そんな人数でお茶なんで指導出来るんですかね?」
「そりゃ多いな・・・ちゃんと確認してくださいね?」
「はい、判りました」

「確認が済んだらすぐに道具のチェックをしないと。総二郎様に伝えて急いで揃えなさい。おそらく前日に持ち込むと思いますから」

「は、はい!」


また小百合さんに会わなきゃいけないんだって思うとこっちも憂鬱・・・それよりも支度が大変そうだったから、急いで西門さんのお茶室に向かった。
そして今の内容を伝えると・・・


「は?そんなに?」
「そうなんです。でも何度見ても42名で・・・」

「確認したのか?」
「はい」

「そんなの喧しいだけで茶道にならねぇだろうに・・・ま、仕方ねぇな。準備するか」
「はい!手伝います」

「当たり前だ」
「・・・・・・(もう少し言い方があるでしょうがっ!)」


向かったのは茶道具一式が詰め込まれてる部屋。
そこにはお弟子さん達の稽古用や、今回みたいな茶道教室で使うためのお茶碗で、所謂「普通のお茶碗」ばかりが置いてあるらしい。そこから模様入りで綺麗なお茶碗を選んですぐ側の机に並べていった。

「牧野、俺が茶碗を出すからお前はそこで拭いてくれ。それが済んだら山道盆に中棗、建水に茶巾、茶杓と茶筅と、どうせ持って無いだろうから帛紗はお前が揃えとけ。で、茶菓子の準備と黒文字も用意も忘れずに」

「・・・は、はいっ!」



ひえぇ~~~~~💦
これだけのものを私1人で揃えるの~?!




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Comments 4

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2019/10/17 (Thu) 19:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: No title

ゆかぽ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あらら!そうなんですか?
奇遇ですねぇ~♡

総ちゃんの家は何でしょう・・・池之坊ですかね?(笑)
私は全然心得はありませんが、母がずっとしていたそうです。
娘も何故か中学からやっていました。で、写真を見せてくれるんですよ(笑)

でも全然善し悪しがわからないんです💦

因みに茶花は剣山無しです。
茶道では「あるがまま」なのでそのまま生けます。

あはは!判りました?
後日のお楽しみです♡

2019/10/17 (Thu) 19:50 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/18 (Fri) 01:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

うふふ、気が付かないうちに修行しておりますね♡
でもこの様子だと数年かかりそうですが(笑)

でも回りは全員気が付いていると思われます。
総ちゃん、素直に言えばいいのにね~♡


「もう1回冷や飯炒飯作ってくれねぇか?で・・・次は朝までが業務だ」

どお?

2019/10/18 (Fri) 10:34 | EDIT | REPLY |   

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