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plumeria

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パーティーが終わっても俺はホテルのロビーから動くことが出来なかった。
このホテルにつくしが居る。しかも俺じゃない男と同じ部屋に・・・そう思うとあっさり引き上げることなんて出来ない。

せめてもう1度顔が見たい。
もう1度会って、もう1度その目を見て、声を聞きたい・・・そして何があったかを聞きたい。
どうしてあんな男と一緒に居るのか・・・今まで何処でどうしていたのか。

殆どの客が帰り、深夜になってロビーが閑散としても、そこのソファーに座り込んで何も出来ない自分に苛立っていた。



「類・・・帰らないのか?」

そう言って横から声を掛けてきたのはあきら。そして後ろには総二郎もいた。
あきらが連絡したから飛んで来たのかもしれない・・・手にはバイクのキーを握り締めていた。2人とも俺と同じように辛そうな顔して、特に総二郎は俺の入院中を知ってるから余計に・・・だ。


「ここにつくしが居るって判ってるのに帰る事なんて出来ない。朝になったら出てくるだろ・・・だから待ってる。本当はどうにかして部屋に入りたいけど」

「朝までここに?で、本当に牧野だったのか?」
「・・・多分な。メイクも表情もあいつらしくないし、ドレスだって牧野が選ぶようなものじゃないけど見間違えないと思う」

「部屋に呼ばれてすれ違った時に彼女の手を持ったんだけど、それですぐにつくしだって判った。結婚指輪は変えられてたけど、手そのものは変わらないんだから間違えない・・・間違える訳がない」

「じゃあ本人確認したらいいんじゃね?」
「本人確認・・・まさか、指紋照合とか?」

「・・・・・・指紋・・・」


総二郎はつくしたちが泊まった部屋が空室になった時に指紋を採取し、俺のマンションに残ってるつくしの指紋と照合することを提案した。
それでつくし本人と断定し、成瀬柊祐に対してつくしの返還要求をする。勿論対外的にはつくしは療養中になってるから極秘に。その上で、この度の事故を引き起こしたのが成瀬ならその理由も聞き出せる・・・。

その時にあきらのスマホに誰かから連絡が入ったが、俺と総二郎はその計画の続きを話し合っていた。


「しかし、人の嫁さん略奪しても身元がばれりゃ誘拐罪だ。馬鹿じゃねぇの、其奴ら」
「・・・でもそんな事を想定しないような男には見えなかった。それにわざわざ罪になるような事をしてるのにパーティーで大っぴらに妻だって公表する?」

「そりゃ成瀬って男じゃねぇと目的は判らないけど?お前は知らねぇのかよ、そいつの事」
「・・・俺は知らない。成瀬コーポレーションって会社は知ってるけど付き合いないから」



「・・・何だって?本当か?」

俺達の横で急に大きくなったあきらの声に驚いて、2人同時にあきらを見た。
暫くの間、あきらは掛かってきた電話に相槌を打ちながら、そのうち「判った」とだけ呟いてスマホを耳から離した・・・でも、その時の表情が険しい。
何の報告だったんだろうと嫌な予感がした。


「どうかしたのか、あきら。何の電話だ?」
「・・・さっきパーティーが終わってからうちの連中に成瀬コーポレーションについて調べさせてたんだけど」

「それで?おかしな情報があったのか?」

総二郎が聞くと、あきらは眉根を寄せたまま言葉を続けた。


「あの成瀬社長には子供がいないらしいんだ」


「・・・は?」
「子供がいない?でもさっき・・・」

あきらの言葉には俺達も驚いた。
パーティー開始直後に紹介したのに・・・子供がいないってどういう事だ?


「成瀬社長は数年前にアメリカ人の妻を病気で亡くしてるけど2人の間に子供はいない。それはうちのシステムが住基ネットに侵入して調べたから間違いないと思う。それに成瀬コーポレーションの登記に柊祐なんて名前がない。これは役員じゃないなら考えられるけど、あの歳で後継者面するなら普通は載ってると思うんだけど・・・」

「息子だって口で言ってるだけって事か?」
「じゃあ柊祐は誰の・・・って、成瀬とどういう関係?もしも口だけだとしても、社長は判ってて公表したって事?」

「・・・そうなるよな。成瀬も世界的に事業展開してる企業だから海外には役員として名前があるのかもしれないけどな」


そして美作の科学研究所から指紋採取の人員を早朝ここに待機させてくれるようにと頼んで、総二郎とあきらは「ついでだ」なんて言って俺に付き合い、一晩中そこに留まる事にした。


