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親父のギックリ腰は2日ぐらいで起き上がれるようになり、3日目には何とか歩けるようになったが茶会に復帰するのはまだまだ難しいって事で俺の仕事は倍増。
ついでに牧野の仕事も倍増して、再び本邸に住み込んでしまった。

何と言っても仕事の終わりが夜中10時は当たり前で、それから飯食って「今日はこれまで」って言った時にはあいつの方がダウンして動けなかったり、朝早くから移動することもあったりでアパートに戻る時間が勿体なかった。

「運転するぐらいなら寝ます・・・」ってそんな事を言われたら運転中に寝そうで怖いし。


今日も薄茶会を2回と着物のモデル撮影、無理矢理頼まれた旅行会社のCM撮影があって、早朝本邸を出たのに戻ったのは夜の8時・・・牧野とダイニングで飯を前にして倒れ込んでいた。


「・・・疲れたな、牧野。明日はどうなってたっけ」
「・・・明日ですか?えーと・・・・・・・・・思い出せません」

「だろうな・・・俺も忘れた」
「明日の事は明日しましょう、今日はもうダメ・・・」

「マジ、今日のCM撮影、色気出せなかったぁ~・・・」
「要りませんよ、そんなもの・・・たった5秒のアップでしょ?」

「馬鹿言え、全国の女が待ってんだぜ?」
「あ~、見るだけなら待つかも・・・」

「・・・・・・どう言う意味だ?」


こんな会話を2人がテーブルに顔を伏せたまましていたから、見に来たお袋に「何やってるの!」って怒鳴られた。
牧野はビクッとして起き上がったけど、俺はまだ無理・・・伏せたまま顔をお袋に向けたら、目の前に書類を置かれた。


「なんだ、これ・・・」
「悪いんだけど、家元が行けないから頼むわ、総二郎さん。3週間先だから何とか予定立ててくれる?」

「・・・は?3週間先って?」
「もう出席者の変更はしておいたから」


その書類を片手で取って見てみたら・・・政府主催の『日本の伝統文化の紹介』、場所はアメリカ、ニューヨークMホテル・・・あきらが言ってたヤツか!
怠い身体を起こしてそいつを見たら、確かに3週間後にこのデモンストレーションが予定されてて、茶道の参加者は親父で「西門流15代家元」って書いてある。


ヤベ・・・ホントに司に会うのか?!

茶道の他にも書道や歌舞伎、能なんかが入ってて、サラッと見た限りそのメンバーに俺みたいな若いヤツはいない。錚々たるメンバーで、逆に俺が行っても浮くんじゃねぇか?と思うぐらいだった。


「どっか他の流派じゃダメなのか?」
「ダメでしょう!これは西門が国から受けたお仕事です。総二郎さん、あなたが代行するしかないのよ。その前には九州で講演会があるんだけど、そのぐらいなら何とか行けると思うのよ。でも流石にアメリカはねぇ・・・」

「面倒くせぇなぁ・・・アメリカに仕事とか、超怠い・・・」
「何言ってるの!たった5日間でしょ?頼んだわよ。牧野さんも総二郎さんのフォロー、宜しくね」

「は、はいっ!」


牧野のフォロー?連れて行ったら俺が全部フォローじゃねぇの?




*********************




私にまで用意してくれた晩ご飯を食べ終えて、西門さんがくれた紙を見ていた。

そして聞かれたのは「パスポート持ってんのか?」・・・そんなもの今まで必要なかったし、持ってる訳がない。
そう言ったらすぐに申請しろって言われた。つまり、私も海外出張決定?

まさか、堤さんに言われた事が本当になるとは思わなかった。
だから「自分で頑張れ」って言われた英語なんて全然勉強なんてしてないし、英会話を習う時間的余裕も、精神的余裕も、金銭的余裕もなかったんだもの。
それに西門さんが語学堪能って言ってたから話せるんだろうし。


「アメリカに行って何するんですか?」
「やる事は変わんねぇよ。茶を点てる作法を始めから通すだけ」

「着物着て釜でお湯を沸かして?」
「そう。一通り見せた後は飲んでみたいってヤツに薄茶を点ててやるんだ」

「飲めるんですか?」
「牧野よりは上手に飲めるんじゃね?今まで噴き出された事はねぇし、そもそも飲めるヤツが申し出る事が殆どだし。で・・・牧野、英語喋れるのか?」

「This is a penとか、My name is tsukushi makinoとか?」
「・・・デモンストレーション中にペンを見せるヤツが居んのかよ!つまり喋られねぇってことだな?」

「・・・そうなるかな?」


西門さんはまたおでこをテーブルにくっつけてしまった。
でも、話せないものを話せるって言えないし、今更話せるようにはなれないし?ここは英語ペラペラの堤さんに頼めば良いんじゃないかしら・・・そう言ったら「嫌だ」って速効断わられた。

