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plumeria

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総二郎と話した後、俺の意識が回復したことを聞いた警察が状況説明と事情聴取に来た。
その時には父さんも母さんも居て、俺は初めて事故した時の写真を見せられた。

山道に横たわる倒木、その前にある前面が大破したあの車。
夜中だったから景色なんて判らなかったけど、本当に鬱蒼とした山の中だった。
勿論見覚えなんてない・・・って言うか、そんな判断が出来るほどの建造物も何もない。片側崖になってる奥深い山・・・そこの地名を聞いても何処なのか判らなかった。


そして車の中の写真。
自分の手で持つことも出来ないから総二郎が手に持って見せてくれた。

ぐしゃぐしゃになった車内にはつくしがパリで買った土産物が散乱している。
そして彼女の鞄もあって、スマホは外に飛び出て床に転がっていた・・・つまり、今は通信出来るものを持っていないという事だ。

ただ血痕などは無いように見えた。
それなら怪我していたとしても軽いんだろうか、そう思わずにはいられなかった。


「・・・・・・まだ妻は見付からないんですか?」
「あれからもう4日目ですが、付近の山の中を捜索しても見付かって居ません。この山道を抜けた所にある民家も聞いて回りましたが、見知らぬ女性が助けを求めたと言う情報もありません」

「もっとよく探してもらえないかな・・・!何処かに居るはずなんだ!」
「はい、現在も動員数を増やして探しています。近くに川があるんですが、その下流まで・・・」

「川の下流?!そんな事ある訳がない!そうじゃなくて生きてる前提で・・・!!」
「類!落ち着け!」


如何にもそれだとつくしがこの世から消えたみたいじゃないか・・・!
そんな発言は許せない・・・そうじゃなくてつくしが助けを求めている場所を探せって言ってるのに・・・!


「花沢さんのお気持ちも判るのですが、痕跡というか、奥様がどっちに向かわれたのかも判らないのです。お怪我がないと仮定すれば大人なら乗り越えられる大きさの木です。しかしご主人がここまでの怪我で、運転手は意識不明の重体であることを考えれば、奥様だけが動ける状態だったのかどうか・・・」

「・・・どう言う意味?」

「勿論可能性のひとつですが、花沢家の方と知っていての犯行・・・と言う事もあるかと」


「事故じゃ無いって事か?」
「・・・・・・そんな!」

総二郎と母さんが呟いた。
父さんは無言・・・難しい顔をして俯いたまま片手で口元を覆っていた。


「実はあの木がいつ置かれたのかさえ判りません。倒木かと思ったのですがそれだと不自然なのです。辺りの崖に崩れた形跡はありませんからね。誰かが何処かから運んできて置いた・・・そう考えられるのです。
これだと運転手は犯行に加担したと言う事になるのですが、お屋敷で聞いてもあの運転手に花沢家を恨むような事件はなかったようですからねぇ・・・しかも下手をしたら自分は即死だ。それでも実行したのかと言われれば疑問ですがね」

「・・・つくしは花沢に対する何かの恨みで連れ去られたって・・・?」

「いえ、それは決まったことではありませんよ?あくまでも推測の一部です。
でもそう考えると、その恨みの中身は判りませんが辻褄が合うんです。奥様も意識がなかったとして、運ぶなら1番身軽だったでしょうし、これだけ探しても何も見付からないのも納得です。
ですが連れ出したと仮定して、その後なんのアクションも起こしていない・・・今度はそっちが気になります」


こんな馬鹿げた事故を故意に起こしたとして、つくしを連れ去ったのに花沢にはなんの要求もない。
それならやはりこの考えも違うのか、と警察も俺の横で頭を抱えていた。


「奥様ご本人が目的なら・・・」
「そんな事があるはずは無い!つくしは人に恨みを買うような・・・つっ!」

今度は狙いがつくしであるかのように言われ我慢出来なかった!
また身体を動かした俺を総二郎が押さえ、慌てて母さんまでベッドの横に跪いた。父さんも「言葉には気をつけたまえ!」と警察官を睨み、言葉を出した人間は部屋から出された。


