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plumeria

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目の前に来た成瀬柊祐は1人だった。
つくしは傍には居ない・・・そして相変わらず不敵な笑みを浮かべていた。

間近で見るその表情にはあきらも少し驚いたようで、彼を見つめて固まった。


「つくしは?」
「鈴花です。妻はこういう場所にはあまり慣れていないので疲れたようです。部屋で休んでいますよ」

「悪いがさっき触れた時に彼女がつくしだと確信した。とにかく帰してもらいたい。部屋はどこ?」
「ははっ!本当に判らない人ですね。お止めなさい・・・それ以上言ってると花沢物産の後継者は精神を病んでると噂されますよ?入院中の妻が居るのに他人の妻を欲しがるってね・・・」

「そんな噂は怖くない!つくしさえ戻ってくれれば・・・!」
「類、落ち着け!」


柊祐に掴み掛かろうと足を踏み出した俺をあきらがまた止めて、その光景をクスクス笑う・・・こいつの何もかもにムカついてあきらの腕を振り払ったけど、再び柊祐の後ろにはガードの男が姿を見せていた。
俺が飛び掛かったらすぐにでも柊祐を守る為に動くつもりなんだろう。隙を見せない男は殺意さえ感じる目をしていた。


「あなたは?」

柊祐は俺の横にいるあきらに視線を向け、同じように薄笑いを浮かべた。


「私は花沢の友人で、美作あきらと申します。名乗りもせずに失礼」
「あぁ、あなたが美作商事の?お美しい母上と可愛らしい双子の妹君がいらっしゃるとか。そしてあなたは何故か御夫人がお好きだという・・・勿体ない、その容貌だと素敵な令嬢とのご縁があるでしょうに」

「・・・何故あきらの事を知ってる?」
「妹の事は知られててもおかしくないけど、それ以外の情報まで?イギリスで取引はあるようだけど、私自身はあなたに会うのは初めてだと思うんですが?」

「くす・・・色々知っていますよ。美作あきら君の事を、って言うより花沢類君の回りの人間の事をね。
もう2人ほどユニークな親友がいるでしょう?道明寺ホールディングスの後継者と西門流の若宗匠でしたっけ?4人で随分と派手に楽しく過ごされてたようだから」

「司と総二郎も?」
「道明寺はそちらと同じくアメリカ中心で動いてるから判るけど、西門の事まで?いや、確かに派手に遊んでいた時もあるから、そこは否定はしないけど」

「道明寺司君・・・君と奥様を奪い合ったライバルでしょう?道明寺家が拒否したから花沢家に迎える事が出来た・・・大恋愛だったそうですね。西門総二郎君・・・日本の伝統文化継承者でありながら少々危ない遊びが多いそうで。でも意外な一面を持ってる切れ者、そんなところでしょうか?」


柊祐が左手で髪を触った。
その時にキラッと光ったのはさっきの”つくし”と同じ指輪・・・それを見せるかのように手を止め、俺を見てまた目を細める。

その挑発的な態度は何故だ・・・?
さっきはわざわざ俺を呼び出して”つくし”を見せ、今度は1人で来て「夫婦」を強調する・・・その心理が判らない。


「どうして学生時代のことまで?」
「・・・美作さん、あなたは花沢類君のおかしな言動をなんとも思わないのですか?と、言う事は同じ意見ですか?」

「・・・・・・いや」

あきらがつくしの行方不明を口にすることは出来ない。
だから柊祐の問いには答えなかった。



それにしても・・・なんだ?

こいつの喋り方・・・こっちは攻撃的になっているはずなのに、この声を聞くと気が削がれる。何故だか判らないけど身体の力が緩む・・・それはさっきの部屋でも少しだけ感じた事だった。

感情と身体がバラバラ・・・そんな感じがする。
つくしが居た時には彼女に意識が集中していたからここまではなかったけど、今は・・・・・・


「何故彼の周辺の事を知ってるか・・・そうですね、今後は花沢ともお付き合いしていこうと考えているのですよ。だから少しでも仲良くなりたくて、と言う事でお許しを。また改めて花沢物産に顔を出しますからどうぞ宜しく・・・花沢類君」


クルリと向きを変えてまたエレベーターに乗り込み、それは最上階へ上がっていった。
あいつが今からつくしのところに行くと言うのに、俺とあきらは金縛りにあったように足が動かなかった。




*********************




「・・・・・・・・・・・・」

「もう目覚めてもいいよ・・・・・・つくしちゃん」

「・・・・・・・・・ん・・・」


そんな声が聞こえてピクッと眉間を寄せた。
そうしたら「あの音」が聞こえて、私はパチッ!と目を覚ました。


「・・・・・・・・・・・・」
「起きた?気分はどう?」

「・・・最悪・・・ここは何処?」

「東京。ぐっすり眠った状態で来たから判らなかったでしょ?」

「東京・・・東京なの?!じゃあ類のところに帰して!」
「それは無理。何度も話したよね?君と花沢類はもう会えないって」


ズキズキする頭を抱えて身体を起こしたら、私が居るのは何処かのホテルの部屋みたいだった。急いでベッドから降りて・・・って、その時に見た自分の姿に驚いた!
黒いイブニングドレスに派手なアクセサリー?部屋にあった鏡に映った自分は髪にも真っ赤な薔薇を着けていた。

黒と赤・・・こんなの着たこともない、大人っぽいドレス。
あんまり大人っぽいのは自分らしくなくて好きじゃ無かったから、類が「試しに着てみたら?」って言っても手に取らなかった色。そんなドレスを着て柊祐の前で寝ていたの?


「・・・これは何のためのドレス?どうして私、こんなものを着てるの?」
「いつも山の中だと気が滅入るだろうからドライブしたんだよ。そうしたらすぐに寝ちゃったんだ。でも目覚めた時にお姫さまみたいだったら嬉しいかなって・・・どう?気に入った?」

「気に入る訳ないじゃない!私の服は何処?それを着て類の所に帰る!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃない。久しぶりにその目で夜景でも楽しんだら?」

「・・・・・・!」

フラつく足でベッドを降りて、閉まっていたカーテンを開けてみた。
確かに東京だ・・・!久しぶりに見る高層ビルと煌びやかなネオンに胸が高鳴り、類が近くに居るって思うとすぐにでもここから飛び出したかった。

クルッと向きを変え、ドレスの裾を持ち上げて小走りでドアに向かい、そこをバン!と開けると・・・


「お戻り下さいませ。明日にならないとここからは出ることは出来ません」
「退いて!」

「退きません。お戻り下さらねば少々痛い思いをなさいますよ?」
「いやだ!私は類のところに帰るんだから!」

「いえ、ここからは1歩も出ることは出来ません!」
「いやああぁーーっ!!」

ドアの外に居た大柄な男性に腕を掴まれ、また部屋の中に戻されると柊祐の座ってるソファーの前に連れて行かれた。
掴まれた片腕は後ろに捻られてるから振り解こうにも力が入らない・・・!必死に藻掻く私を柊祐は頬杖ついたまま黙って見ていた。

自分が小さな子供みたいに思える体格差!それでも夢中になって抵抗していたら、やっと柊祐が「離してやれ」と言葉を出し、それを聞くと男性はすぐに私を解放してくれた。
そしてすぐに部屋を出ていき、ドアは閉められた。

また、そこで見張る・・・そう言う事?それにしては動きが・・・・・・?



「残念だったね。でも判っただろ?君はあいつのところに帰られないんだって」
「いやだ・・・絶対に帰るんだから!」

「花沢家はもう捜索を諦めてるらしいよ。そのうち失踪宣告でもするんじゃない?」

「失踪・・・宣告?」

「そう。生死が明らかでない時に裁判所に申し立てれば可能だ。ただしこの場合は7年後・・・少し先だけどね。そうしたら死亡とみなされることにより、婚姻関係が解消って訳だ」


類と私の婚姻関係が・・・解消?


柊祐はそれだけ言うと「ゆっくりおやすみ」って言って奥の部屋に消えて行った。



柊祐に出会ってから何度かこんな事があった。
鈴の音が聞こえると意識がぼーっとし始めて、次に「あの音」を聞くまで自分のしていることが判らなくなる。
初めはお屋敷の中だけで・・・そのうち「あの音」で目が覚めたら何処かの海だった事もある。今日みたいに知らない服を着ていたり、食べた覚えもないのにデザートの残りを見たりした。

その度に「起きた?」って柊祐が言うから私は寝てるんだろうけど、その途中が何も判らない。

でも今日は何故か左腕に何かの感触が残ってる・・・。


これは何?私は何かに触ったのかしら。

それとも・・・誰かが私に触れたの?


全然・・・思い出せない・・・・・・。





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