「あのな?アメリカまでの飛行機はクラスが違うからいいとしても5日間も無駄話しないヤツと一緒にいて楽しいか?あいつは仕事は出来るが融通が利かない。時間通りであらゆるズレを許さねぇんだ。俺の行動は見逃さねぇし、遊ばせてもくれないし、ぴったりくっついて離れねぇし!」

「・・・ってか、すごくマトモな事じゃないですか?それの方が助かるでしょ?」
「あいつが英語で茶道を説明すると逆に判り難いんだよな~・・・詫び寂びどころか『キリッ!ビシッ!』としてるから・・・」

「ははは、想像出来る~・・・」


そんなこんなで今度は渡米準備。
3週間も先だけど、それまでここに泊まることになった。
理由は『西門さんによる初心者向け英会話教室』・・・これも業務だと言われれば頷くしか無いんだけど、車の修理代を払う前に自分が倒れるんじゃないかと心配になった。


「じゃあ今日はもうお風呂に入って寝ますね~」

「腹だして寝るなよ?風邪引かれたら迷惑だ」
「西門さんこそ裸で寝るのそろそろ止めないと、お茶会中にくしゃみしたらお茶に鼻水入りますよ~」

「おぉ、気を付けるわ・・・」


こんな会話が出来るようになるとは・・・慣れって怖いわ。




*************************




次の日の夜から始まった英語・・・牧野の語学能力はまさに中学生並だった。
そんなに話すことはないと思うけど、せめて単語ぐらいは覚えねぇと不味いだろう。
文章はいいからまずは単語を覚えろと言ったけど、それを聞いた途端に拒否反応なのか机に倒れ込む。それを揺さ振って起こし、スマホで単語を聞かせた。


「いいか?茶道はsadouで突き通す。tea ceremonyって言うヤツもいるがセレモニーは使わねぇからな。で、茶はgreen teaだ。teaだけだと紅茶を想像させるから」

「このcontainer for thin tea powderってなんですか?」

「棗のことだ。茶杓はtea scoop、茶筅はtea whisk、炭はcharcoal、釜はwater potだ」
「water pot!成る程~!変なの~」

「変とか言うな。濃茶はthick tea、薄茶はthin tea。でもアメリカでは濃茶を点てる事はあるが飲ませねぇから。で、茶碗はtea bowl、点前はprocedure、覚えたか?」
「あっはは!そんな馬鹿な!・・・1回で覚えられたら苦労しませんよっ」

「・・・寝る前に復習しろよ」


日本独特の作法は外国人には摩訶不思議だから思わぬところで質問される。
正座が「sit on one's heels」、それで足が痺れたら「One's legs go to sleep」・・・牧野の頭が痺れてきたので初日はこのぐらいで止めておいた。


「英語で言うとなんか軽いですよね~」
「ははっ!だよな。家元がgrand tea masterだからな」

「若宗匠は?」
「semi-master・・・なんか一気にショボくなるよな・・・」

「あはは!本当だ~、やっぱり日本語が素敵ですね!」
「・・・まぁな」



英語を喋れる弟子を2人連れて行くから実は問題ねぇんだけど。
仕事が終わってクタクタなのに大笑いしながら勉強する・・・こんな焦れったいやり方、俺らしくねぇってまたあきらに言われそうだ。




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Comments 4

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2019/10/25 (Fri) 13:47 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/25 (Fri) 14:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

おおっ!またまたいいお話を(笑)
ご友人、凄いですねぇ~!確かに話せたらいいですよね~。

実はわたくし・・・もうすっ・・・・・ごい昔にフランスに行ったのですが、そのホテルの部屋が1111号室だったんですよ。
それでフロントに鍵を預けて外出するように言われ、預ける時はニコッと笑えば受け取ってくれますが、戻った時・・・

1111をどう言っていいのか判らなくなり・・・事もあろうか!

「ワンワンワンワン」って言ったんです(笑)馬鹿でしょ?


当然通じなくて???って顔されたんです。
多分「ワン」も「ONE」には聞こえなかったんでしょうね・・・フランスだし。

仕方なく、紙に「1111」って書いて鍵をもらいました。
旦那が笑ってましたねぇ~。

なかなか緊張して言えないんですよね(笑)


このつくしちゃん、数週間では無理かも?
将来的には・・・喋るんじゃないかしら(笑)

2019/10/25 (Fri) 18:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ちょっと(笑)なんという事を💦
いつも冷静なコメントだったのに、噴き出しちゃったじゃないですか(笑)

そうですねぇ❤近いのかもしれませんが(笑)
もう少し待ってやって下さい💦

まぁ、こっちはどんどん甘くなるんですけどね・・・向こうは最大級のブリザードが吹き荒れているので。

うんうん、何処かで糖分は必要ですね💦


類君のクリスマスストーリー、激甘で考えるか~!!(ヤケクソ)

2019/10/26 (Sat) 08:26 | EDIT | REPLY |   

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