誰が狙うって言うんだ・・・!
そもそも何処の企業の関係者でもなく、極普通の家庭に育ったつくしなのに・・・・・・



「花沢社長、本当に何も不審な要求は無いのですか?自宅、会社、どちらかに何か変わった事は?」

「いや、本当に何も無いのだよ。それに我が社が恨みを買うようなことは何も起きてないはずだ。強引な取引やリスクの高いことには手を出さないようにしているし、監査室や外部機関も利用して不正が行われないように目を光らせている。
私の所におかしな動きがあるなんて報告は何も無いが・・・」

「ご子息にも伺いますが、ご自分達の日程を誰かに話してますか?」

「・・・・・・式に同行した友人と・・・後は屋敷の人間だけ・・・かな」

「奥様に変わった様子は?」

「・・・いや、なにも。帰国後に友人と食事に行くって言ってたし、新しい生活を楽しみに・・・・・・」


そう言えば・・・つくしは空港で何かに怯えたような素振りを見せた。それも2回も・・・。
聞いても「何でもない」って笑っていたけど少し震えていた。


あれはなんだったんだ?
確か・・・何か言ってた。思い出せないけど・・・なんだったっけ・・・・・・



「どうかしましたか?」
「あ、いえ・・・なんでもありません」


両親の希望により、警察はつくしに関する報道規制はこのままで捜索活動を続けると言った。
公開捜査してつくしに何かがあったら大変だからって母さん達は言ったが、本心は花沢のスキャンダルを最小限に抑えるためだろう。
ただでさえ俺が事故に巻き込まれたことをネタとして探ってる記者達に、これ以上の情報提供をしないためだ。


警察が帰った後、疲れ切った母さんを連れて父さんも自宅に戻った。
仕事の方は俺が完全回復するまで母さんが帰国して日本本社を、父さんは暫くしたらフランスに戻りヨーロッパ本部を指揮する事になった。



総二郎だけが残って、すぐに呼んでもらったのは義弟の進とつくしの親友の優紀、そして三条と大河原。
全員が揃ったら、総二郎がこれまでの説明をした。

当然みんな絶句・・・特に進はその場に座りこんで震えだした。それを優紀が支えて椅子に座らせ、三条と大河原は怒りのあまり顔を真っ赤にさせ両手を震わせていた。
俺はその光景を動かせない身体で見ていただけ。

つくしを守れなかった不様な姿を晒していただけ・・・・・・凄く、情けなかった。


「ごめんな、進・・・でも必ず見付けるから。絶対にもう1度合わせてやるから待ってて・・・」

「・・・はい。姉ちゃん、昔から強かったから・・・何処かで1人かもしれないけど頑張ってると思います」
「うん、そうだよ!つくしは何があっても負けない子だから大丈夫だよ。でも、日本に戻ったらご飯行こうって・・・約束したばっかりなのに・・・」

「優紀ちゃんもごめんな。つくしが戻って来たら食事に誘ってやって?あいつの好きな店・・・俺が予約するから」


こんな事しか言えない。
捜索も人任せで歩くことも出来ず、何も判って無いのに店の予約なんて・・・

でも、そこで嬉しそうに頬張るつくしの姿しか想像出来ない。苦しんでる姿なんて・・・考えたくない。


「あの先輩が人に心配掛けたまま行方不明なんて考えられませんわ。一体何処に居るのかしら・・・」
「ねぇ、ニッシー!!私達に出来ることはないの?捜索なら大河原だって!」

「ド田舎の山の中だ。都会で情報集めるのとは訳が違うし、牧野自身、何も持ってねぇからどうしようもないんだって。4日間目撃情報も何も無いんだ・・・せめてあいつがどうにかして連絡してくれればいいんだけどな・・・」

「ヘリやドローンではもう探してますわよね?」
「確か昨日はあの辺り大雨で・・・あっ、ごめん!類君」


「・・・いや、きっと大丈夫だから。見付かったらまた・・・また馬鹿騒ぎしてやってよ。多分、つくし・・・こんな事になって凄く気にしてると思うから・・・」


俺はいつ動けるようになる?
この手でつくしを探しに行けるようになる?

誰かこの憎らしいほど重い身体を動かせるようにしてくれ・・・!

頼むから俺をあの場所に連れて行ってくれ・・・・・・


頼むからつくしの所に連れて行って・・・・・・頼むから・・・






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