FC2ブログ

plumeria

plumeria

それから1週間。
渡米まであと数日となり、巾着袋の製作もあと少し。それ以外の荷物はさっさと航空便でアメリカに送った。

「巾着袋制作室」の稼働状況は本来の仕事よりも賑わっていて、夕方の作業が終わったらワイワイとそこに向かう姿があった。
志乃さんの話だと女性用にはマチ付きのデザインで、紐通しの部分を少し下に作る事で口の部分をギャザーにしたのだとか。
「普段話さない人達とも交流できて、みんな楽しそうですわ~」なんて使用人を取り纏めている彼女らしい言葉があった。

勿論、牧野も秘書の仕事が終わったら必ず顔を出して、ミシンを掛けたり紐を通したりと忙しそうだ。

だから・・・なのか?



「それではアメリカでの滞在はMホテルのリザーブしてある部屋で宜しいですか?」
「あぁ、それでいい。司にはメールしときゃいいだろ」

「・・・・・・・・・」

「同行する男性の弟子の部屋は予約済みです。ただ牧野さんの部屋ですが、元々家元が行く時のために私が予約した部屋がありますので、そちらの宿泊予定者の変更をしておきます。宜しいですか」
「・・・・・・(牧野はやっぱり別の部屋か・・・)あぁ、いいだろう」

「・・・・・・・・・」


牧野じゃまだ外国での事まで手配出来ねぇだろうから、堤を交えて打ち合わせ中・・・それなのに牧野の様子がおかしかった。
夜にはあれだけはしゃいで使用人達とワイワイしてるのに昼間の勤務中はヤケに静かだ。
いつからだっけ、と考えたら巾着袋制作室が出来たぐらいからか?

今もメモをしようとペンを持ってるのに何1つ書いてない。


「今回も最終日にはパーティーがあります。お召し物は?」
「堅苦しいけど着物だよな・・・他の連中もそうだし。出来たらタキシードがいいけど」

「そうですねぇ・・・でもやはりここは紋付き袴でしょうね」
「仕方ねぇや」

「牧野さんはどうします?」

「・・・・・・・・・・・・」


また聞いてない。ってか、何処見てるんだ?
手帳を通り越して堤の腹辺りを見てねぇか?ってぐらいうわの空だ。
それを見て堤が「コホン!」と咳払いをしたら「はっ!」と姿勢を正してペンを持ち直したが、慌ててそいつを床に落とした。で、ペンを拾おうと手を伸ばしたら、椅子のキャスターが滑って・・・

「きゃああっ!!」

ガッタン!!

「牧野さん?!」
「・・・・・・アホか!」

見事に椅子と一緒に床に寝てる。
これには堤も俺も溜め息しか出ず、仕方ねぇから堤が椅子、俺が牧野を起こして、ついでに落としたペンまで拾ってやった。


まさか、寝不足か?
いや、でも志乃さんに任せてるから12時前には「巾着袋制作室」は閉められてるしな・・・。


「何やってんだ、牧野!こんな時に怪我するなよ?」
「いたたたたた・・・申し訳ありません!」

「牧野さん。勤務中に余計な考え事をしていると大きなミスを起こします。どうしても集中出来ないなら休んでくれた方が助かります。総二郎様がお決めになることですが、この状態なら居ても無意味。どうでしょう、総二郎様」


堤の手厳しいひと言に牧野は「いえ!大丈夫です!」と真っ赤な顔してたが、確かにそこに座ってるだけで何も聞いてないなら邪魔なだけ。
慌てて日程表を開き直してるけど、そこはもう話し終えた箇所・・・って事は初めから何にも聞いてなかったのか?

それなら、仕方ねぇか・・・。


「堤と滞在期間中の行動スケジュールを確認するからお前はもういい。今日はこれまで」

「えっ?でもまだお昼前・・・」

「うちは定時制じゃねぇから今日はもういいって言ってるんだ。どうせ午後も俺は渡米準備で夕方1人稽古に来るだけ。別にお前が居なくても問題ないから」

「・・・・・・・・・・・・」
「牧野さん、気になるのなら土産の仕上げでもしたらどうですか?まだ残ってるんでしょう?」

「・・・はい。では・・・お疲れ様でした」


もしかしたら寝不足じゃなくて腹が減ってるのか?
いや、まさか?




