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手を繋ぐわけでもない。隣を歩くわけでもない。私は迎えに来てくれた類お兄様の後ろを黙ってついて行った。

そして大観覧車の乗り場まで行くと、少しだけ待つぐらいでそんなに人は居なかった。
それはそれで残念・・・待ち時間が長かったらそれだけ一緒にいられると思ったのに・・・。


「くすっ・・・」
「え?なに?」

「だってここでスーツ姿なんてお兄様だけだわ」
「・・・ホントだ。似合わないね」

「ごめんなさい・・・またお仕事を中断させたのね」
「後で戻って片付けるからいいよ。少し・・・急がないといけないから」

「・・・・・・え?」


フッと笑った顔が少し淋しそう・・・その時には何の事か私には判らなかった。


すぐに私達はブルーのカラーゴンドラに乗った。
そして僅か16分の空中デート・・・昨日の水族館に続いて2人きりだったからすごくドキドキしていた。しかも今は向かい合わせで、お兄様は夜景なんて見ずに私の方に目を向けてたから。
それに照れて、私は窓に手を当ててまだ薄い光りが輝く街を見下ろすフリをした。


「お兄様、綺麗ね・・・もう少し遅かったらもっと輝いたのかしらね?今度は・・・今度はそれも見てみたいわね」
「・・・・・・花音」

「何時まで営業だったっけ?あはは・・・その時にはちゃんと父様に言わないと今度こそ雷だけじゃすまないかも!」
「・・・・・・あのね」

「あっ!あの光りって何処かしら?派手なビルがあるわ」
「・・・・・・・・・・・・」


類お兄様が何かを言おうとするのを私は態と止めていた。
どんな話があるのか想像出来なかったけど、それはきっと私には良くないこと・・・そんな気がしたから。
それならこの時間ぐらい楽しく終わりたくて、困った顔のお兄様を無視して4分の1まで上がった時、自分でも恥ずかしいぐらいはしゃいでいた。


「クリスマスの前だともっとイルミネーションが多いかしら。ねぇ、お兄様」
「・・・かもしれないね。でも、もう俺は見ることは出来ないけど」

「・・・・・・え?」

「花音、言わないといけない事があるって言ったよね。俺は明後日、フランスに行くんだよ」

「・・・・・・・・・そ、そうなんだ。いつお戻りになるの?」

「会長である父が倒れたんだ。無事だったけど心筋梗塞でね・・・だから俺が向こうで陣頭指揮を執ることになったから暫くは帰れないし、もしかしたらもう日本では勤務しないかもしれない。
父が日本での治療を望んでいるから母と一緒に帰国するそうだ。そうなったらこっちを両親、俺がフランス・・・そうなると思う」

「・・・・・・・・・・・・帰らない?」

「花沢はヨーロッパ中心の企業だからね、それも仕方ないんだ。だからもう花音とこの観覧車に乗ることが出来ない・・・かな」


だから今日、一緒に乗ってくれたの?
もう最後・・・だから?




***********************




花音が固まった・・・でも、この2日間でこの子に伝えなきゃいけなかったから仕方がない。
花音との約束を果たすのが今しかなかったから。そして、花音に新しい恋をして欲しかったから。

それまで外の光りにはしゃいでいた花音が真っ直ぐ俺の顔を見て、片手だけ窓に手を当ててたのにそれが滑り落ちてシートに・・・もう片方の手は服を掴んで皺が寄っていった。


「・・・母様は知ってるの?」
「いや、話したのは花音が1番最初。総二郎にも話してないよ」

「私が1番?」
「そうだよ。連絡が昨日の夜で遅かったしね」


女の子って言うのはそんなことでさえ「1番」が好きなんだろうか・・・「花音が1番最初」、そう言うと少し顔を赤くした。
そうして少しだけ俯いて考え事して、観覧車が1番高いところまで来たら2人同時に窓の外を見た。

もう空にオレンジ色もなくなって、瞑色の空に月が見えている・・・眼下の街じゃなくて2人とも上を見ていた。


「・・・お兄様は母様のことを今でも好きなのよね」
「・・・ん、好きだよ」

「父様と一緒に居るのを見ても悲しくないの?悔しくないの?」
「・・・そうだな・・・悔しいと思ったことはあるかもしれない。でも悲しくはないかな」

「どうして?」
「・・・俺は牧野が笑ってて幸せならそれだけでいいって思ってるから。俺の傍に居てその笑顔が少しでも減ったりしたらその方が悲しいかな・・・くす、負け惜しみみたい?」


