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~side柊祐~

つくしたちが事故に遭った御神楽岳からそう遠くない場所にある有栖川邸。
そこに着いて、つくしの意識が戻ったのを確認してからお爺様のところに向かった。


「お爺様、ただいま戻りました」

「・・・・・・ご苦労だったな・・・で、成瀬はお前達の事を何も言わなかったのか?お前の術に簡単に引っ掛かったのか?」

「えぇ、あの人は昔から暗示に掛かりやすい人でしてね。急に連れて行った「鈴花」を妻だと教え込めば、部下達にもそのように伝えてくれましたよ。俺は3年も前に結婚していたとね・・・」

「はっ!馬鹿な男だ・・・で、どうだったのだ?」


車椅子に座ったまま窓から外の景色を見て、俺に顔を向けたりはしない。この人は俺を孫だと受け入れている訳ではなく、自分が身動きとれないから代わりに復讐させているだけ。
最愛の娘を見捨てた花沢が地に墜ちるのを、自分の命があるうちに見たい・・・その気力だけで生きてるようなものだ。


でも、1番近くに「憎むべき者」が居るって・・・気が付いてないけどね。


「苦労して色々なところに仕掛けた罠が上手くいったようで、花沢類に会えました。
驚いていましたよ。そして勿論つくしに気が付いて狼狽えていました。くすっ、お見せしたかったですよ。彼が真っ青になって俺を睨む顔・・・」

「・・・暴れ出さなかったのか?醜態晒して精神異常者に見せられたか?そうすれば花沢の後継者としての悪評が広まり・・・」
「残念ですが総てを察してる友人が来ていました。そいつが花沢類の暴走を止めてしまったんですよ」

「・・・・・・なんだ、つまらん!」


あなたは何もしていない。それでも文句だけは言うんだな。


「そう仰らずに。これからもつくしを使って計画は進めます。次は本社にでも乗り込みますよ」
「・・・頼んだぞ、柊祐」

「はい、お爺様」



つくしの催眠暗示はまだ長くて5時間ぐらいが限度。
初めのうちは長くても30分ぐらいで覚醒。それを繰り返していくうちにだんだん催眠時間は延びてきた。その暗示に掛かっている間の記憶は消去されるように刷り込んであるから本人は何も覚えていない。

そして催眠中は「成瀬鈴花」という架空の人物。
夫である俺の言う事に従順で、他の誰にも靡かないように、そう言い聞かせて毎回暗示を掛けていた。


「さて、もう少し長く保てるようになったらもう1度行くか・・・今度は2人きりで会わせてやろうかな・・・」


今度は今回よりもダメージを与えてやる。
そして最終的には覚醒しなくなるまで・・・「花沢つくし」が彼女の中から消えて「成瀬鈴花」が支配するんだ。


その日が来るのが・・・楽しみだ。




**********************




パーティーの日から2日後の夜、明日イギリスに戻るというあきらが総二郎を連れてマンションにやってきた。
話す内容は指紋照合の結果のことだろうと思ったが、何故か2人とも言いにくそうな雰囲気を出している。それに少し嫌な予感がした。

まさか出なかったとか・・・?

そんなはずはない。つくしはあの日、パーティー用のグローブだってしていなかった。
素手であの部屋に居たんだから、何処かにあるはず・・・・・・でも答えは「NO」だった。


「本当に?つくしの指紋が出なかったって?」

「あぁ。おそらくこのマンションでお前の指紋の次に多かったのが牧野だろうと思うんだけど、それと同じ指紋はホテルの部屋から出なかったらしいんだ」

「今の技術だと拭き取っても検出されるんだろ?」

「新しい指紋認識技術がイギリスで開発されたんだけどまだ試験段階だ。そいつは皮脂の電気に対する絶縁性を利用して特殊ポリマーフイルムで採取するんだけどな・・・でも、あの部屋は元々拭き取るなんて小細工はされてなかった。
あの日、見てただろうけど研究員達がこれまでどおりの採取方法だったのなら拭き取られた跡がなかったって事だから」

「・・・・・・出なかったって・・・そんな馬鹿な!」


何も触らずに1日そこで過ごせるだろうか・・・いや、それは不可能だろう。
それとも俺が行った時だけ素手だった?そんな事って・・・


「因みに手袋したまま家具類を触ってもその痕跡は残るけどそれもなかった。ただし、すごく不鮮明な指紋がホテルからは検出されているんだ」

「不鮮明な指紋?」

「すごく途切れ途切れの、って言うか判別できないぐらいの跡しか出ないヤツ。それがいくつかのドアノブや家具から検出されていて、そいつが類のマンションの牧野だと思われる指紋に部分的には一致する。でもあまりにもそれが微量だから断定できないって事だそうだ。これがそのデータだ」

あきらがテーブルに出したのは拡大されたその指紋・・・確かに指紋と言われても判らないぐらいしか線がなかった。
それをこのマンションで採取したものと重ねたデータも見せてくれたけど、あきらの説明どおり線が切れすぎてて一致してるのかどうかなんて判らなかった。
ピッタリ合ってるところもあるけどそうじゃないところもある・・・同一人物だとは断定出来そうになかった。


「どうしてこんな指紋が採取されるんだ?何かやり方があるのか?」

「ん・・・・・・と」
「あきら、言っていいよ」


あきらが黙るって事はかなりヤバいのか・・・と、言っていいと言葉には出したものの、鼓動が速まり手に汗が滲んだ。

でもあの日のつくしが苦痛を感じてるとは思えなかった。
鋭い視線は向けられたけど、途中でも痛そうな素振りなんて全然無かった。だから指紋を削られた・・・なんて荒っぽいことはされてないと思うんだけど。

あきらは「確定じゃないけど」って言葉を先に出して、可能性としての話を始めた。


「もしかしたら水酸化ナトリウムを粒状にしてこすり付けたかも・・・って言うのを研究員が話してた」

「水酸化ナトリウム?」

水酸化ナトリウムは化学工業全般で広く使われているもので、分析試薬や二酸化炭素吸収剤としても知られている。通常固体で水に溶けやすく強いアルカリ性の薬品だ。その名前が出た時点でゾクッとした。
多量に触れたら皮膚が爛れるほど強力なものだ・・・・・・まさかそれで?


「勿論直接触れさせて指紋を溶かしたなら牧野が普通で居られないだろうから、そうじゃなくて・・・薄めたか、それをまた加工して皮脂を溶かした可能性はあるんだそうだ。痛みを感じさせずに指紋だけを消す・・・うちの研究所でも実は実験してるぐらいだから不可能じゃないと思う」

「そんな知識があんのか?そいつ!」

「・・・・・・判らない。でもそのぐらい考えそうな男だ」


指紋ではつくしだと断定出来なかった。
でもそんなものより俺は自分で触れたつくしの肌で確信している・・・だからガッカリなどはなかった。


「あぁ、それとあの日の早朝に都内を飛び立ったヘリだけど2機確認出来た。1機はドクターヘリでもう1機は未確認だけど、埼玉方面に向かって飛んでるまでは判ったんだが、何処に向かったかの追跡がそれ以上は無理だったんだ」

「埼玉方面・・・山の方って事だね」
「方向としては類の事故現場だな」


それは偶然の一致だろうか。それとも・・・?





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