*********************




「178・・・179・・・あぁ、あと21個なんだ・・・」

思いの外早くに言われた「今日はこれまで」。
だからスーツを脱いで普段着に着替え、巾着袋制作室でこれまで作ったものを確認していた。

可愛く出来たなぁ・・・なんて思うのに心の中が何故がウキウキしない。

『総二郎さんのお祝い膳』って言葉が頭の中でグルグル回ってる。
何時間寝ても、何を食べても、何を見ても・・・特に西門さんを見たらそれしか考えられなくて仕事が手に付かない。もうすぐアメリカだって言うのにあれから英語の練習もしてないし。


どうしてなんだろう・・・こんなの初めて。
普通は寝たら次の日にすっきりしてるのに。

それに西門さんは上司であって彼氏じゃ・・・・・・はっ?彼氏?!


「いやいやいや!冗談じゃない、流石にそれはないわ~!さっ、少しでも進めちゃお!時間も迫ってるし、みんなの睡眠時間も削ってるし!」

まだ生地のままの残りを手に取ってミシンの前に座り、1人でカタカタとそれを作った。
時々通りかかる人に「どうしたの?」って言われるから「今日はお休みもらったの!」って、ちょっと違うけどそう答えて誤魔化した。

「・・・よし、1個出来た。じゃあ今度は桜流水・・・裏地は青海波ね」

カタカタカタカタ・・・・・・・・・カタ・・・


どんな人なんだろう。
西門さんの婚約者さんって。
雪乃さんや真凜さんもその立場を狙っていたけど、他にも居るって言ってたもんね。

由緒正しい家柄のお嬢様が・・・。


「はっ!間違えた!これだとリバーシブルにならないじゃん!解かなきゃ・・・」

チクチクチクチク・・・・・・チク・・・


綺麗な人なんだろうな。
あの人に釣り合うような大人の・・・着物が似合う人だったりして。
そうなったらあの部屋に住むのかしら。それとも新婚さんだから暫く2人でってマンションに住むとか・・・。


「うわぁぁっ!解きすぎた!ヤバい、縫わなきゃ!」

カタカタカタカタ・・・・・・・・・・・・


どうしてこんなに気になるんだろう。そしてどうして私が落ち込むの?
全然関係無いじゃん・・・あんな人。

「そうよ!だって無理矢理会社を辞めさせて秘書にさせられて、あんなキスまでされて勝手に靴やら車やら買っちゃって、苦いお茶は飲まされるし、人の休日使って車まで強制的に・・・」


でも毎日楽しかったかも。
嫌なこともあったけど、前の会社みたいに毎日が同じじゃなくて驚くことも面白い事も沢山あって・・・アパートに帰っても西門さんと話した事を思い出して笑ったっけ。

杉本さんの時にはこんな事なかった・・・な。



結局お昼過ぎから始めたのに夕方までに3個しか出来なくて、いつも通りみんなに手伝ってもらった。
そして私は「風邪っぽくて」って作業をサボってしまった。

志乃さんも心配して部屋に来るし、みんなも差し入れなんてしてくれる。
「ありがとう~」って笑って受け取るけど、何処かで無理して笑ってるって自分でも気が付いてる。


ズキズキと痛む胸は本当・・・これがどうしてなのか判らずに、モヤモヤした気分で布団に潜った。






にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/10/28 (Mon) 14:26 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/10/28 (Mon) 14:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そうなんです~・・・何にも出来なくなったつくしちゃんです~。
英会話もどっかにぶっ飛んだみたいなんです(笑)

ビオラ様、お話しの中に入って教えてあげて下さいよ(笑)


ぶははははは!!総ちゃんがそんな先生に💦
そりゃ「女子専用」ですね?♡怖いわ、ビオラ様・・・。

2019/10/28 (Mon) 21:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ははは!つくしちゃん、ボロボロになってしまいました(笑)

そして総ちゃんは何も判って無い・・・さて、どうしてでしょう?(笑)
まりぽん様、こっちはコメディですよ?!ふふふ♡

そんなこんなでアメリカに行ってまいります~。
いつもは元気なつくしちゃんがヨボヨボになって総ちゃんに引っ張られて(笑)

いつになったら浮上するかな?
楽しみにしていて下さいね~。

2019/10/28 (Mon) 22:49 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply