FC2ブログ

plumeria

plumeria

類お兄様が父様に話してくれた次の日の朝、父様は私と顔を合わせてくれなかった。
朝食も食べに来なくて、母様が「放っておきなさい」って苦笑い・・・。

それでも母様は私の渡仏準備を一緒に進めてくれた。

1番にはお爺様達への報告で、それにはかなり動揺されたけど母様が必死に説得してくれた。
この家で花嫁衣装を着る日を待っていたとお爺様は大泣きだったけど「お嫁に行かないと決まったわけじゃありませんよ?」と逆にお婆様がフォローしてくれた。
きっとお婆様も私の気持ちに気が付いていたから・・・目頭を押さえながらだったけど「気を付けて」なんて掠れた声で言ってくれた。


「全然帰らない訳じゃないんです。向こうの大学が落ち着いたら帰ってくるし、フランスで働くようになっても私の家はここですから」

そう言うとうんうんと頷いて、最後には許してくれた。
牧野のお爺ちゃん達には時間が無かったから電話で挨拶したけど、こっちは「頑張って~」なんて、あっけらかんとしていて拍子抜けした。

美作のお爺ちゃま、夢子お婆ちゃま、それに仁美ママには挨拶に行った。
やっぱり凄く驚いていたけど「花音が決めたのなら」って背中を押してもらった。
あきらパパは今はイギリスに出張中だったから、きっと向こうで会えるだろうって。それも父様同様少し怖かったけど、メールだけは届いた。


『賛成も反対もしない。でも親孝行だけは今まで以上にしなさい。そして1度3人で食事でもしよう』


・・・あきらパパらしいって涙が出た。



「本当に行くの?花音姉様・・・大丈夫なの?淋しくない?」
「淋しい・・・か、どうかは判らないけど、向こうに行ったら忙しいのよ。学部だって変わるし生活はフランス語だし、経済学は勉強しなくちゃだし。絢音、あんたも勉強頑張るのよ?」

「へぇ?でもいい家庭教師、ついてるんだろ?勉強になるのか?花音、類さんの顔しか見ねぇんだろ?」
「五月蠅い!!そんな事ないわよ、やらなきゃ類お兄様にも迷惑掛けるし・・・颯音と違って気合い入れてんのよ、だから頑張るわよ!」


妹と弟はこんな感じだったけど、流石に紫音は違う・・・すごく不安そうに私を見ていた。


「花音、大丈夫?」
「なにが?大丈夫よ、自分で決めたんだもん」

「1日中兄様と一緒じゃないし、出張だって多いはずだよ?1人になることもあると思うよ?誰も居ない所で怖くないの?」
「こ、怖いとかないわよ!何歳だと思ってるの?」

「・・・何歳だって花音は変わらないよ」
「大丈夫・・・少しでもお兄様に近づけるならそれが力になる」


紫音は私が怖がりで泣き虫で、本当は弱いことを誰よりも知ってる。
甘えんぼで1人が嫌いで、誰かにいつも縋ってる事も・・・それがずっと紫音だったから。私が誰よりも先に走って行けたのは後ろから紫音が見ていてくれたから・・・。

私達はずっと一緒だった・・・でも、もうそれも終わり。私は私の道、紫音は紫音の道を歩かなきゃ・・・。


「花音・・・泣かない?」
「泣かないよ~!何言ってるの、電話だって出来るじゃん。それに・・・紫音も頑張らなきゃ。私が知らないとでも思ってんの?」

「え?あぁ・・・うん、だよね」
「うん!そっちは私より望みがあるわ。報告、楽しみにしてる」

「・・・はぁ」
「くすっ!紫音って茶室以外だと弱気だよね~!」

「煩いなぁ~・・・」
「頑張ろうね・・・お互いに」

「うん・・・」
「あっはは!紫音が淋しいんでしょ?」

「うん・・・」
「・・・・・・・・・・・・やだ、紫音・・・」


そう言いながら私達の目には光るものがあった。



**



学校の手続きも終わって、明日には日本を発つ・・・そうなっても父様は私と会おうとしなかった。
でも流石に夕方になって母様が私を呼びに来た。


「花音、着物に着替えてちょうだい」
「着物?今から?」

「そう・・・父様が茶室でお待ちだから」
「・・・・・・父様が?」

「えぇ、あなたと2人の時間を持ちたいそうよ」

「・・・判りました」


初めてだ・・・こんなの。
父様に呼ばれて茶室に行く、しかも着物なんて・・・。お稽古ならお昼間で時間も決まってて、私が先に行って父様を待つ感じだったから。それに洋服だって煩く言われなかった。
私の茶道はその程度、父様もそう思ってるはずだもの。


母様が選んでくれた着物に着替えて、髪も母様が結ってくれた。
そして途中までは母様と一緒に向かったけど、父様の茶室の少し手前で「行ってらっしゃい」と・・・不安になって振り向いたけど、母様は私に背中を向けたまま遠離って行った。


その部屋の障子の前で1度座って呼吸を整えた。
それでも静まらない心臓の音は、庭の木の葉が鳴る音よりも大きい気がして手に汗が滲む・・・そうしたら、中から「花音か?」と、父様の声が聞こえた。

「はい、花音です。遅くなりました」
「入れ」

「はい・・・」


怒った声じゃない。
それでも凄く緊張して部屋に入ると、父様は釜に湯を沸かしながら点前畳に座っていた。その顔は大事な茶会の時みたいに真剣そのもの・・・空気がピーンと張り詰めている感じがした。


「入るならちゃんと入れ。そしてこっちに座りなさい」
「・・・え?」

「お前が俺に茶を点てろと言っている。そのぐらいは出来るだろう」
「私が・・・父様に?」

「そうだ。花音にも紫音と同じように教えて来たはずだ。さぁ、こっちに来なさい」

「・・・はい」


父様が静かに立ち上がって私と場所を変わり、客畳の方に座り直した。
私はそんな事を考えても無かったから驚いたけど・・・もしかしたら、これが私の最後のお茶かもしれない、そう思ったら気持ちを切り替えることにした。

私が西門で最後に座る点前畳・・・それが父様のお部屋の、その場所。



「花音・・・西門の作法に従って、お前の真心を込めた茶を点てろ。これがお前への最後の稽古だ」





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/11/07 (Thu) 12:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

本編中、嫌われ者だった家元と家元夫人も歳取りましたねぇ~(笑)
家元なんて号泣ですよ💦

確かに西門家から花音が居なくなったら静かになりそうですものね。

我が家も娘が出ていった時はすっごく淋しかったです。
でも、今となっては帰ってきたら煩くて💦「早く自分のアパートに帰りなよ」って言います(笑)


さて、総ちゃん・・・何か話すのでしょうかね?

ちょっと今リアルが忙しいので、また遅れるかも・・すみませんね💦

2019/11/07 (Thu) 22:32 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/11/08 (Fri) 00:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。


えっ?!そんなに?まだ何も話してないのに?(笑)
じゃあバスタオル用意して待ってて下さい。

泣かせてやる・・・(笑)

2019/11/08 (Fri) 20:14 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply