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plumeria

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次の日、出社したら真っ直ぐ自分の執務室に向かった。
母さんが居る社長室にほど近い、名前も掲げられていない部屋・・・そしてそれまで補佐としてついていた藤本は営業本部長の秘書として配属されたから俺1人しかそこには居ない。

それはある意味調べ物には便利だ。
すぐにしたのは先日のパーティーがあった日の工場視察について、都庁の関係者に連絡を取る事だった。


『・・・え?先週の検査ですか?花沢物産の方から担当者があの日しかダメだからって事で電話をいただいたんですよ?えーと・・・営業本部の伊藤さんって男性ですが?』
「電話で?伊藤って何人も居るんですが、下の名前は?」

『いや、そこまでは記録していませんが、日程変更を連絡しても何も言われず「判りました」って事でしたよ?メールは見落としそうだから電話で返事してくれって言われて、その電話は・・・確か矢代さんっていう営業の女性でした』
「兎に角、あの日にしてくれと言うのはうちの要望なんですね?判りました、ありがとう」


矢代という女性は居る。
伊藤という男性は何人も居るが、そんな日程変更を指示できる管理職にはそんな人間は居ない。巨大プラントの建築現場の視察なんて一営業マンが日程を変えようなんて言わない・・・つまり、ここも操作された可能性がある。

矢代に確認したら・・・

「15日の視察で了解しましたので、午後1時から行いますと言われただけです。一応メールをと言いましたら電話でいいって言われたなんて仰るから、念の為にもう1度メールの送信を頼んだんです。
そうしたら伊藤さんのアドレスが判らないって言われたんですよね・・・。おかしいなぁ、と思ったんですが私もどの課の伊藤さんか知らなかったので自分のアドレスに送っていただきました。それを部長に転送しただけです」

それを見せてもらったら、運悪くどこにも「花沢からの要望で変更」なんて書かれていなかった。
ただの「プラント建築現場視察行動予定表」・・・謎の伊藤から母さんの所に話がいくまでに「誰が言いだしたか」の部分が抜け落ちたって事か。

視察が入ることは予定にあったから、そこまで気に留めなかった訳だ。


次に急に始まったアメリカでのシェールガス開発プロジェクト。
延び延びになっていたプロジェクトがこの時期に急に動き出したのは何故か・・・それを調べていたら、プロジェクト運営母体として名前を連ねている企業の中に『N・B ENERGY』と言う名前があった。
気になったのは責任者が『WATANABE』と日本人だったこと。そしてその企業を調べたら、成瀬コーポレーションの関連企業だった。

もしかしたら『N・B ENERGY』が動き出して急に話が進んだのかもしれない。
見知らぬ外国企業にまで電話を掛けるのも不自然だから止めたけど、ここでも成瀬の影は見えた。


これで母さん、副社長、常務の動きを封じて、俺がパーティーに出てくると賭けたのか?
もしも俺じゃなかったらつくしを出さなかったんだろうか。


でも、どうして俺は攻撃を受けるんだ?
攻撃されたとして、結婚してパリから帰った直後だったのは何故だ?どうしてつくしを利用する?


「今後は花沢ともお付き合いしていこうと考えているのですよ。その時はどうぞ宜しく・・・花沢類君」


あれはまた接触して来るという予告みたいなものか・・・。

今後は・・・?
どうして今までなんの取引もなかったんだ?成瀬ももうすぐうちに並ぶほどの力をつけて来ているし、活動拠点が違うから既にアメリカではうちよりも多くの事業に手を出している。

道明寺も美作もそれなりに接触があるのに何故うちだけ?


