いろはにほへと恋せよ乙女・59
すごく豪華なホテル・・・対談で撮影した日本のホテルも凄かったけどここはもっと凄い!おまけに外人さんだらけだから余計にドキドキした。
西門さんはポカンと口を開ける私に呆れて怒鳴るし、お弟子さん2人は初めてじゃ無いらしくてホテルの中も知ってるんだとか・・・こんな所に何回も来るなんて信じられない!
天井から差し込む光が、日本と同じ太陽だとは思えなかった。
「牧野さ~ん、エレベーターに乗るよ?早くおいで」
「あっ!ごめんなさい!」
「1人になったら困るんでしょ?はぐれないでね」
「あはは!上田さん、頼りにしてます~」
優しい2人はエレベーター前で待っててくれて、私は小走りでそこに向かった。2人の横にはムスッとした彼・・・でも、西門さんの顔は見ないようにしてエレベーターに乗った。
そこの最上階に西門さんは泊まると言って、私と井上さん、上田さんは普通の客室がある7階で降りて彼とは別れた。
今日は夕食まで各自自由って事で、私は自分の部屋でまずはゆっくり。
後で巾着袋の詰め作業をしなくちゃいけないけど、それはボチボチやろうと考えていた。どうせオープニングセレモニーもデモンストレーションもここでやるんだから荷物の運搬もないし。
「はぁ~、今回は若宗匠が機嫌良いから気が楽だな!」
「ホントホント!」
「え?あれで機嫌良いんですか?」
「牧野さんは秘書やってるけど気がつかないの?あの人、全然喋らないし、いつも怖い顔して人を睨んでない?今回は顔が穏やかなんだよな~」
「少しでも自分の思い通りにならなかったら怒り出すし、完璧主義だからね~」
「・・・・・・・・・」
全然喋らない?いや、むしろ普段は五月蠅いけど?
怖いのは当たってるけど、たまには子供みたいに笑うし、完璧主義・・・はそうかも。でも茶道だけでしょ?
西門さんと別れた途端に背中が丸くなる2人。飛行機の中は別々だったからいいとして、それ以外では気を遣ってたってホッとしてるみたいだった。
・・・そんなに?じゃあ私って怖い物知らずってこと?
私達の部屋は並びの3部屋で、私は1番手前だったから「じゃあ夕食で~」って言いながら部屋に入った。
「うわっ!この部屋を1人で?」
前の会社でビジネスホテルにしか泊まったことがないから、こんな豪華な部屋は初めて!
1人しか寝ないのにクィーンサイズのベッドだし、ちゃんと寛ぐためのリビングみたいな部屋もあって、そこには贅沢なソファーも!家具はモダンですっきりしてるけど、所々の装飾は凝ってて、窓からは見えるのは大都会・ニューヨークの街並み。
すごいなぁ・・・あの狭いアパートから何処にも行けないと思ったのに、私、こんなところまで来ちゃった。
これも西門で働いたからなんだよね・・・。
「よし!やっぱり先に巾着袋にお茶セット、詰めちゃお!」
部屋が広いからセンターラグの上に巾着袋を並べて、私達より先にホテルに届けられていたお土産用お茶碗と抹茶セットが入ったケースを井上さんに持って来てもらった。
そして1つ1つ丁寧に・・・お抹茶の袋と小さめの茶筅に茶杓を用意していたビニール袋に入れていく。小さな箱に入った茶碗を先に巾着袋に入れたら隙間にお抹茶の袋。それを詰めたら口をキュっと結んで蝶々結び。
「ふふっ!やっぱり可愛いじゃない?うん!西門のタグも綺麗に見えるしね」
カラフルな和柄の巾着に、同じくカラフルな紐。
それをいくつも作ってたら、これを作り始めた日を思い出して・・・また頭の中で考え事が始まった。
「総二郎さんのお祝い膳」は・・・いつなんだろう。
**
上田さんに18時になったらホテルの外にあるレストランに行こうって誘われたけど、西門さんからは連絡がない。
いつもなら聞いてくれるのに、今日はどうしたのかなって気になっていた。
日本であれだけ纏わり付くのに外国に来たら野放し?それもどうなのって・・・でも、私から電話する訳にもいかないから、時間になったら部屋を出て、ロビーに向かった。
エレベーターで下まで降りてぐるっと見回したら、井上さんと上田さんが私に背中を向けてるのが見えた。約束の時間にはなってなかったけど、2人を待たせたんだと思って急いで近寄ったら・・・その隣に見えた背中は西門さん?
ヤバい!彼も一緒だったんだ、と焦ったら、近くまで行った時に「牧野に言うなよ」って西門さんの声が聞こえた。
私に言うな・・・って、何を?
その言葉に驚いて、すぐ近くの柱に隠れたら、優しいクラシックのBGMと一緒にその会話の続きが聞こえた。
「その方を牧野さんは知らないんですか?」
「あぁ、知らねぇ。会えば驚くだろうからな」
「はは・・・ですよね~」
「だから今日は遅くなると思うけど、多分ここに戻ると思う。もし戻らなくてもあいつと一緒だから気にすんな。明日の朝の打ち合わせは9時からだっけ?」
「はい。9時からですからその頃までに戻っていただければ」
「牧野が五月蠅いから余所で泊まっても早くに帰る。飲みに行ったことも聞かれたら上手く誤魔化せ」
「判りました。お気を付けて」
・・・・・・・・・・・・。
アメリカまで来てるのに誰かに会いに行くんだ。
私に言えない人・・・会えば私が驚く人って・・・まさか婚約者もここに来てるってこと?!
そして今日はここに戻るかどうか判らないって?
本当にそんな人が居たんだ・・・・・・わざわざ外国までついてくる、それを許すほど好きな人が西門さんに居たんだ。
「牧野さん、遅いね~」って言う井上さんの言葉が聞こえたけど、私はもう少しだけ隠れて今の話を聞いてない事にしなきゃ。
あれ?なんで・・・?
どうして私のほっぺた、濡れてるんだろう・・・。
**
「牧野さんっ、飲み過ぎじゃない?」
「明日も仕事だからっ・・・ね?そろそろグラス置いて?」
「いいじゃないですかぁ~!アメリカですよ?だーれも怒りませんって!西門さんも居ないんだし!」
アメリカに何度か来たことがある2人はこのホテルの周辺にあるレストランも詳しいってことで、アメリカ初のレストランって言われるステーキ専門店に連れて行ってもらった。
地下にもフロアがあって、思ったより高級感があるゆったりした席。でもそこまでシーンとしてる訳じゃなく、楽しそうな会話が聞こえるようなお店だった。
そこで飲んだお酒・・・美味しいかって言われると味なんて判らない。
でも前菜が出てきた時から既に変なテンションになっていたから、所謂ヤケ酒・・・両隣の2人が止めるのを無視して何杯飲んだか覚えてもない。
何だろ、この感じ・・・杉本さんの時と似てる?
ううん、そうじゃない。あの時は1人で怒ってたもん・・・今は怒ってるんじゃない。
怒ってなんかいない・・・自分でもよく判らないだけ!
「牧野さん、食べてる?食べないと悪酔いするよ?」
「倒れないでよ?牧野さんっ!俺達どうしていいか判らないから!」
「・・・・・・そう、どうしていいのか判らないんです。なんでこんなに・・・・・・ここまで来てこんな気分に・・・」
「は?何言ってんの?ほら!お水っ!」
「どうしちゃったの?牧野さん、それよりお酒弱いんじゃなかった?」
「・・・・・・うぷ・・・気持ちわるっ・・・」
「「牧野さーーんっ!!」」
牧野つくし・・・アメリカでも悪酔いして、今度は初めて来た国で吐いてしまった・・・。
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天井から差し込む光が、日本と同じ太陽だとは思えなかった。
「牧野さ~ん、エレベーターに乗るよ?早くおいで」
「あっ!ごめんなさい!」
「1人になったら困るんでしょ?はぐれないでね」
「あはは!上田さん、頼りにしてます~」
優しい2人はエレベーター前で待っててくれて、私は小走りでそこに向かった。2人の横にはムスッとした彼・・・でも、西門さんの顔は見ないようにしてエレベーターに乗った。
そこの最上階に西門さんは泊まると言って、私と井上さん、上田さんは普通の客室がある7階で降りて彼とは別れた。
今日は夕食まで各自自由って事で、私は自分の部屋でまずはゆっくり。
後で巾着袋の詰め作業をしなくちゃいけないけど、それはボチボチやろうと考えていた。どうせオープニングセレモニーもデモンストレーションもここでやるんだから荷物の運搬もないし。
「はぁ~、今回は若宗匠が機嫌良いから気が楽だな!」
「ホントホント!」
「え?あれで機嫌良いんですか?」
「牧野さんは秘書やってるけど気がつかないの?あの人、全然喋らないし、いつも怖い顔して人を睨んでない?今回は顔が穏やかなんだよな~」
「少しでも自分の思い通りにならなかったら怒り出すし、完璧主義だからね~」
「・・・・・・・・・」
全然喋らない?いや、むしろ普段は五月蠅いけど?
怖いのは当たってるけど、たまには子供みたいに笑うし、完璧主義・・・はそうかも。でも茶道だけでしょ?
西門さんと別れた途端に背中が丸くなる2人。飛行機の中は別々だったからいいとして、それ以外では気を遣ってたってホッとしてるみたいだった。
・・・そんなに?じゃあ私って怖い物知らずってこと?
私達の部屋は並びの3部屋で、私は1番手前だったから「じゃあ夕食で~」って言いながら部屋に入った。
「うわっ!この部屋を1人で?」
前の会社でビジネスホテルにしか泊まったことがないから、こんな豪華な部屋は初めて!
