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plumeria

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「そろそろ式の準備に入ったらどうだ?このところ亜由美さんの様子も沈みがちだし、お前がいつまでも
待たせているからじゃないのか?」

とうとう父親が式の催促を始めた。
フランスでの業績も順調に伸びている。焦る必要もなかったが東條の方から催促があったらしい。
いつまでも婚約の状態でフランスに置いておきたくなかったんだろう。

亜由美もまだ見つからない男の事を想って沈んでいたから、それを知らない両親は彼女を気遣った。


「申し訳ありませんが、時期はこちらで決めさせてもらいます。無理を言ってここまで連れてきてるんです。
知り合いもいないし、仕事があるわけでもない。閉じこもりきりなのですから沈むこともあるでしょう」

「お前達が上手くやっているなら問題はないが?」

「そんなところにまで入り込むのはやめて頂きたい!・・・俺たちのことに口を出さないでください。
いくらあなたでも失礼でしょう!」


この時、俺は花沢のために最後の仕事をしていた。
この家に未練はないけど一応この年まで生きてきた場所・・・父親に、ということではなく花沢の社員のため
ひとつでも多くの案件を纏めておきたかった。
IT企業の買収、ヨーロッパでの商業施設の建設と拡大、花沢では手を出していなかったエネルギー関連事業・・・
俺がここを出た後にしばらくはいろんな意味で揉めるだろうから、それを少しでも押さえるために・・・。


そして、いつも頭にあったのは牧野の笑顔だった。
そこに戻るために必死で働いた。

「牧野・・・絶対に迎えに行くから・・・動かないで待っててよ。もう少ししたら俺がここを出るから・・・!」


ただ亜由美の方は少しも進展はなく、むしろ彼女は半分諦めてしまったようだった。
もうどうでも良くなったのか、最近は俺の側にくっついている。まるで捨てられた猫のように・・・。


「悪いけど、俺は君に触れる気は一切ないよ。それを承知でフランスにまで来たはずだよね?
自分の相手がいなくなったからってすぐに俺に乗り換えられるほど軽い気持ちだったの?」

「そんな事はないわ・・・でも、もういいのよ。何もかも嫌になったのよ」

「じゃあ、自分から婚約解消して日本に戻ったら?俺はそんな事何とも思わないから。・・・東條の親に迎えに
来てもらうんなら話しをつけるよ」

不機嫌な顔をして俺を睨み付けているけど、そんな事は関係ない。

この頃から明らかに俺たちの関係が偽りのものであると言うことがわかるようになっていた。
あれだけ張り切って演技をしてきた亜由美がそれをやめてしまったから、当然恋人にはみえなくなっていたんだ。
使用人達の噂話が自然と両親の耳に入っていったんだろう。


ついに父親が動いた。


*******


「和代さん・・・昨日からおかしいの・・・お腹が痛い・・・」

9ヶ月めに入って間がない頃・・・大雨で雷が鳴るような日の夕方だった。
昨日から何となくお腹が張って時々キューッとした痛みがあった。すぐに治まるんだけど今日になったら
それが頻繁に起きて、不安になった私は和代さんに相談した。

「あら・・・まだ、少し早いのに。前の検診の時は異常はなかったはずなのにね・・・でも、大丈夫よ。
もし早産になったとしても、今なら心配ないわ。少し横になりましょう・・・」

ベッドで横になっていたけどやっぱりその痛みは続いた。だんだんとこれが陣痛なんだって自覚してきた。


「大丈夫・・・もうすぐですからね。心配ないのよ。落ち着いてね」

和代さんは念のため車を手配してくれて病院に行くことにしたけど、この大雨で時間がわからないという。
ここは街の中じゃなかったから、もしかしたら通行止めかもしれないと・・・。

予定日よりも1ヶ月も早い・・・心の準備が出来ていなかった。


「はあっ・・・はあっ・・・痛いっ!・・・和代さん、これいつまでかかるの?」

「初めてだもの、少し長くなるかもね。でも、大丈夫よ!誰だってそうだからね」

少し痛みが治まっているときに和代さんは水分を取らせてくれた。すぐ横になって痛みと闘っていたら
和代さんが腰をさすってくれる・・・車はまだ来なかった。


「うっ・・・!痛いっ!和代さんっ・・・痛いっ!」

「赤ちゃんを産むんですもの、この痛みはそのためなの。もう少し頑張って!しっかりしなさい!
つくしさんは今からお母さんになるのよ!」

「・・・お母さん?」

「そうよ。あなたの赤ちゃんは今からこの世界に出ようとしているのよ!頑張って・・・もう少しよ」

繰り返される痛みに必死に耐えていた・・・和代さんは台所で何かを始めている。
まさか、ここで産むんだろうか・・・何にも設備がないところでも大丈夫なの?
慌ただしく動きまわる和代さんに、私はその時が迫ってるんだと思った。


何度目かの激痛の時に、とうとう破水してしまったらしい・・・!

「いやあっ!助けて・・・和代さん!赤ちゃんを助けてっ!」
「大丈夫よ!もう仕方ないわ!ここで産みましょう・・・もう、準備は出来てるから」


神様・・・どうかこの子が無事にこの世に生まれてきますように・・・!
あの人の子供を助けて下さい!

今まで祈ったこともないのに、必死でそう呟いていた。

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随分長い短編だ・・・すでに短編じゃないかも。
あと少しですから。
ごめんなさい。
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Comments 2

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2017/06/05 (Mon) 05:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます

えみりん様~!おはようございます!

そうなんです!
次のお話しの準備中なので短編入れますって書いたのですが
こんなになったの・・・!
自分の中では7話ぐらいの予定だったけど、書いてたらこんなになったんです・・・。

だから、もうすぐ終わるんです・・・。
短編って3話ぐらい?下書きは短かったのになぁ・・・。

最後まで総二郎がいいんですよ!
雨の方で辛い思いしてるから、ここではねっ!
この2人を書くとどうしても楽しくなるようで・・・。

もしかしたら他の人もこれを短編と思ってないかも?

短編じゃなかったらもっとすごい事件起こしてると思うけど。


と、いうことで。
短い話しですけど宜しくお願いします(*^▽^*)

2017/06/05 (Mon) 07:41 | EDIT | REPLY |   

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