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~side柊祐~

あれは俺がまだとても小さな頃・・・母さんのひと言がきっかけだったのかもしれない。
もともと自分には何かしら不思議な力があるって思っていたけど、ぞれを利用しようと思ったのは・・・。


俺は母子家庭だった。父親って人はその頃は知らなかった。
でも幼稚園でもそんな家庭の子は何人か居たし、それを気にした事はない。世の中には父さんって人が居る家庭と、母さんだけの家庭があるんだって思っていたぐらいだ。

だから淋しいと感じた事はない。
母さんがいつも俺の事を抱き締めてくれていたから・・・それだけで幸せだと思った。


その頃、俺には他の子とは違うものがあるって言われた。

「柊祐の声を聞くと眠くなる」
「その声を聞いてると落ち着くし、嫌なことを忘れる」

・・・なんて事を回りの大人に言われても幼い俺には何の事か判らなかった。
ただ動物を抱いていてもその子は腕の中で寝てしまうし、絶対に人馴れしないと言われた鳥だって俺の前に寄って来た。

俺は特に何もしていないのに・・・小さな声で話しかけるだけなのに。
どうしてみんな力が抜けたようになるのか、俺の方が不思議だった。



そんな事を疑問に思っていた頃、母さんが仕事から帰ってきて言ったんだ。

『柊祐が女の子だったら良かったなぁ・・・』

その真意は判らなかった。
女の子だったら家事を手伝ってくれるから?女の子だったら可愛い服を着せて楽しめるから?
女の子だったら・・・・・・女の子になればいいの?

でもなれる訳が無い。
だったら・・・僕が女の子だと母さんの方が思い込めばいいんじゃないの?

そう思って母さんがウトウトしてる時に目の前で話し掛けたんだ。


『お母さん・・・ぼくは今から女の子だよ?』
『・・・・・・・・・』

『お母さん、目が覚めたら女の子が目の前に居るよ?名前は鈴音・・・良かったね、お母さん』
『・・・・・・・・・』

『ほら・・・起きて?女の子が居るよ・・・お母さん』


そうして目が覚めた母さんは『あら、鈴音・・・女の子なのにどうしてそんな格好してるの?』って言った。
母さんは暗示にかかった。そしてもう1度寝かせて、同じような口調で今度は「事実」を話すと、目が覚めた時には俺を息子だと認識した。

これが自分の特殊能力だと理解したのはその時だ。
まだ7歳だった俺が1番始めに成功させた暗示・・・でも、それは本当に母さんの希望を叶えられたらと言う純粋な子供心だった。


だから時々俺は女の子の鈴音になって母さんの傍に居た。
別にスカートを穿くとかそんな事はしなくても、暗示に掛かってる母さんは何にも疑わずに俺を「鈴音」だと思い、目が覚めたら鈴音の事は覚えていない。

自分の子供は柊祐1人・・・ちゃんとした意識下では俺だけだった。

だからもっと母さんを喜ばせようとして、子供ながらに催眠暗示のサイトを見ては研究した。どうやったら長い時間暗示に掛かっていられるか、どの状態なら早く暗示に掛かるのかとか。
母さんに悪い影響がありそうならしちゃいけない・・・俺が必死になったのは母さんのため、それだけだった。


母さんが誰かと間違えているわけじゃない。
俺が母さんに思い込ませているのだから、そこに悲しいとか辛いとかはなかった。
俺の事を「鈴音」と呼んでも、その名前も俺がつけたものだから。

そんな事を1年ぐらい続けていたら、母さんを誘導するのは凄く簡単になっていた。



でもしばらくして母さんの会社で不正事件が起きて、訳も判らず俺は会った事もない有栖川のお爺様のところに引っ越した。

『お父様、お久しぶりです・・・ご厄介になります。これは息子の柊祐です。さぁ、ご挨拶なさい。あなたのお爺様よ』
『・・・こんにちは。お爺様』

『・・・・・・これがあの男の息子か』
『お父様、この子に罪はありません。お許しください』


お爺様と言う人は恐ろしい顔をした人だった。
俺の父親という人間が嫌いだったから・・・母さんにはそう言われた。だから引っ越して暫くの間は言葉なんて交わさなかったし、食事すら一緒にしなかった。

そのうち母さんは身体を壊して寝込むようになり、俺は何度も鈴音になって母さんを励ましたけど、その容体はどんどん悪くなるばかりで痩せ細っていった。


そして起き上がることも出来なくなった時、俺の手を握って本当の父親の話をしてくれた。
紹介こそされなかったけど、俺は自分の父親に会っていた・・・それには凄く驚いた。


『・・・それじゃあ、あの時の人が父さんなの?成瀬って人じゃなくて?』
『えぇ、そうなの・・・でも、もうあなたの父親にはなれないと思うの。ごめんね・・・柊祐。ひと目、あなたと会わせたかったの』

『お爺様は知らないの?』
『・・・えぇ、知らないの。話すつもりもないわ・・・これはあなたと私だけの秘密よ』

『そのお父さんは?僕の事を知ってるの?』
『あの時に見ているから気が付いたかもね・・・あなたはとてもよく似ているから。私が元気ならいつかちゃんと話して言葉を交わして欲しかった・・・それなのに、こんな事になって・・・!』

