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plumeria

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何処からか聞こえて来た鈴の音、それが鳴り止んだ。
それでもまだ頭がクラクラする・・・少し頭を振ったら逆にズキッと痛みが走って両手で顔を覆った。

今、何の話を聞いたっけ・・・お父さんの会社を潰したのが花沢?それが類の病気と関わってて・・・だから、なに?
だから私はもう類と会えないの?どうして・・・・・・


「・・・判らないよね。どうしてこの屋敷に居る俺達がその事を知ってるのか」

「お爺様はどうしてるの・・・?お爺様、花沢と関係でもあるの?」


何も考えられなくて頭も痛くて・・・私は柊祐の顔を見ずに、指の間から見えるシーツに向かって呟くように声を出した。

花沢物産と両親の会社の事は今更どうにも出来ない。
それにこの人が言うだけで真実かどうかなんて判らない。
それならちゃんと類に相談して調べればいいこと。そしてそれが本当だったとしても、その先の事は柊祐と決めるんじゃなくて類と決めること。

類ならきっと正しい答えを出してくれる・・・私が信じるのはその答えだと何度も言い聞かせた。


「お爺様はこの時間はもうおやすみになってる。つくしちゃんの意識が回復したって聞いたら喜ぶだろうね」
「とにかく帰して・・・私を類の所に行かせて下さい!」

「聞こえなかった?君はもう彼の前に”つくし”としては出られないんだよ?」
「つくしとしては?何を言ってるの?私は花沢つくしです!あなたの言う事なんて信じない・・・やっぱり自力でここから出るしか無さそうね!」

「この嵐の中を?それこそ肺炎起こして永久に会えなくなるよ?」
「・・・・・・!」


私が興奮しても柊祐の余裕に満ちた微笑みは消えない。
それに腹が立ったけど、確かにこの雷雨の中を出ていっても・・・ここはそのぐらい山の中だって事は知っていた。

それなら明日、お爺様に頼んで東京に帰してもらうしか無いのかしら・・・爪を噛みながらそんな独り言を漏らしたのかもしれない。柊祐はクスッと笑うと「無駄だよ」って言った。


「何が無駄なの?お爺様は私の味方のはずよ・・・両親の居なくなった私を引き取って下さったんだもの」
「引き取った・・・ね。まぁ、利用する為だけどね」

「・・・利用?」
「そう、これはお爺様の計画なんだよ。君が花沢物産御曹司のハートを射止める事が大前提だったけど」

「・・・・・・・・・え?」

「君は気付かなかっただろうけど、学生を1人英徳に潜り込ませてずっと監視してたんだ。
運良く恋人になってくれればって思ったら別の男と恋に落ちるし焦ったよ。でもその後にまさかの恋人・・・そこから夫婦になるとは予想外だった。でもおかげで凄く楽しくなってきた。総ては花沢家への復讐なんだから」

「監視・・・?」

「そう。つくしちゃんを英徳に入れたのは花沢類に会わせるためだったんだよ」


私と類を会わせる・・・?そして花沢家への復讐って・・・私を利用して類に・・・花沢家に復讐するの?
どうして・・・どうしてお爺様がそんな事をするの?



「さっき話した子会社で唯一処分された人間・・・それは有栖川祐子、俺の母さんだ」

「あなたの・・・お母さん?」

「そう。お爺様の1人娘の祐子・・・俺と鈴音の母さん。俺達の母さんがたった1人処分されたんだ」

「で、でも私がここに来た時、鈴音のお母さんは鈴音が生まれてすぐに亡くなったって・・・」

「亡くなったのは事実。でもそれは君がご両親に捨てられた時期とほぼ一緒だよ」


鈴音と柊祐のお母さん・・・お爺様の娘さんは不正事件の罪で会社を追われた後にここに戻って来て、その後本当に病死した。
私に亡くなった時期を偽ったのは鈴音には親の記憶がないと思わせて、私よりも辛いのだと思わせるため・・・そうすれば可哀想な鈴音の為に私が逃げ出す事はないだろうと思ったらしい。


