FC2ブログ

plumeria

plumeria

-
ステージから降りた3人はすぐにフロア内に入って来た。
そしてそこに近寄っていく招待客の中をゆっくりと、微笑みながら中央に進んで行く。

よく見たら両サイドにはガードのような男がいて、ブラックスーツを着て正装だったが周囲を警戒しているように見えた。


あきらと一緒にそこに近づくと、その歩み方が普通じゃ無かったからなのかその内の1人に引き止められた。
大袈裟では無く、他の招待客には気が付かれないような阻止の仕方で、そこには常識を感じたけどそれどころじゃ無い。其奴を振り解こうとしたら耳元で「お鎮まりを」、そう言われた。

目の高さが同じぐらいの男・・・俺も顔を向けずに目だけで其奴を見たら、その男の表情は比較的穏やかだった。


「離してくれないか。騒ぎを起こそうと思ってる訳じゃ無い。あの女性に話があるんだ」
「失礼ですがどちら様で?」

「花沢だ」
「失礼しました。花沢物産の方ですね?鈴花様にお話を?」

「鈴花・・・まぁ、いい。彼女と話がしたい。出来たら別の場所で・・・」
「ご冗談を。成瀬の方々がこの会場から離れる訳にはまいりません。それに柊祐様の奥様です。すこし軽率な発言ではありませんか?花沢様」

「もういい、自分で行く・・・!」


俺がガードと話してる間にも”つくし”は柊祐と言う男の腕を取って俺から離れていく。それに我慢出来なくて、軽く抑えられていた腕を振り払った。
そうしたら今度は回りにも判るぐらいの勢いで腕を掴み上げられた!

「何をする!」
「お静かに・・・これ以上声を出されるようであればご退出いただきます」

この時ばかりは周りの人間からも「なんだ?」と声があがり、会場の注目は社長達から俺に変わった。もしかしたら”つくし”がこの騒ぎで俺に気が付かないだろうか。
むしろそっちを期待した時、ザワついた連中の中からあきらが飛び出してきた。

「悪かった。俺が大人しくさせるから手を離してくれないか?美作商事の美作あきらだ。俺が責任持つから」


俺の腕を押さえたガードの肩をあきらが掴み、男は振り返って今度はあきらと視線を合わせた。
そして俺の腕を離し、乱れたスーツを直しながら「それではお願い致しましょうか」・・・そう言って3人のところに戻っていった。

「類、無茶するな!」
「・・・判ってるって、でも・・・!」

「お前らしくないぞ!冷静になれ・・・こっちに来い!」


冷静・・・?
この状況で冷静になんてなれないだろう・・・!

その場から少し離れて会場の隅に引っ張られていき、そこで今度はあきらを振り払った。


ガードは社長と柊祐という男に今の話をしたのだろうか、社長は振り向いて俺の方に顔を向け、柊祐はさっきと同じ鋭い視線を向けた。
でも”つくし”は顔すら向けない。真正面に居る何処かの夫人に挨拶し、俺には大胆に人目に晒している背中と真っ赤な薔薇しか見えなかった。
その後柊祐がガードに何かを指示し、何事も無かったかのように社長も背中を向けた。


やがて3人は招待客で隠されて見えなくなり、俺の腕はあきらが掴んだまま・・・。


本当に人違いか?
それほど似ている人物なのか・・・でも、あきらだって確信してる。

あれは”つくし”だと・・・。


「類、少し様子を見よう。ここじゃ場が悪い。それに花沢は牧野の事を入院中だと・・・」
「無事だった・・・」

「え?」

「・・・見る限り平気そうだった。つくし、あの事故で大怪我してるんじゃないかと思ってたから・・・でも普通に歩いてた」


触れることは出来なかったけど・・・まだ気が昂ぶっていたけど、この時初めて彼女が無事だったことを喜べた。
俺みたいに苦しんで大きな傷跡が残ったり、何処かに後遺症が残ったらどうしようかと・・・命そのものを疑問視する連中の言葉なんて耳に入れずにつくしの怪我の程度だけ心配してたんだ。

それだけは良かった・・・・・・。



それから柊祐と”つくし”の姿は会場から消えた。
社長は声も高らかに中央で大勢と歓談中なのに、その隣にあの2人の姿がない。あきらも探しているようだけど、あの漆黒の髪の赤い薔薇は何処にも見当たらなかった。

まさか・・・もう帰ったのか?俺はまだ声も聞いていないのに?

急に不安になってあきらから離れて会場の中をウロウロしたら、さっきのガードの男に呼び止められた。


「花沢様、こちらに・・・」
「・・・会えるの?」

「はい。柊祐様がお部屋までどうぞと・・・」
「そいつも居るのか」

「ご夫婦でございますから」


淡々とした無感情な声・・・何処かでこんな口調を聞いたと思ったら、あの日の運転手・・・吉岡だ。
この男は虚ろではなかったけど、何処か同じような空気を感じた。




**




案内された部屋はこのホテルの最上階。
その一室の前でガードがノックをしたら、中から『どうぞ』と言う、男にしては優しげな声がした。

カチャ、と小さな音を立ててドアは開けられ、俺が入ると男も入ってきてドアを閉めた。俺が暴れないようにするための見張り・・・そう言う意味だろう。


そんな事はどうでもいい。
ドキドキしながら奥に進むと、その部屋のソファーに座った”つくし”と柊祐が目に入った。

いや、正確に言えば”つくし”だけを俺の目が捉えていた。


さっきと同じドレスで、髪にある真っ赤な薔薇も同じ・・・その目は冷ややかだったけど、つくしに間違いなかった。
あの肩の細さを、あの腕のラインを、色は違ってもあの唇を俺が忘れる訳がない!後ろに立っている柊祐なんて気にせずに、俺は真っ直ぐ”つくし”だけを見つめた。

”つくし”も俺を見つめてる・・・笑顔じゃなかったけど、あの目が俺を見ていると思ったらもう我慢出来なかった。


「・・・つくし!会いたかった!」


そう叫んで飛び出そうとしたら、やはり後ろから男がやってきて俺の前に立ちはだかった。

「退け!!」

そう言っても無言で睨みつけ、横から行こうとしても手を出して阻止する。ムカついてその腕を掴んだけど、怪我が治ったばかりで力は以前ほど出ない。
それでも漸く会えたのに退く事なんて出来ない・・・少し痛みは走ったけど、こいつを掴んだ手に力を入れた時に柊祐から「止めろ」と声が掛かった。

それを聞くと男はスッと引き、あっさり俺の前から下がった。


なんだ?今のは・・・・・・。
この男の感情も意思も感じられない動き・・・それに戸惑った。


「無礼をお詫びする。花沢類君・・・ですね?」


さっきの優しげな声が俺のフルネームを呼んだ。
初めて出席するこの会社のパーティーで、しかも代行で来た俺のフルネームを知ってる?


「こちらこそ失礼。私の事を知っているのですか?」

「勿論。もうお怪我はいいのですか?大変な事故に巻き込まれたとか・・・災難でしたね」
「・・・もう大丈夫です。成瀬柊祐さん・・・あなたとお会いした事はないですよね?」

「さぁ、どうだろう・・・」


声は穏やかだけど何故か癇に障る口調・・・しかも意味ありげに浮かべる薄笑いにイラッとする。
この間も”つくし”は1度も笑わない。黙って柊祐と俺の会話を聞いてピクリとも動かない。それも本来の彼女とは全然違うところだった。

つくしはもっと感情豊かで、初めて会う人にも気を遣うし、話しやすければ積極的に自分から自己紹介してた。苦手だと思っても無視したり出来なくて、なんとか話し合おうと努力する・・・そんな女性だ。

それなのに目の前の”つくし”はまるで人形のようだった。


「それで?私達と話がしたいと聞きましたが、どう言う話でしょう?まさかここで商談ですか?」
「いや、話がしたいのはあなたではなくそちらの女性です。彼女はあなたの妻だと言われましたがそうじゃない。彼女は花沢つくし、私の妻です」

「・・・・・・君の?」
「そうです。実は事故後の報道では妻は重症で治療中となっていますが本当は行方が判らなくなっていました。それなのに、どうしてあなたと居るのか判りませんが、話をさせて下さい。そしてすぐに連れ帰りたい」

「・・・・・・・・・・・・」


つくし・・・どうして何も言わないんだ?
どうしてそんな冷たい目で俺を見るんだ?

まさか覚えてないとか・・・じゃないよな?

確かに彼女に聞こえるように言葉を出したのに、”つくし”は全く反応しなかった。


「つくし、すごく探したんだ!この人に助けてもらったのならどうして早く連絡しなかったんだ?!」
「・・・・・・・・・・・・」

「怪我は・・・あぁ、いいや、マンションでゆっくり聞くよ。早く帰ろう?」
「・・・・・・・・・・・・」

「もう大丈夫だから安心して・・・」
「花沢さん、どうやら人違いをされているようですが?」

「・・・・・・・・・・・・」


”つくし”の顔を見ながら話しているのにそれを遮ったのは柊祐。
ムッとしてそいつを見たら、馬鹿にしたような顔でニヤリと笑った。いや、笑ってるけど目は笑ってない・・・ゾッとするような憎しみに満ちた目だ。


「先ほども会場で紹介したでしょう?彼女は私の妻・・・成瀬鈴花ですよ。もう結婚して3年になります。な、鈴花」


「・・・・・・えぇ、私は成瀬鈴花です。こちらの方は・・・存じ上げませんわ」



2ヶ月半ぶりに聞いたつくしの声が・・・・・・俺を否定した。





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by