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車をガレージに停めて降りたら、そこで待っていたのは牧野だった。
ほんの少し眉を下げて泣きそうな顔・・・まるでこれから起こることを予測でもしてるのか、両手を擦りながら落ち着きがなかった。


「くすっ、何してんの?」
「だって・・・あの・・・花音が何か言ったんでしょ?」

「うん、それもあるけど他にもね・・・」
「花音のこと以外にも?何かあったの?」

「ん~・・・総二郎にも言うからその時で」


そう言うと「判った」って頷いて俺を屋敷の中に入れてくれた。

「若奥様、ご案内なら私達が」と、使用人らしき女性が入ってすぐの廊下で跪いて声を掛けたけど、「私が案内するから大丈夫よ」と・・・すっかりここの人間になったんだって思い知る瞬間だった。



この屋敷の中は知ってるから総二郎の茶室ぐらいなら1人でも行ける。
牧野の案内って言うより、長い廊下を2人並んで歩いてる・・・そんな感じだった。


「総二郎の家元就任ってどんな感じなの?」
「・・・ん?お義父様はまだお元気だけど、そろそろお考えみたい。時々京都のお屋敷のことをお義母様と話してるから」

「京都・・・あぁ、隠居したら向こうに行くから?あんたが家元夫人ねぇ・・・なんか想像出来ない」
「それは花沢類より私だよ~!今でも婦人会はドキドキだもん。行事が増えちゃうって考えたらゾッとしちゃう!」

「じゃあ気忙しくなるね」
「ふふっ・・・私より紫音が少し焦ってるわ。自分はまだまだだって・・・総が21歳の頃と比べてるみたいだけど、あの人がその歳の頃はもっと遊んでたと思うのにね」

「あはっ、間違いないね」
「でしょ?紫音には父親が大きすぎる存在なのよ・・・私にしてみたらあの子の方が落ち着いてるのに」


花音のことで話があるのに関係ない会話をして気を紛らわせてるみたい。
もう少し長く話していたかったけど、総二郎の茶室の灯りが見えてきた。
そしてお互いに会話がなくなる・・・この時間に何から話せばいいのかを考えれば良かったのに、結局そのまま部屋に入ることになった。




牧野が「失礼します」、そう言って綺麗な所作で障子を開けると、その正面には総二郎・・・花音はあいつと向かい合って、俯いたまま座っていた。

俺達が入っても総二郎の目は畳の何処かを見てる。
どことなく引き攣っているように見えるのは気のせいじゃないだろうな・・・。
すぐに廊下で使用人がお茶を牧野に手渡し、彼女はそれを俺達の前に置いて行く。その時のピリピリした空気が余計に花音を緊張させてるみたいだった。

可哀想に・・・俺達が来るまでずっと父親と2人でこの状態だったんだろうか。



「話ってなんだ、類」

低い声で切り出したのは総二郎。その瞬間牧野が花音をチラッと見た。


「・・・親父が倒れたんだ。昨日の朝、フランスでね」

「えっ?花沢のおじ様が?」
「・・・大丈夫なのか?」

「ん、軽い心筋梗塞で今は落ち着いてる。でも、日本での治療を希望してるから2人で帰国することになったんだ。だから今度は俺がフランスに行くことになった」

「いつ行くの?」
「・・・話ってそれか?」


「いや、それと・・・」と、ここで俺の言葉が止まった理由を総二郎はすぐに勘付いたみたいだ。ハッとした顔で花音に目を向け、厳し表情だったのを余計に鋭くさせた。
花音はそんな父親を見て少しばかり唇を噛んだけど、覚悟が決まったのか真っ直ぐに総二郎の目を見ていた。