「お、お父さんは・・・?」
「うちは母子家庭。父親は始めからいない」

「でも成瀬って・・・」
「それは養父の姓だよ。母さんが無くなった後、養子縁組をしたからね」

「養子縁組?」

「・・・母さんは東京から転勤でこっちに来ていた成瀬って男と恋をしたけど、お爺様の大反対で結婚はしなかった。必死に説得したけど頑固なお爺様は首を縦に振らない・・・だから、成瀬がまた転勤で東京に戻った時に追い掛けて行ったらしい。
でもそこで成瀬が既に別の女性と結婚していたことを知り1人になった。飛び出したんだからここにも戻れないと思った母さんはホステスのような仕事をしながら東京に留まって、そこで1人の男に出会って新しい恋をして俺達が産まれたってわけ」

「じゃあどうして成瀬・・・?」

「成瀬に子供が居ないから。ここは俺にもよく判らないけど、裏切られたくせに縁を切れなかったったみたい。
新しい男との恋が始まった時、一時期成瀬とも関係があったんだと思う。だから、成瀬は俺達を本当に自分の子供だと思ってるみたいだね。そして義母に当たる人も一昨年病気で他界したから俺を疎ましく思う人間は居なくなったってこと」


女性がたった1人、東京で暮らすのは大変だった。
だから裏切った相手なのに縋るしか無かったんだって柊祐は言った。慰謝料みたいにして生活費をもらい、その代わり都合のいいときに関係を持つ・・・そんな暮らしだったとか。
そこで出会った別の男性が彼の本当の父親だけど、妊娠を告げる前に海外赴任のために別れて、結果としてその男性にも捨てられた感じになってしまった。

ただ、その男性の伝手で花沢の子会社に入ることになり、それからは女手1つで子供を育てていた。


そんな大人の話を柊祐はいつ聞いたのだろう。お母さんが亡くなった時が10歳前後なら、そんな歳の子供にそんな話をするだろうか。

お母さんの事を思い出している柊祐に私の疑問をぶつけることは出来なかった。
この話の時だけ・・・彼はすごく辛そうだったから。



「・・・お母様は本当に不正を?」
「いや、母さんも罪を着せられたんだ。不正に関わってはいないと何度も泣いてたからね。
それでも力には勝てなかった。君のご両親同様、母さんも捏ち上げられた資料を突きつけられて、呆気なく辞職に追い込まれたんだ」


柊祐のお母さんは病床で「悔しい・・・」と何度も呟いて涙を流し、そのまま帰らぬ人となった。
それを見届けたお爺様が悲しみに暮れ、娘さんをここまで追い込んだ会社とその親会社である花沢物産への恨みを募らせた。そして復讐しようと考え始めて、その時に一緒に汚名を着せられた私の両親に目を付けた。

柊祐は淡々とそれを説明したけど、私には何かの物語のようにしか聞こえなかった。


そんな事をあの大企業がするだろうか・・・。
お父様が本当にそんな言葉を出したんだろうか・・・厳しい人だけど悪い人ではない、私はこれまでずっとそう思って来たのに。


「だからね・・・君のご両親を東京から逃がしたのはお爺様なんだよ」

「・・・え?」

「復讐計画に加わってもらおうと思ってね。取り敢えず小さな子供は邪魔だから親戚に頼んで、花沢家に復讐したらまた君達と暮らせるようにするつもりだったんだ。
だけどあの2人はそんな事は出来ないって・・・自分達はまたやり直すって言い張って計画には乗ってくれなかった。だからここでお爺様の相手だけしてもらって計画の練り直しをしたんだ。そうしたら、やっぱり色んな事に耐えられなくなって2人は屋敷を出てあの海岸に行った。そこからはつくしちゃんも知ってるだろう?」

