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その数日後、俺たちの結婚式が明日行われるというその日・・・。

両親には結婚式に向かうような素振りを見せて日本に帰る準備を進めていた。
何も知らない亜由美は俺が何も言わずに支度をするのを不思議そうに見ている。


「類さん・・・あなた、何を考えてるの?あなたも諦めてしまったの?私がこんな事を頼んだから・・・」

「心配しなくていいよ。あなたは何も考えずに教会に向かえばいい。そのウエディングドレス、気に入ってくれた?」

「えぇ・・・とても素敵だったわ。でも、あれは・・・あなたが・・・」

牧野にはそんなドレスはいらないよ。俺たちはお互い側にいることができたらそれだけでいいから・・・。
結婚式がしたいなら満天の星の下で2人ですればいい。

それにもう一つの宝物が待っているから。
それを考えただけで自然と顔が緩んでしまう・・・早く、この手に抱きたくてたまらないよ。

亜由美もきっと明日は驚くだろう。しばらく続いたその表情も前みたいに明るくなると信じてるよ。
その時の顔を見ることは出来ないけどね。それが少し残念だけど・・・。


準備は予定どおり進んでいった。

慌ただしい家の中で1人冷静にそれを見ていた。
両親の嬉しそうな顔は息子の結婚の為じゃないだろう。東條との結びつきが嬉しいんだろうな。

少しだけ・・・ほんの少しだけ申し訳ないと思うよ。ごめん・・・父さん、母さん。
だけど、俺はあなた達と違う人生を選んだんだ。


******


そして当日になった。
亜由美と2人で両親よりも随分早くに家を出て教会に向かう。
彼女は全く嬉しそうじゃなくて、むしろ諦めに近い悲しそうな表情を浮かべていた。


「・・・着いたよ。さぁ、中に入って・・・今日はそんな顔しないでくれる?」

亜由美の手を取って教会へ入っていく。すでにもう1人はこの中にいるはずだ。

ドレスに着替えて化粧も済ませて、すっかり花嫁になった美しい亜由美・・・
その亜由美に近づいて、俺は片手を差しだした。キョトンとした亜由美は訳もわからず俺の手を握り返した。

「俺も支度をするよ・・・お互い幸せになろうよ」


その眼を大きくさせて、何のことかわからないって顔してる・・・その意味は後でわかるよ?
亜由美と握手をして、その一言だけ残して・・・俺は裏口から教会を抜け出した。
前もって手配していたタクシーに乗り込んで空港へと向かう。

この時が俺が花沢物産の跡取りとしての最後の瞬間・・・両親への手紙は控え室に残した。
それと同時に後継者放棄の書類と相続放棄の書類・・・花沢との決別の印を置いた。

亜由美はきっと驚くだろうな・・・俺が出て行った後に入ってきた男の姿を見て・・・。


どうか、あんたも愛する男の胸に飛び込んで行きなよ?
そのままの姿で・・・だからそのドレスは俺からのプレゼントだよ。
みんなが揃う前に2人も教会を出て自分たちの夢に向かって進んで欲しい・・・心からそう願った。


フランスを出たのはそれから2時間後の便だった。
俺のスマホは鳴り続けている・・・花沢の連中が俺を探しているのかもしれないけど、もう関係ない。


飛行機の中で何度も総二郎からの動画を見ていた。何度も・・・何度も繰り返し見ていた。
そして飛行機は羽田に着いて、俺はすぐに石垣島行きの飛行機に乗った。

気持ちはもうあの島にまで飛んでいた。

今から牧野に会ってまず1番初めに何を話そうか・・・それとも言葉が出ないかもしれない。
とにかく何も言葉を交わさずに抱き締めてしまうかもしれない。


石垣島に着いたら走って港へ向かう・・・フランスを出てからもう15時間以上だけど不思議と疲れを感じなかった。
ただ牧野の事を考えながら石垣島から高速フェリーで竹富島に向かう。


たった10分しかかからないのに、この時間が今までで1番長く感じるなんて・・・!
島がどんどん近づいてくる。島の木々がはっきりと見えるようになった頃、もう足が動き始めた。

そして、船がゆっくりと着岸したら1番に船を下りて牧野がいるあの場所へと向かった。
懐かしいその道をただひたすら走って・・・その入り口が見えたときやっと足が止まった。

後はこの海へと続く小さな道をまっすぐ歩いていくだけ・・・。
そしてそこにあったのはあの時と変わらない別荘だった。



海の方を見たら・・・やっぱり宝物を抱きかかえた牧野がいる。
今日も優しい声が風に乗って俺の耳に届いてくる。動画で聞いたあの声だった・・・!

俺の荷物はその場に落ちた・・・震えそうになりながらその海に向かって大声で叫んだ!


「牧野っ!!」


振り向いた牧野の腕の中にあるもの・・・生まれて間もない子供の姿が見えた!
びっくりした顔の牧野は言葉も出さずにその場に立っていた。


「牧野っ!・・・牧野っ!!」



「類?・・・本当に類なの?」

やっと聞こえた牧野の声・・・その目の前まで走って行った。
すぐに抱き締めてその場に押し倒したいくらいだけど、思わず抱きつくのをためらった・・・。
壊れてしまいそうな天使がそこにいるから・・・牧野の胸で眠る愛おしい天使がそこにいるから。

だから、ゆっくりとその天使と一緒に牧野を抱き締めた。


「ごめん・・・待たせたね。でも、1年かからなかったよ・・・会いたかった!!」


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2017/06/08 (Thu) 00:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます🎵

いい夢見ましたか?( *´艸`)

初めはね、突進して押し倒したように書いてたんですよ。
よく考えたら、ダメじゃん‼ってなりまして。

もう少しで宝物を潰すところでした。悪夢ですよね。

つい、感情移入してしまってヤバイシーンを始めたら…
いかん!子供の前で‼ってなるし。

爽やかな風が吹き抜けるようなラブストーリーなのを
ぶっ壊すところでした。

さて、ラスト間近、頑張りたいと思います🎵

2017/06/08 (Thu) 07:07 | EDIT | REPLY |   

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