『母さん!大丈夫?』

『・・・悔しい・・・!どうしてこんな目に遭わなきゃいけなかったの・・・!』


それから1ヶ月もしないうちに母さんは呆気なくこの世を去った。
「私は無実だ。あの裏工作が出来るのは吉岡だけだ」と最後まで言い続けて。



母さんが亡くなってから初めて知ったのは俺に戸籍がないと言うことだった。
有栖川を飛び出した母さんが何処で俺を産んだのか、お爺様も知らなかった。何故出生届を怠ったのかも当然知らない。

ただ無戸籍でも小学校には行ける。
でも東京で僅かな期間通った小学校も、新潟に来てからは行かなくなった。学校に上手く事情が説明出来なかったからだ。

その代わりとしてお爺様が渋々屋敷に家庭教師を雇い、俺はたった1人で勉強した。他にする事もなかったからだろうか・・・教えられることはすっと自分の中に入ってきた。
成績なんて誰とも比べられないが、家庭教師は俺の事を冷やかし気味に「天才児」・・・そう言った。


その頃、お爺様から言われたのは・・・「花沢家への復讐」。
当初は一緒に罠に掛かった牧野夫婦を仲間に引き込もうと言った。まだ10歳になったばかりの俺に。
そしてその計画を立てようと呼び出した牧野夫妻は、その話に乗るどころか怯えて行動すら起こせそうになかった。本当に自分達が不正を行えば子供達に会わせる顔がないと。

長期に渡って説得し続けたのに無駄だった。そして行方を眩ませた・・・。


そして次に復讐の道具に選ばれたのはつくし・・・実はこれを提案したのは俺だった。
お爺様は「子供に何が出来る!」と聞く耳も持たなかったから、ある日、大人しそうな家政婦を1人呼んで催眠暗示を掛けた。
母さんの時のように俺の事を「女の子の鈴音」・・・そう信じ込ませた場面をお爺様に見せた。


『・・・信じられん!そんな馬鹿な』
『僕にも判らないんだけど、何故かこれが出来るんです。でもこのおばさんは目が覚めたら鈴音なんて忘れてます。母さんもそうだったから』

『・・・これで花沢を?』
『母さんを追い詰めた原因の中に花沢の男の子がいるんでしょう?牧野のおじさん達の子供と歳が近い・・・そうですよね?』

『確かにそうだが・・・』
『じゃあちょうどいいじゃない。その子もターゲットに出来るでしょ?』


お爺様はその時既に足腰が弱ってて動きが取れない。
俺は考える事が大人びていてもまだ子供・・・大企業への復讐なんてすぐには出来なかった。だから何度も計画を練り上げて、どうしたら1番苦しめられるかを考えた。

出した答えは・・・愛する家族を失わせること。


お爺様から娘を、俺から母さんを奪ったように。
花沢社長夫妻が溺愛する息子を苦しめ、その息子から愛する人を奪うこと・・・つくしをその相手に選ばせるために英徳に入れようと計画した。

同時に俺に必要だったのは将来花沢と闘うための立場だった。
だから成瀬社長に母さんの死を連絡して接触。戸籍の復活をさせようと思ったけどそれは成瀬夫人に拒絶された。だから戸籍は諦め、その代わり息子として扱うことを約束させた。

名前も「有栖川柊祐」から「成瀬柊祐」と名乗ることを承諾してもらい、計画は順調に進んだ。

次は牧野つくしとの接触。
弁護士が東京につくしを迎えに行ったのに、ちょうど牧野夫妻についての情報があると飛び出して行くのに出くわし、その後も張り込んであの海岸につくしが向かった時、お爺様は親切な老人を装ってつくしだけを有栖川に連れて来た。


そしてここにつくしを引き取った後、鈴音となって彼女に催眠がかけられるかを観察していた。


だけどこの子は不安と猜疑心が強くて催眠に掛かりにくい・・・そう判断したから時間をかけて「きっかけ」を身体に染み込ませていった。この鈴の音がそのサイン・・・この音を聞くとつくしの中でスイッチが入り、意識が朦朧とし始める。
変声期になって鈴音になることが難しくなってからは本当に屋敷の奥に身を潜め、実に7~8年掛けてそれを続けた。


催眠というのは“思い込ませる技術”を使って、相手の身体や脳に変化を与えること。

でも掛ける方だけが術を行っても掛かりにくい人間は催眠状態にはならない。
掛かる方の準備も重要な要素・・・母さんも家政婦も単に掛かりやすかっただけだ。


そうして少しずつ俺達の計画は進んで行き、本当に花沢類と牧野つくしは恋をした。
それも両方共に溺愛・・・それは奇跡としか言いようがなかった。



「・・・・・・ぅん・・・」

そろそろ目が覚める頃か・・・。

「ね・・・つくし。久しぶりに空港で鳴らしても君は聞き分けたよね・・・あれだけの雑音の中でもさ。
もうこの音はあんたの脳に記憶されてるんだ。この音を聞けばつくしの身体は暗示の体勢に切り替わる。今みたいに俺の言葉を信じるようになる。
さぁ、今度は元の自分に戻るよ。これが目覚めのサイン・・・起きてごらん、鈴花からつくしに戻るよ?」


ここで俺は「ある音」を彼女の耳元で鳴らした。
そうしたらはっと目を開けて俺を睨んだ。



「気分はどう?」
「・・・良い訳がないでしょう?柊祐・・・どうしてそんなに笑ってるの?」

「いや、成功したから嬉しくてね」
「成功?何のこと・・・私に何かしたの?」

「別になにもしてないよ」


そう・・・さっきまで俺が話していたのは「成瀬鈴花」・・・花沢つくしはその意識下で眠っていた。

成瀬鈴花は俺の操り人形・・・自由に動かせる「Marionette」だ。





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