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plumeria

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目を覚ましたけど心が起きない・・・そんな感覚で朝日を眺めていた。

この光りをつくしは何処で見てるんだろう。
そんな事ばかりを考えて、朝の検診にやってきた看護師の顔も見ていない。何かを話し掛けられたようだけど、それにも反応せずにぼんやりとしたカーテン越しの光りを見ていた。


「少しお熱がありますね。何処か酷く痛むところはありますか?」
「・・・・・・・・・」

「まぁ、これだけのお怪我なので発熱も考えられますが、念の為先生に診ていただきましょうね」
「・・・・・・・・・」

自分が発熱してるなんて事もどうでもいい。
とにかくここから出たくて仕方ないのに、何処も動かせない自分に腹がたつ・・・唯一力が入れられる右手の指でシーツを握り締める事しか出来なかった。


検診が済んでドクターの回診も終わった頃に特別室に入ってきたのは母さんで、その手には大きな花束があった。
「社のみんなからよ」・・・そう言って花瓶に生けて、それを俺から離れたテーブルに置いた。


「各国の幹部からあなた達のお見舞いの電話が入るの。はぁ・・・その件数の多いこと、大変だわ」
「・・・・・・そう」

「類の事は他の誰からも説明させてないから全部私とお父様で対応してるの。だから仕事が全部止まってね、お父様も自宅に戻れないぐらいなのよ」
「・・・つくしの事はなんて説明してるの?」

「つくしさんの事は聞かれたら絶対安静だって、一応それで対応してるわ。そうじゃないとすぐに公の場に姿を出せるかどうかも判らないでしょ?類の事は意識が戻ってるから安心してくれって・・・いけなかった?」

「いや・・・いい」


絶対安静・・・本当にその状態でも俺の手の届く所に居るのならどんなにいいだろう。それならそれで回復するまで傍で見守れる。
それすら出来ない今の状況は地獄だ・・・。

そして母さんはここぞとばかりに世話を焼きたがるけど、自分では何も出来ない人だから看護師にあれこれと指示していた。

「果物を少し用意してちょうだい」
「栄養価の高い飲み物を持って来て」
「汗をかいてるみたいだわ。ちゃんと清拭してるわよね?」・・・まるでここも花沢物産の内部のように仕切るのが鬱陶しくて、俺はひたすら無視を続けていた。

こんな所で騒ぐぐらいなら社に戻って仕事すればいいのに。
そして俺の事は放っておいてくれていいからつくしを探す為の行動を・・・そう思うけど返ってくる言葉が判っているから口を噤んだ。


『あなたが無事ならそれで良かったわ』


そんな言葉を聞いたら俺はもうこの家に居られない。
つくしを花沢で幸せにすると誓ったんだ。それなら一刻も早く怪我を治して自分の手で捜さなくては・・・。




*********************




・・・・・・チリン・・・・・・チリン・・・チリン・・・・・・

その音に導かれて目を覚ました。
なんだかふわふわする・・・身体が軽くて・・・このまま寝ときたい。

私はどうしたんだろう・・・・・・ここは・・・?頭に靄が掛かったみたい・・・何もかもがぼんやりする・・・。
ゆっくり瞬きを繰り返して辺りを見回したら、ベッドのすぐ横で優しい笑顔の彼を見付けた。

私はその人を見たらにっこり・・・なんだ、ここに居たんだって嬉しくなった。


「目が覚めた?」
「・・・・・・柊祐・・・おはよう」

「くすっ、もうお昼だけどね。熱があるから怠いだろ?お粥作って来ようか?・・・鈴花」


鈴花・・・それは私の事だ。そしてこの人は私の夫・・・成瀬柊祐。

あぁ・・・私が何処かで怪我をしたから看病してくれてたんだっけ。それで身体中に包帯?その上風邪を引いたのかしら。だからこんなに汗をかいて喉が痛いの?
いつから寝込んでるんだろう。こんな私にずっと付いててくれたんだ・・・優しいなぁ、柊祐。

甘えたくて手を伸ばしたら、その手をそっと持って「まだダメ、傷口が痛いから」って。
どこまでも私を気遣ってくれる人・・・抱き締めてはくれなかったけど、おでこにそっとキスしてくれた。


「お粥のリクエストは?」
「玉子・・・だけでいい。あんまり欲しくない・・・」

「ダメだよ、ちゃんと食べなきゃ。鈴花はそれじゃなくても食が細いんだから。好き嫌いもダメだからね」


食が細い?そうだっけ・・・私、あんまり食べないんだっけ?好き嫌いもあった?
何が嫌いだったんだろう。自分の事なのによく思い出せない・・・でも、柊祐の言うとおりにしよう。

この人の言う事は全部正しいから・・・。


暫く待っていたらトレイに小さな1人用のお鍋を乗せた柊祐が戻って来た。そしてリクライニングのベッドを起こしてくれて、温かいお粥を食べさせてくれた。
私が頼んだ玉子とシャケが入ったもの・・・子供みたいにフゥフゥって冷ましてくれて、恥ずかしいのに「あーん」って・・・でも、素直に開けてしまうけど。
食べ終わったらおでこを触って「まだ少し熱いね」ってお薬も飲ませてくれて、包帯が巻かれてない所を拭いてくれた。


「・・・ごめんね、柊祐。こんな怪我しちゃったからあなたのお世話が出来なくて」
「いいよ、そんな事。鈴花はゆっくりしてていいんだ。そうじゃないと治らないよ?」

「うん。でもどうしてこんな大怪我を・・・」
「・・・君が俺に黙って山に入るからだよ。少し崖を滑り落ちたんだけど、骨折なんてないから大丈夫・・・時間が経てば普通に戻るよ」

「そうなんだ・・・ドジだね」
「くすっ、鈴花は昔からおっちょこちょいだからね」

「・・・柊祐が居てくれて助かるね。ありがとう」

「・・・どういたしまして。俺達は夫婦だからね・・・鈴花」


「うん・・・」って言うけど、そうしたら誰かが悲しそうに私を見てる気がする。
誰だろうって部屋を見回すけど私達以外誰も居ない・・・でも、確かにもう1人の気配を感じる・・・だから怖くなって柊祐の服を掴んだ。

「大丈夫だよ。ここには誰も来ない。君を連れ去る者は居ないから安心しな」
「うん、柊祐・・・あれ?」


その時、自分の左手に指輪がないことに気がついた。プラチナの・・・結婚指輪。
困った顔して自分の指を見ていたら、柊祐は「これだろ?」ってクスクス笑いながら傍の机の引き出しから指輪を出して来た。


「崖から落ちた時、かなり傷が付いたから、店に頼んで磨いてもらったんだ。綺麗になってるよ」
「ホントだ!うふふ・・・真新しいみたい」

「今度は大事にね・・・鈴花」
「・・・はい、柊祐。大事にするわ」


そう言って指輪を左手薬指にはめて・・・・・・でも、こんなデザインだったかしら。
何かが・・・違うような気がする。


「どうかした?」
「え?ううん・・・何でもない」

「さぁ、もう1回眠って?目が覚めたらちゃんと自分に戻れるよ。その時は・・・・・・の音だよ、鈴花」


彼が支えてくれて、また私はベッドに横になった。
そして目を閉じる・・・やっぱり瞼の裏で誰かが泣いてるような気がするけど、私はそのまま眠りについた。


チリン・・・・・・チリン・・・チリン・・・


・・・泣いてるのは・・・柊祐?

違う・・・だれ?




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