日付が翌日に変わった。

フロントのスタッフが「お部屋をご用意しましょうか」と声を掛けてきたけど、黙って首を横に振った。
そうしたら俺達の顔を見知っている連中だから、もうCLOSEしているホテルラウンジから酒と珈琲を持ってきてくれて、「何か必要なものがあれば遠慮なくお申し付け下さい」と・・・それにはあきらが礼を言ってたけど、俺はやっぱり黙ったままで身体が反応しなかった。

そのうち総二郎とあきらは転た寝したり、目を擦ったりを繰り返してはグラスに注いだ酒を口に運んだ。もう音楽すら無い静まり返った真夜中のロビー・・・小さな音にも耳が反応して、これまでに無いぐらい敏感になっていた。


今頃つくしはどうしているんだろう・・・それしか頭には浮かんでこない。
まさか柊祐の腕の中で眠ってるんだろうか、そう思うと掌に爪を食い込ませるほど指先に力が入った。

目を閉じるとその光景を想い描く・・・我慢出来なくてガタン!と音を立てて立ち上がって総二郎とあきらを驚かせた。


「類!落ち着け。まだ何も判ってねぇよ!」
「お前の気持ちも判るけど、牧野が裏切るとは思えない。きっと何か訳があるんだって!」

「・・・ごめん。判ってる・・・うん、判ってるんだけど・・・」


つくしが俺を裏切らない事なんて自分が1番判ってる。
でもあんなに冷たい目で見られた事なんてなかったから・・・俺の手を振り解くなんて思わなかったから・・・。


『あなたなんて知りません』・・・そんな言葉をあの唇が呟くなんて思わなかったから・・・。



**



早朝、空が白んで来たと同時にホテルに入ってきたのは美作の科学研究所の連中だった。
手には各自ジュラルミンケースを抱えていて、あきらの前に行くと「いつでも大丈夫です」と整列した。

それを聞いて俺達はフロントに向かい、柊祐が泊まった最上階スィートルームが空室になったと同時に入らせてくれと頼みに行った。


「成瀬様のお部屋が空室になったらですか?あの・・・既に空室になっていますけど」

「・・・え?」

「でもここでチェックアウトしてないよな?」
「いつの間に?俺達は一晩中ここで待機してたけど降りなかっただろう!」

「え?えぇ、あの・・・お急ぎの用件があるからと自家用のヘリを屋上に付けまして、そこからお戻りになられましたが」


「・・・・・・ヘリ・・・?」

「はぁっ?!空から帰ってったのか!」
「もしかして俺達がここに残るって察したのかもな・・・・・・あっ!類!!」


まさか、そんなっ・・・!

フロントでの話も途中だったのに、俺は急いでエレベーターに向かい、総二郎達を待たずに最上階に向かった!
そしてつくしが泊まっていた部屋の前に行くと何度もドアを叩いて名前を叫んだ!


「つくし!そこに居ないのか!つくし、ここを開けてくれ!!」

もう空室だと聞いたのに、それを信じたくなくて何度も・・・何度も叩き続けた!そのノックとは程遠い激しい音に「なんだ?」とドアを開ける客もいたけど構ってはいられない。
右手の拳が痛くなるほど叩き続けたら、総二郎達とフロントの連中がやってきて「落ち着け!」と押さえつけられた!

「類!ここで騒ぐな!」
「・・・つくしにもう1度会うために待ってたんだ!それなのに・・・っ」

「いいから暴れるな!今、開けてもらうから」


俺の暴挙に怯えながらフロントの男が鍵を開けると、そいつを押し退けてそこに飛び込んだ。



でも、もうそこには誰も居なかった。
つくしも柊祐も・・・2人とももう姿を消していた。


ガクッと折れるようにして崩れた足・・・そして両手を床につき、そこで呆然とした。



俺に笑いかけてはくれなかったけど・・・やっとつくしを見付けたのに・・・。




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★ヘリポートメモ

ヘリポート、ヘリ発着場とは、ヘリコプター専用の離着陸場のこと。また消防活動のために高層ビルの屋上に設置されたヘリコプターの離着陸場があり、緊急離着陸場(Hマーク)および緊急救助用スペース(Rマーク)で区別されています。
つまりHマークは着陸出来て、Rマークは・・・いやいや、そっちじゃないですよ?(笑)Rマークはホバリングのみ。着陸出来ません。

そして火災やテロなどの緊急時にしか使用できないため、本当は今回のような個人的な使用は認められていません。
ドラマやアニメ、映画、二次小説などで見たり読んだりした事があるかもしれませんが、それはお話の中だけの事です。今回も実際は認められていませんが、妄想ゆえ飛ばせてしまいました。
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