「あの、父様・・・」
「総二郎、それで話があるんだ」

こんな事を花音から話させる訳にはいかない・・・そう思ったから、今日の事を話そうとした花音の言葉を俺が遮った。

総二郎の目がまた俺を睨む。
牧野の両手が口元を覆う・・・俺はこの2人から花音を連れていくのかと思うとまた言葉が詰まった。


「・・・なんだ、類。さっさと言えよ」

「・・・さっき花音と話した。総二郎・・・花音を俺と一緒にフランスに連れていく、それを許してくれないか?」

「断わる。それが話なら帰れ。忙しいんだろうが」

「確かにこれからまた社に戻るけどね。その前に総二郎と牧野にこの話を承諾して欲しい」

「何度言われても断わる。自分の歳を考えろ」

「考えた上での話をしている。花音を預かってフランスで勉強させ、将来的には花沢で働く・・・彼女の希望だ」

「花音を日本から出す気はない。ましてや花沢になんて考えたこともない」


感情のない会話が同じようなリズムで繰り返されるだけ。
総二郎が折れそうな気配はない。俺を睨む目は金属片のように鋭かった。

総二郎は俺が花音を花沢家に入ること・・・俺との結婚を想定して拒否しているんだろう。
でも、まだそうじゃないって事を花音がそこに座っているのに言葉にするのは流石に躊躇した。さっき公園で話はしたけれど、『その先は判らない』と花音自身が希望を口にしたんだから。

もう1度大きく息を吐き、少し離れた所に座っている花音の顔を見た。


花音はあれからもずっと総二郎を見ている。
怒ってる訳じゃなくて、必死・・・と言った方が当たってるのか?

その時、総二郎の隣に座っていた牧野が「いいのよ、話して?」と小さな声で俺を後押しした。


「つくしは黙ってろ!」
「いえ、私は花音の母親ですもの、黙るなんて出来ないわよ。あなたこそちゃんと話を聞こうとしないのは逃げてるのと同じよ?2人の話を聞きましょう?」

「誰が逃げてるって?そんなんじゃない!俺は花音を・・・!」
「花音は総のものじゃないの、花音には花音の人生があるのよ?縛り付けたいの?あなたが1番それを嫌っていたんでしょう?」

「・・・・・・!!」

「総・・・愛情って、その人を側に置く事じゃないと思うの。それに花沢類は花音をお嫁さんに、なんて言ってないじゃない」



「・・・・・・・・・判った、聞こう」


くすっ、流石牧野。
この状態の総二郎を黙らせた。

でも、これでこいつが大人しくなるって思わないけどね・・・。


「牧野の言った通り、花音を花沢家にって話じゃない。花音はそれを望んでくれているみたいだけど、俺の気持ちはそうじゃないって話はしているんだ」

「じゃあ連れて行かなければいいだろう。どうしてそんな気持ちのお前が俺に許可を求める?」

「・・・諦められない気持ちを抱えて1人で生きていくって言われたから・・・かな。それが自分にとって自由で幸せだと思えるけど、苦しいってのも知ってるから・・・花音にそんな辛い日々を送らせたくないと思った。
それなら仕事仲間として花音との生活を初めてみようと・・・俺が彼女にそう申し出たんだ」


「仕事仲間・・・だと?」


総二郎の手が・・・動いた。





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Comments 6

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2019/11/02 (Sat) 13:59 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/02 (Sat) 17:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

う~~~~~ん!(笑)
そうなんですよ、そうなのっ!

でも・・・それはねぇ(笑)それは・・・・・・ここでは書けないかも💦
花音は大好きだし、類君はそれ以上に好きだし・・・でもっ!って感じでなかなか勇気が出ませんね(笑)

類君、イケないおじさんになっちゃうかも(笑)
どうしましょ💦

2019/11/02 (Sat) 21:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

ははは!総ちゃんったらクソ親父になってますよね(笑)
でも、私も娘が23歳も上のおっさん連れて来たら大反対しますけどね!

それが親友でしょ・・・?

複雑だよね~・・・って、嫁じゃ無かった💦


もしかしたら「花音の恋」の最終話、みんなに殴られるかもしれないからコメント欄、閉じようかな(笑)

2019/11/02 (Sat) 21:14 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/03 (Sun) 13:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

殴られてもいいから連れてったりして。
だってどうせ花音でも殴られるんだもんね!

それなら第一希望で・・・そして後釜に入るのよ♡


むふふ♡

2019/11/04 (Mon) 01:06 | EDIT | REPLY |   

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