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plumeria

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「それじゃあここからは2人で楽しんで。途中で退席してごめんな」

「とんでもないです!ご馳走様です、お義兄さん」
「お身体に気を付けて下さい。随分顔色が悪いから・・・」

「・・・ありがとう」


まだ食事の最中だったけど、せっかくの記念日だから邪魔者はなるべく早く消えなきゃ、なんて思ってメインディッシュが来る前に席を立った。
これは初めから店にも伝えていた事だから驚かれもせず、むしろ「この後はお任せ下さい」とフロアの責任者に言われて頷いた。


「また情報が入ったらお知らせしますね」
「私も何か思い出したら・・・って、その時しかお姉さんと2人になったこと無いんだけど」

「ん、頼むね。どんな小さな事でも助かる」

「きっと姉ちゃん、元に戻ると思います。俺、信じてるから」

「うん、俺も信じてるよ。時間が掛かっても取り戻すから。あぁ、そうだ・・・つくしがマンションに君達の部屋を準備してるよ。戻って来たら2人で遊びにおいで」

「えっ?は、はいっ!」


頑張って作った笑顔なんて見抜かれるんだろう。
進は元気よく答えたあと、辛そうな顔に戻って俺に頭を下げていた。


でも今日は新たな情報が手に入った。
つくしの叔父達が教えなかった名前・・・「有栖川」という珍しい名前は貴重な手掛かりのように思え、逸る気持ちを抑えながらマンションまで帰った。

そして部屋に入ったらすぐに「有栖川」という名字を検索に掛けた。
でもこの名字は全国でも殆ど該当無しと出るぐらい存在していない。それなら逆に見つけやすいような気がしたけど、ネットでは何も検索出来なかった。

それなら明日にでも美作のシステムに頼るか・・・そう思ってあきらにメールして許可だけもらい、その日は久しぶりに眠りについた。


**


翌日、母さんに「美作に出掛ける」とだけ伝えて社には行かずに直接美作邸に向かった。

相変わらず花で埋め尽くされた華やかな洋館・・・今はおじさんも外国だしおばさんも仕事に出掛けている。
双子の妹は英徳に通っていて居ない。
そんな主が誰もいない屋敷に1人で入る違和感はあったが、あきらが連絡をしてくれていたからすんなり厳重警備の屋敷に入ることが出来た。

出迎えてくれたのは地下にあるメインコンピューターシステムの責任者。
美作の極秘任務を纏めている特殊警備の片岡という男だった。


「おはようございます。あきら様から聞いております。どうぞこちらに」
「ありがとう。悪いね、完全な私用なのに」

「いえ、私達はお調べになる内容について、その原因や目的は敢えてお聞き致しません。そしてお聞きしたことも外部には絶対に漏らしません。花沢様がご不審なら話すのは私だけ、と言う事に致しますが?」
「別に不審な訳じゃない。もう科学研究所にも協力してもらってるからね」

「そうですか。ではこちらで光彩認証と静脈認証を」
「・・・ん」


流石にここではもう指紋認証なんて事はしない。
最先端の本人確認をしてからメインコンピューター室に入った。



「まずは何を調べますか?」
「全国に有栖川という名前の人間が何処にいるか判る?」

「有栖川・・・地名を絞りますか?でもこの名前なら少ないと思いますが」
「全国で頼む」

「畏まりました」

片岡がシステムに入って検索中・・・僅か数秒で画面に表示された「有栖川」は極少数だった。それも殆どが九州。後は東京に2名、神奈川に5名・・・・・・そして新潟に1名。

新潟の1人・・・この有栖川が牧野を連れて行った老人か?

「この新潟の有栖川の住所って判るの?」
「はい。有栖川靖彦、83歳ですね。住所は新潟県村上市・・・」


それはあっさりと判った。
名前と住所・・・何故かあっさりし過ぎて困惑するほどだった。


「資産は判る?」
「いえ、そこを調べるならまた別の方法ですね。この人物が事業をしていたか、と言う事になりますが有栖川と言う名前を使っていれば調べられると思います。過去50年程度のデータは取り込んでありますから」

「調べてもらえる?」
「判りました。少しお待ち下さい」


有栖川と成瀬に何か繋がりを見つけられれば・・・片岡の作業を見守りながら、少しずつ近づいているような気がしていた。





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私の妊娠が判ったというのに柊祐は病院に連れて行ってくれない。
何度頼んでも「体調が悪くないのだから問題無いだろう」・・・それしか言わなかった。

それに私に花沢家に対する復讐の手伝いをしろと言っていたのに、今までその話になったことは無い。私は昔みたいに何故自分がここにいるのか判らないまま過ごしていた。


それが腹立たしかったけど、今は無茶が出来ない。
命懸けのハンガーストライキも考えたけど赤ちゃんの事を思うと出来ない。
真夜中に屋敷の窓から飛び降りるなんてとんでもない。もうこんなに寒くなってるのに森に逃げ込むわけにもいかない・・・総ては類の赤ちゃんを守るため。

だから何処にも行かずに閉じ込められていても、柊祐に逆らうことは出来なかった。


結婚式からもうすぐ4ヶ月・・・ほんの少し胸が大きくなってお腹がプクッとしてる気がする。
でも、まだこれまでの服だって問題なく着られるし、自分が思うだけで鏡を見てもそんなに変わって無い・・・。
これが順調に育っている証拠なら良いんだけど、それでも不安だった。お腹の中で出血とかしてないだろうか・・・とか。

スマホもテレビも無いから世の中で起きた事も判らない。
あれから類がどうなったのかも知らない。

もう怪我は治って仕事に戻ったのかしら。
私のいない生活に慣れた・・・なんて事はないよね?



類・・・今でも捜してくれてる?
あなたの側に違う人なんて居ないよね?

この子が生まれる頃にはあなたの所に戻ってる・・・類、そうだよね?


彼の分身を自分の中に宿していることだけが心の支え・・・これを失うことがあれば、私は生きていけないような気さえしていた。





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