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ロスについてから向かったのは海が見えるマンション・・・そこで仁美との生活が始まる。
真っ青な空を見上げて「日本より高く感じるわね」、なんて笑う彼女の顔を久しぶりに見た。

まだ少し、引き摺るものはあるみたいだけど・・・。


「気に入った?後でビーチに行ってみようか?」
「・・・ううん、疲れたから少し休みます。あきらさんはお仕事いつから?」

「俺は来週からこっちに赴任する。その間に一度病院にも行こう。予約してあるから」
「・・・・・・判りました」


せっかく笑っていた仁美が下を向いた。
辛そうで悲しそうで・・・その表情は呼子で会った時の牧野に似てると思った。
状況は全然違うけど母親になる前の不安がそうさせるのか、男の俺には踏み込めない領域・・・ただ、黙って側に居てやることしか出来ないのはあの時と同じだと思った。


仁美が病気をしてからの情緒不安定、それを支えることを苦しいとは思わなかった。時間が薬・・・そのぐらいの気持ちでゆっくり過ごしていこうと思っていたけど、それが社外に対しては鬱陶しかっただけだ。
結婚してから1年も経てば跡取りを匂わせる話が来る・・・仁美の病気を非公開にするつもりもなかったけど、その時点では俺の後継者の話が定かじゃなかったから。

だから大きな集まりには自然と足が遠のき、地方での仕事を引き受けることが多くなった。


本当に偶然・・・俺は佐賀への出張を引き受けたんだ。
そこで大きな腹を抱えた牧野に会うなんて思いもせずに・・・。




『・・・牧野?牧野・・・じゃないのか?』

『・・・み、まさか・・・さん?』
『牧野・・・やっぱり牧野だよな?!』

『どうして、どうして美作さんがここに居るの?!』



あの時、牧野の驚きようは半端なかった。
俺を見るなり目を見開いて自分の身体を・・・隠せない身体を手で覆った。
総二郎に言わないでくれと、西門には知られたくないと涙ながらに懇願されたけど、この時の俺は牧野と2人だけの時間を持ってることの小さな喜びがあった事は否定しない。

総二郎に申し訳ないと思いながら、子供の事を知らせるのが正しいと言いながら、自分の手の届くところに牧野を匿っている・・・正直に言えば、それは牧野の為だけじゃなく、自分の欲・・・もあったんだと思う。

仁美に不満なんてなかったし、婚約中にはなかった愛情も芽生えていた。
彼女の事は大事だった・・・それも嘘じゃない。


でも、牧野は俺にとって特別だったから・・・。
自分のものにしたいなんて思った事はないけど、側に居て守りたい、そう言う矛盾した気持ちがあったことは確かだ。



『どうだ?いよいよだな』

自分の嫁さんでもないのに出産前に会いに行った。
出張先の大阪でも牧野の事が気になってなかなか会議に集中出来なかったぐらいだ。それなのにあっさり牧野には「家に帰れ」と言われたっけ・・・その時は少しだけショックだった。


『早く奥さんの所に戻りなよ。きっと待ってるよ?』

『ははっ、遅い時は先に寝てるし、今日はどっちかって言えば早く帰れる。心配すんな』
『・・・心配するよ。私が奥さんだったら嫌だもん』



この時の牧野の言葉を素直に聞いていれば、仁美は不安にならなかったのかもしれない。
牧野に対する特別感は持っていてもいいだろう、なんて勝手に思い込んでたんだ。俺だけじゃなく、類だって司だって持ち続けてるんだ・・・俺が手放さなくてもいいだろう、と。

それは仁美に対する愛情とは別物・・・そう思っていたのは俺の思い込みだった。


紫音と花音が産まれて、牧野が総二郎の婚約を知っておかしくなって、初めて仁美に全部を打ち明けた。
それがどれだけ仁美の心を傷付けたか・・・彼女はそれを俺に見せないように気丈に振る舞って、文句も言わずに双子の母親を引き受けてくれた。

優しい人だと嬉しく思ったのも俺の思い込み・・・彼女はそう言うしかなかったんだろう。



それはあの事件が起きた後で痛感した。


『あきらさんは子供達の中につくしさんを求めてるから傍に置いているのよ!花音にはそのうち恋心を抱くかもしれない・・・もしかしたら花音があなたに恋をしたら、それを受け入れるだろうって!
呼子では吉本がつくしさんにプロポーズしていたのに邪魔したって・・・それに今、邪魔なのは私だって・・・そう言われたのよ!
あきらさんの心の中にはつくしさんしか居ないって・・・私だって何度もそう思ったわ!あなたが温室で寝てるつくしさんを見る目は友人なんかじゃなかったもの!』

『だからって双子を騙して吉本に渡すのか?!』

『そうしないとあなたは私の事なんて本気で見てくれないって思ったのよ!!本当に好きな人の子供の仮の母親だから大事にしてくれるだけだって・・・・・・あの時はそう思ってしまったのよ・・・!』



いつも静かで穏やかだった仁美にそんな言葉を吐き出させたのは俺だ。
恋愛感情に限りなく近い友情・・・だからこそ余計に距離を置かないといけなったのに近づき過ぎたんだ。

その事で自分を見つめ直したら、仁美と離れられないことを改めて感じた。


俺の妻は仁美・・・彼女しか居ないと。


だから戸惑う両親を説得して、一時的な別居をした。
それは紫音と花音を西門に引き取らせる時に、お互いに辛い時間を持たないためだった。牧野にも仁美のいないところで母親に戻る時間が必要だったから・・・。

数ヶ月後、やっと双子は西門に戻った。
本来あるべき家族の姿に戻れた・・・後は一緒に過ごせなかった時間を、総二郎と子供達が埋めていくだけだ。


そして、俺も少しずつ進めてきた計画を仁美に話し、ここにやってきた。
俺と仁美の子供・・・医学の力を借りてでも、自分達の子供を持つために。





「仁美、やっぱり海まで散歩に行かないか?夕日が綺麗だぞ」
「えっ?えぇ・・・でも・・・」

「いいじゃないか。上手くいったらそのうち賑やかになるんだから、今は2人だけの時間を楽しまなきゃ」
「・・・くすっ、じゃあ・・・行こうかしら」


手を差し出したら恥ずかしそうに少しだけ腕を伸ばすけど、そんなんじゃ俺のところまで届かないって・・・。
そんな照れた顔の仁美の手を引き寄せ、まるで学生のカップルみたいに並んで歩いた。


「やだ、あきらさん・・・人が見てるわ」
「見せてやればいいだろ?何処が恥ずかしいんだ?」

「だって私、そんなに若くないもの・・・」
「あはは!そんなの俺と変わんないって!歳なんて関係ないだろ?この手もそのうち子供にとられるんだから今は俺のもの・・・ダメだった?」

「・・・・・・いえ、そんな事ないけど・・・なんだかあきらさんが子供みたい」
「たまにはこんな俺もいいだろ?これからも宜しくな、仁美」


仁美の左手薬指・・・別居した時からここには指輪がなかった。
それを自分の右手で感じながら、胸の奥で「2度目のエンゲージリング」を考えた。

今度こそ、俺の言葉でプロポーズをしよう。



オレンジ色に光る穏やかな海を眺めながら、俺達は同じ夢を描いていた。






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2019/11/24 (Sun) 11:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

うんうん、あきら君は癒やされるよね~♡

そんなあきら君を苛めまくったけど、ここではちゃんと天使を連れて参ります♡
あきら君に愛を届けなきゃ♡

(と、言いながらこのお話は早めに終わりそう(笑))

2019/11/25 (Mon) 00:03 | EDIT | REPLY |   

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