FC2ブログ

plumeria

plumeria

-
「こっちの奥も・・・テーブルの上は終わったか?」
「ドレッシングルームの中は終わりました」

「よし!次の部屋に行こう」


Mホテルのスィートルームでは美作の連中による指紋採取が始まった。
ここにあるドアや窓、家具や調度品まで丁寧に、それにトイレやドレッシングルームは絶対に使うはず。可能な場所から総て採取してその数は相当なものになった。

早朝から初めて既に出勤時間は過ぎている。
それでもあきらも総二郎もこの場所に留まってくれていた。


「大丈夫か、類・・・珈琲、淹れたぞ」

そう言って総二郎が俺の前にフワッと白い湯気がたつカップを置いた。同じようにあきらにも手渡し、作業が進むのを3人で見ていた。


「これが終わったら類のマンションだな。牧野が触ったものって判るのか?」
「・・・・・・つくしがあのマンションに入ったのは3ヶ月ぐらい前だけど、キッチンは殆どあいつが片付けてたから、そこなら・・・」

「だろうな。それまで住んでたアパートはもう引き払ったんだろ?」
「・・・あぁ。少し早めに一緒に住もうって言ったのに、そう言うところは何故か式の後って拘ってさ・・・フランスに行く直前に解約したんだ。その方が新鮮だって言うから・・・」


その話の最中に鳴ったスマホ・・・掛けてきたのは母さんで、電話に出たら当然だけど欠勤している理由を聞かれた。
「ごめん、連絡しなくて。実は・・・」と、ここで漸く母さんに昨日の事を報告し、母さんは「そんな馬鹿な!」を繰り返した。


『本当につくしさんだったの?他人の空似じゃないの?』
「俺が見間違うはずないよ。あれはつくしだった。でも本人も花沢の事を覚えてないみたいなんだ」

『記憶を失ってるの?それでも他の人の奥さんになってるなんて冗談じゃないわ!』
「記憶喪失かどうかは判らない。少し話したけどそんな感じじゃなかった。今、その事であきら達と相談中だから今日は休む。具合が悪い事にでもしておいて」

『あきら君達と相談?何をしてるの?類、もうそろそろ・・・』

「諦めろって?そんな事絶対にしない。本人が現れたんだから」
『類!あなたには・・・』


母さんが何か言おうとしたのをさっさと切り、つくしがここに「残したもの」が集められるのをもう1度見ていた。




落ち込んでいる場合じゃない。
つくしが身動き取れないなら俺が動かなきゃ・・・そっちに気持ちが変わっていた。

何が起きてても絶対にそれを突き止めてつくしを取り返す。
たとえその途中に耐えられない程の事があったとしても、それはつくしの本意じゃない・・・その時に助けてやれるのは俺しかいない。

「・・・類、目が覚めたのか?」、そのあきらの声に1度だけ頷いた。


「それじゃ少し考えてみようぜ。事故の後、どうして牧野が別人になって現れたのか・・・しかもあの成瀬って男の嫁として」

総二郎がそう言うと、2人が交互にこの事件についての疑問を口にした。

「その成瀬柊祐って男は社長の子供じゃない・・・そして会社経営に書面上は関わっていない」
「だけどこんな大きなパーティー開いて紹介した。もうそれを嘘でした、とは言えないのに・・・だ」

「牧野は自分を成瀬鈴花だと言い切る・・・類を目の前にしても顔色1つ変えずに」
「でもこのパーティー、元々は類の親父さんに招待状があったんじゃねぇの?」

「幹部が総て急に都合が悪くなった・・・そうだったよな?」
「何が考えられる?漠然としてるが、これって花沢物産って言うより類に対する攻撃じゃないのか?」


「・・・俺に?」

総二郎もあきらも冷静に・・・真剣な顔で俺を見た。

確かに手口は判らないがあの男は事故現場からつくしだけを助けて自分の手元に匿ったということになる。俺はその事故で大怪我をして、今は1人暮らしだ。仕事も出来なくなって実質表に立っての業務はしていない。
それなのにパーティーに駆り出されて、つくしを他人の妻として紹介された。この3ヶ月近く、俺は見付からないつくしを追い求めるので地獄のような毎日だったのに、奈落の底に突き落とされたかのようなショックだった。