この質問は月を見ながら・・・そして答えるのも月を見ながら。


「人ってそうやって心の中で想い続けるだけでも幸せでいられる?」
「どうだろう。俺は・・・それも有りだと思うけど」

「じゃあ私も・・・そうする」
「・・・え?」

「でも私は会えないのはイヤ・・・心の中で想い続けるだけでも、その人の傍にはいたいと思う・・・恋人にはなれなくても」
「・・・花音?何言ってるの?」


「私も一緒に行きたい・・・お兄様の傍にいたい。
母様の代わりにもならないし、恋人じゃ無くてもいい。時々こうして話してご飯食べて、お兄様の話し相手だけでもいい。私はお兄様の好きな人の娘、それだけでいいから」


まさか花音がそんな事を言うとは思わずに、その時月から目を離して花音を見た。
そうしたら花音も真っ赤な目をして俺を見ていて、そこから今にも雫が落ちそうだった。

昨日に続いてこんな言葉を出させて・・・そんなつもりじゃなかった俺はすごく動揺してる。今、目の前にいるのは牧野じゃなくて花音・・・牧野の面影を感じない、1人の女性として花音がそこに居た。


「馬鹿な事言わないで、花音。そんな事は出来ないだろ?」
「ダメ・・・?私を選んでなんて言わない。でもお兄様がずーっと母様を想って生きてきたなら、私にもそれが出来るんじゃないかって思ったの。でもお兄様みたいに強くないから、遠くからはイヤなの。時々でいい・・・会えたらそれでいいから!」

「花音、そんなのダメだよ。君はちゃんと素敵な恋をしなくちゃ」
「お兄様は自分の恋を有りだって言ったわ!幸せだって言った・・・だったら私だって幸せになれるわ。私にとってこの恋は人生に1度きりだって思える・・・そのぐらい好きなの」


人生に1度って・・・まだ21歳の花音がそんな事を言うなんて。

これから何度も新しい恋と辛い失恋なんて繰り返して素敵な女性になっていくと思うのに、顔を真っ赤にさせて涙を堪えながら身体を震わせる花音を抱き締めてしまいそうだった。

このまま俺がフランスに行ったら、この姿を誰にも見せずに我慢するんだろうか・・・そう思うとすぐに「判った」って許してしまいそうで、慌てて言葉を1度呑み込んだ。

早く地上に着かないだろうか・・・少し高度を落とした景色を見て、次の言葉を選んだ。



「・・・花音、嬉しいけど俺の1番は変わらないと思う。そんな男の傍にいても辛いだろ?」

「・・・私は1番になりたいんじゃない。でも2番なんて言われるのもイヤ・・・ただ、自分の恋に素直になりたいだけ。さっきは諦めようって思いながら観覧車を見てたわ。でもお兄様を見た途端、無理だって思ったの・・・。
お兄様が迷惑じゃなくて、少しでも話し相手になるのなら傍にいさせてほしいの。それは類お兄様を苦しめる?それなら・・・ちゃんとそう言ってください」

「そう言ったらどうするの?」

「悲しいけど日本でお兄様の事を想いながら暮らします・・・これからもずっと」


本当はそれがどれだけ辛いか・・・1番知ってるのは俺かもしれない。
そして、そう言う人がいることがどれだけ幸せかも知ってる・・・。


変なところが似ているんだね・・・俺と花音って。






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Comments 4

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2019/10/21 (Mon) 14:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

困りましたね、類君(笑)
お別れをするつもりだったのに、逆にもっと迫られておりますが💦

若いとは素敵ですねぇ~❤
44歳の類君(想像出来ない・笑)・・・さて、どうしましょうかね。

ホントに焦れったくしてすみません💦
なかなか情景描写を省けない人なので、余計な事が多いとは思ってるんですが(笑)
(本当はまだ迷ってるだけだったりもする・・・)

2019/10/21 (Mon) 17:07 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/22 (Tue) 09:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは!すっぽんの花音と言います!
類君の何処に食らい付いたのかは置いといて、絶対に離さないという気合いを感じます!

そう言うところは総ちゃんに似ているのではないでしょうか?


でもヤバくないですか?
その時に至近距離でつくしちゃんに見えたらいいけど、総ちゃんに見えたら・・・どうする?

2019/10/22 (Tue) 17:43 | EDIT | REPLY |   

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