「類、少しいいかしら」

その時、部屋に入ってきた母さんが分厚い資料を持って目の前にやってきた。それを机に置いて「読んでおいて」とひと言言うと、すぐ傍にある応接用のソファーに座り、不安そうな顔を見せた。
資料はヘルスケア事業部の「新型医療機器導入に関する説明会」・・・少しずつ仕事モードに切り替えろって意味だろう。


「何を考えてるの?類・・・昨日も話したけど・・・」
「つくしの事なら自分で捜すから気にしないで。あぁ、それと事故現場の捜索は打ち切って構わないから。それよりも聞きたいんだけど」

「何かしら?」
「成瀬コーポレーションについて父さんは何か言ってなかったの?かなりの大物が揃ってるパーティーだったけど、帰国する気は全然無かったわけ?」

「あぁ、それね・・・私もよく知らないんだけど、お父様にこのパーティーの話をしたら凄くご機嫌が悪くなったのよ。すぐに『行かない』なんて返事じゃなかったけど、どうも出席したく無さそうだったから無理を言わなかったの。
そうしたらフランスでの仕事が忙しいからって私に回ってきたんだけどね。少なくとも私が花沢に来てから成瀬との付き合いはないって事は確かよ?」


成瀬と聞いて機嫌が悪くなった・・・じゃあ何かあったのは父さんなのか・・・?




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「どうしました?ご気分が悪いのですか?顔色が悪いわ」

いつもの看護師さん・・・森田さんがお爺様のお薬を届けに来て、その帰りに私のところにやってきた。
これはいつもの事で、話し相手が居ない私に柊祐が気を遣って顔を出させているだけ・・・でも、今日は彼女に助けを求めるように縋り付いた。

彼女は私のそんな行動を見た事がないから驚いていたけど、自分の身体の事を話したら「間違いないでしょうね」と・・・。


「あなたの事情は知りませんから聞きもしません。でもそう言う行為があって2ヶ月生理がないのなら可能性は高いでしょうね。ストレスで急に止まる人も居るけど、悪阻の症状があるのでしょう?今日は検査薬なんて持って無いから明日にでも持って来ましょうね」

「それなら産婦人科に行きますよね?そうしたら私の身元とかキチンと調べてもらって、自宅に帰ることが出来ますよね?」


赤ちゃんが出来たのなら母子手帳とかの手続きをしなくちゃいけない。
私も経験はないけど、あれには父親の名前も書くところがあるはずだし、妊娠届を提出して自分の本人確認の書類も用意するはずだもの。
それを柊祐に話せば流石に帰してくれるんじゃないかって希望が生まれていた。

でも森田さんは私の焦りなんて通じないのか凄く冷静だった。


「先ほども申し上げましたが、あなたの状況を聞くことは出来ないの。冷たいと思うかもしれないけど、これが成瀬さんとの契約条件なんです。治療と投薬以外はしない、あなたの生活環境や過去について聞かない、見聞きした事を誰にも言わない・・・それでここに来ているんです」

「あなたにご迷惑は掛けません。でも、私は子供の父親のところに帰りたい・・・!ここで彼に知らせずに産むなんて出来ないんです!」

「落ち着いて下さい。私は助産師の資格も持っていますから不安なことはいくらでも聞きます。まだ確定はしていないけど、本当にお腹に赤ちゃんがいるならそんなに興奮しないで。それとお薬も変えなくてはね」

「・・・・・・はい」


森田さんが出て行ってから、私は自分のぺったんこのお腹を摩りながら椅子に座っていた。


ここに赤ちゃんがいるかもしれない・・・ううん、多分間違いない。
それならあの時の・・・結婚式の時の子供だわ。

それを思い出したら自分が1人で居ることが凄く不安だったけど、彼の子供を守らなきゃって言う強さも出てきた気がした。


「類・・・そんなに早くはいらないって言ってたのにね。でもきっと大喜びだよね?」

その時、また吐き気が来てタオルで口を塞いだけど、今度はそれすら嬉しくて・・・気持ち悪くて涙が出そうなのに、頬が緩んで笑っていた。


類・・・早く助けに来て・・・。
私だけじゃなくてこの子も助けて・・・。

早く知らせたい・・・類が大喜びする顔が見たい。


類・・・・・・会いたいよ。





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