「・・・・・・私達の事は捨てたんじゃ無かったの?」

「そうだね・・・ずっと気にしていたよ。でもお爺様がつくしちゃん達が楽しく暮らしているようだと嘘を教えていたから安心してたみたいだ。子供達が幸せならそれでいいって・・・いつもそう言ってた」


「冗談じゃ無いわ!楽しくもなんともない、淋しくてひもじくて、毎日怯えながら暮らしてたわよ!自分達の復讐の為かもしれないけど、そんなものに関心の無かったお父さん達まで巻き込んで・・・!
あんた達も不幸だったかもしれないけど、どうしてうちまで巻き込むのよ!返してよ・・・私の両親を返してよ!!」


チリン・・・チリン・・・
     チリン・・・・・・チリン・・・


・・・またこの音・・・・・・この鈴の音・・・


チリン・・・チリン・・・
     

「・・・・・・・・・・・・」

「つくしちゃん・・・恨むんなら花沢家を恨まなきゃ。総てはあの家が原因だよ?あの家族が悪いんだ・・・」

「・・・・・・違う、類は悪くないわ・・・お父さん達も・・・」


チリン・・・チリン・・・
     チリン・・・・・・チリン・・・


やめて・・・何処からこの音が聞こえてくるの?

そう言えば空港でも聞こえた・・・どうしてずっとこの音は私に纏わり付くの?


「花沢類は君の敵だよ、つくしちゃん」
「・・・ちが・・・」


チリン・・・チリン・・・
     チリン・・・・・・チリン・・・



ダメだ・・・朦朧として何にも考えられない。
まだ事故の事も、どうしてここに居るのかも聞いてないのに・・・。

この夜の記憶はここまで・・・私はそのままベッドに倒れ込むようにして眠った。





****************************





「少しですがお話しした感じでは記憶に曖昧な部分もありませんし、視覚や聴覚にも問題は無さそうです。まだあまり身体は動かせませんので運動機能の検査はまた回復を待ってからにしましょう」

「ありがとうございます!」
「はぁ~、良かった・・・って事は脳に異常はねぇって事だよな?」


母さんと総二郎がドクターと話してる間中、俺はずっとつくしの事を考えていた。
花沢家専用の特別室はここだけ・・・俺の妻ならここにあるもうひとつのベッドに寝ていてもおかしくないのに姿が無い。それとも集中治療室から出られないのか?
そんな事も考えたけど、それなら母さん達がすぐに教えてくれそうだ。

何故、誰も彼女の名前を出さない?
まさかこんな時に俺と引き離して一般病棟とか・・・いや、それは有り得ない。その方が問題だし・・・。


点滴に痛み止めが入ってるから吐き気が酷い。
気持ちが悪くて顔も満足に動かせなくて、身体には全く力が入らない・・・それでも早くつくしの事を聞きたくて、ドクターが出ていったと同時に2人を呼んだ。


「・・・いい加減、教えてよ。つくしは?・・・無事なんでしょ?」

「・・・・・・つくしさん・・・はね」
「おばさん、もう隠せないだろ。俺が話すよ」

「・・・隠すって何?まさか・・・・・・まさか総二郎!・・・うっ!!」


このやり取りにイライラして身体を起こそうと胸を持ち上げたら、また激痛が走ってベッドに倒れ込んだ!
それを見て慌てて母さんが支えようとしたのを動かせる右腕で止めて、総二郎に目をやった。

総二郎は真っ直ぐ俺を見て・・・そして母さんとは反対側に回って、ベッド横の椅子に腰掛けた。


「類・・・意識が戻ったばかりのお前にこんな事は伝えたくないが、落ち着いて聞けよ」
「・・・総二郎?」

「牧野はここには居ない」


・・・つくしはここに居ない?それは一体どういう事?
居ないのなら・・・何処に居るんだ?


「他の病院?ここよりも高度な設備の・・・」

「そういう意味じゃ無い。牧野は事故車両には居なかったんだ。だから・・・行方不明だ」



つくしが・・・・・・行方不明?





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