1人しか寝ないのにクィーンサイズのベッドだし、ちゃんと寛ぐためのリビングみたいな部屋もあって、そこには贅沢なソファーも!家具はモダンですっきりしてるけど、所々の装飾は凝ってて、窓からは見えるのは大都会・ニューヨークの街並み。
すごいなぁ・・・あの狭いアパートから何処にも行けないと思ったのに、私、こんなところまで来ちゃった。
これも西門で働いたからなんだよね・・・。
「よし!やっぱり先に巾着袋にお茶セット、詰めちゃお!」
部屋が広いからセンターラグの上に巾着袋を並べて、私達より先にホテルに届けられていたお土産用お茶碗と抹茶セットが入ったケースを井上さんに持って来てもらった。
そして1つ1つ丁寧に・・・お抹茶の袋と小さめの茶筅に茶杓を用意していたビニール袋に入れていく。小さな箱に入った茶碗を先に巾着袋に入れたら隙間にお抹茶の袋。それを詰めたら口をキュっと結んで蝶々結び。
「ふふっ!やっぱり可愛いじゃない?うん!西門のタグも綺麗に見えるしね」
カラフルな和柄の巾着に、同じくカラフルな紐。
それをいくつも作ってたら、これを作り始めた日を思い出して・・・また頭の中で考え事が始まった。
「総二郎さんのお祝い膳」は・・・いつなんだろう。
**
上田さんに18時になったらホテルの外にあるレストランに行こうって誘われたけど、西門さんからは連絡がない。
いつもなら聞いてくれるのに、今日はどうしたのかなって気になっていた。
日本であれだけ纏わり付くのに外国に来たら野放し?それもどうなのって・・・でも、私から電話する訳にもいかないから、時間になったら部屋を出て、ロビーに向かった。
エレベーターで下まで降りてぐるっと見回したら、井上さんと上田さんが私に背中を向けてるのが見えた。約束の時間にはなってなかったけど、2人を待たせたんだと思って急いで近寄ったら・・・その隣に見えた背中は西門さん?
ヤバい!彼も一緒だったんだ、と焦ったら、近くまで行った時に「牧野に言うなよ」って西門さんの声が聞こえた。
私に言うな・・・って、何を?
その言葉に驚いて、すぐ近くの柱に隠れたら、優しいクラシックのBGMと一緒にその会話の続きが聞こえた。
「その方を牧野さんは知らないんですか?」
「あぁ、知らねぇ。会えば驚くだろうからな」
「はは・・・ですよね~」
「だから今日は遅くなると思うけど、多分ここに戻ると思う。もし戻らなくてもあいつと一緒だから気にすんな。明日の朝の打ち合わせは9時からだっけ?」
「はい。9時からですからその頃までに戻っていただければ」
「牧野が五月蠅いから余所で泊まっても早くに帰る。飲みに行ったことも聞かれたら上手く誤魔化せ」
「判りました。お気を付けて」
・・・・・・・・・・・・。
アメリカまで来てるのに誰かに会いに行くんだ。
私に言えない人・・・会えば私が驚く人って・・・まさか婚約者もここに来てるってこと?!
そして今日はここに戻るかどうか判らないって?
本当にそんな人が居たんだ・・・・・・わざわざ外国までついてくる、それを許すほど好きな人が西門さんに居たんだ。
「牧野さん、遅いね~」って言う井上さんの言葉が聞こえたけど、私はもう少しだけ隠れて今の話を聞いてない事にしなきゃ。
あれ?なんで・・・?
どうして私のほっぺた、濡れてるんだろう・・・。
**
「牧野さんっ、飲み過ぎじゃない?」
「明日も仕事だからっ・・・ね?そろそろグラス置いて?」
「いいじゃないですかぁ~!アメリカですよ?だーれも怒りませんって!西門さんも居ないんだし!」
アメリカに何度か来たことがある2人はこのホテルの周辺にあるレストランも詳しいってことで、アメリカ初のレストランって言われるステーキ専門店に連れて行ってもらった。
地下にもフロアがあって、思ったより高級感があるゆったりした席。でもそこまでシーンとしてる訳じゃなく、楽しそうな会話が聞こえるようなお店だった。
そこで飲んだお酒・・・美味しいかって言われると味なんて判らない。
でも前菜が出てきた時から既に変なテンションになっていたから、所謂ヤケ酒・・・両隣の2人が止めるのを無視して何杯飲んだか覚えてもない。
何だろ、この感じ・・・杉本さんの時と似てる?
ううん、そうじゃない。あの時は1人で怒ってたもん・・・今は怒ってるんじゃない。
怒ってなんかいない・・・自分でもよく判らないだけ!
「牧野さん、食べてる?食べないと悪酔いするよ?」
「倒れないでよ?牧野さんっ!俺達どうしていいか判らないから!」
「・・・・・・そう、どうしていいのか判らないんです。なんでこんなに・・・・・・ここまで来てこんな気分に・・・」
「は?何言ってんの?ほら!お水っ!」
「どうしちゃったの?牧野さん、それよりお酒弱いんじゃなかった?」
「・・・・・・うぷ・・・気持ちわるっ・・・」
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牧野つくし・・・アメリカでも悪酔いして、今度は初めて来た国で吐いてしまった・・・。
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