言われてみれば俺に肉体的、精神的な苦痛を与えるものばかりだ。


「でも俺には心当たりはない。成瀬なんて知らないし、仕事だって司のように最前線で指揮をとるような立場にはなってなかったから恨まれるような事はないはずだけど」

「恨みなんて大抵自分が知らないところで買ってるもんだって」
「総二郎の場合は意味が違うだろ?でも、言ってる事は当たってると思う」


その時に指紋採取の作業完了が告げられた。
その部屋を元通りに清掃し、美作の科学研究員は今度は俺のマンションに行く事になり、そこで2人とも別れた。


「じゃあ、俺は今朝都内を飛行したヘリの行方を探ってくる」
「んじゃ俺は成瀬コーポレーションの事をもっと調べるか。あきらが動くと面倒かもしれねぇだろ?」

「ありがと・・・俺は自分のこれまでの仕事を確認する。何か判ったら連絡してくれ」


頼もしい友人達を見送って、俺はマンションに戻った。



そして自宅でもホテルの部屋同様、指紋の採取が行われ、俺の指紋も提供。
ここに入ったのは俺達と引っ越しの作業員に施工に関わった奴等・・・ホテルと同じくらい複数の指紋が採取された。

でもホテルとマンションの部屋両方にある指紋は俺とつくしだけのはず。
それを検証するのは数日かかると言い残し、研究員達は帰って行った。


今までは何処にいるのか、無事なのかさえ判らなかった。
でも今は違う・・・見付けたと同時に抱えた疑問は大きすぎるけど、それを解き明かしてつくしを取り戻す。


それだけを考えていた。




*********************




シャッとカーテンを開けるような音で目を覚ましたら、私は有栖川の屋敷の部屋に戻っていた。

さっきまで東京のホテルだったのに・・・?と重たい頭を持ち上げたら私の部屋の窓を開けているのは普段着に着替えた柊祐で、私自身も普通のワンピースに着替えてベッドに横になっていた。
驚いて起き上がったらズキン!と鈍い痛みが襲い、頭を抱えこんだ。


「目が覚めた?もう自宅に戻ってきたよ」
「・・・いつの間に?私、何も覚えてない・・・朝、早く起きて珈琲飲んで・・・それから・・・」

「疲れすぎたんじゃない?久しぶりに外出したから」
「外出って・・・あなたが勝手に連れ出しただけじゃない!それなのに今度は知らないうちに戻っただなんて・・・まさか、あの珈琲に何か入れたの?それに着替えは誰が?」

「何も入れてないよ。君が熟睡しただけ・・・そして迎えが来たから俺が運んだだけ。着替えはいつもの看護婦だから心配しないでいいよ、つくしちゃん」
「・・・柊祐の言うことは信用出来ない!出ていって!」

「くすっ、その服が気に入らないなら自分で着替えてくれる?それにシャワーでも浴びたら?さっぱりすると思うよ」

「あなたの指図は受けない・・・!」


いつもの不敵な笑みを斜め上から私に落とし、柊祐は部屋を出ていった。


せっかく東京に戻っていたのにまた山の中・・・それが悔しくて仕方なかった。

そして自分のした事を何も覚えていない。一体何をしにあのホテルに行って、誰と何を話したんだろう・・・思い出そうとしたら頭が痛くて何も考えられなくなる。
どうしてこんなに頭痛が続くのか・・・自分の頭を抱えていた時に急に胸が・・・!


「・・・・・・うっ・・・!」

急いでベッドから降りて駆け込んだトイレで胃液のようなものを吐き出した!
その後からも込み上げてくる気持ち悪さ・・・胃がムカムカして部屋に戻ってミネラルウォーターで口を漱いだけど、それでも吐き気が治まらない。

「はぁ・・・はぁ・・・驚いた。はぁ・・・・・・あれ?」


そういえばここに来てから・・・ない?
最後にあったのは結婚式の半月前・・・・・・。


もしかして・・・・・・私?




にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by