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「若宗匠、お疲れ様です!流石ですね~、相変わらす綺麗な英語でした」
「・・・そうか」

「えぇ、会場のお客さんにもバッチリ伝わってましたよ~」
「・・・そうか」


・・・井上と上田の評価はどうでも良いが、どうして肝心の牧野が黙ってんだ?
ここは今からデモンストレーションするって俺に言葉があっても良くね?それが秘書ってもんだろうが!

何故かビビりながら笑う2人の向こうで着物姿の牧野がセッセと巾着袋を並べている。俺はそれを即席の茶室から睨んでいた。絶対に気が付いてると思うのに無視しやがって・・・💢
「こっちが男性用で、こっちが女性用で・・・可愛いなぁ♡」って、それ、態とデカい声で”仕事してる感”出してるだろう?!


「若宗匠、そろそろお顔を元に戻さないと・・・」
「あっ!お客さんが入って来られましたよ?湯の準備は出来てますかね」

「知るか!」

ビクッとする井上に体当たりする勢いで茶席の亭主畳に座った瞬間棗を倒した・・・・・・流石に落ち着かねぇと失敗すると悟った。

ふぅ、大きく息を吐き気持ちを鎮める・・・って目の端に余計なヤツがウロチョロするけど!


隣部屋の会場では音を使うものが順に披露されるから小さな琴の音が聞こえ始めた。
そしてこの会場内のうちの向かい側では壮一郎が早くも花を生け始め、宏美が派手なジェスチャーで客にアピール・・・それに比べて牧野はまだセッセと巾着袋を並べて、うちの英語版パンフレットをその隣に置く作業に夢中。

完全に茶菓子を忘れてるな?と思ったら、上田に言われてから慌てて裏に走って行った。

・・・大丈夫か?



俺は上田を客と見立てて茶を点て、それを井上が英語で説明する。少しばかり人が集まったところで井上が緊張気味な英語で解説を始めた。

「I'm going to talk about Sado,in English it is called a Japanese tea selemony.Sado is Japanese traditional culture.
It's loved by many people.In Sado,we boil the water and make a green tea for the guest.」
(では茶道について説明します。茶道は伝統的な日本文化であり、多くの人に愛され、親しまれています。茶道とは湯を沸かし、茶をたて、客人に茶をふるまう行為をいいます)


この挨拶で静かに一礼・・・ここからは集中しないとマズいって事で、牧野を見ないようにした。
それなのに茶菓子を持って来た途端、すぐ横の通路で誰かにぶつかって「Sorry!」って声が聞こえるし、慣れない草履で躓くし、それが目の端に映るから気が気じゃない。
開始10分ぐらいで俺のイライラはMAXだった。

それでも客にバレないように顔を作るのは得意中の得意。
心中何事も起きてないかのように茶を点て、それを上田に差し出して茶会の様子を披露した。


「In sado, the master of the ceremony invites guests and serves Japanese traditional tea called matcha.The act of making a tea is called Temae」
(茶道では、主人が客人を招き、伝統的な様式で抹茶を振る舞います。茶を点てることを点前といいます)

井上の英語も随分滑らかになり、最初の点前披露が終わった。
これから数分は外国人相手に茶席に座ったまま質問に答えたり、道具の説明をしたり、希望があれば茶席に上がってもらい茶を飲んでもらう。

その間に牧野は熱心に聞いてくれた客に巾着袋を手渡していた。
勿論、この時の会話は練習していたからそこまで問題なく、すげぇ頑張って作ってる笑顔で上品に振る舞っている。やっとあいつも落ち着いてきたか、とホッとした。

でも、その時に牧野が1人の爺さんに何かを話し掛けられたのを見てしまった。
咄嗟に目で合図して井上を横に行かせたから大丈夫だったが、何故かその時に牧野が嬉しそうだった。


1度目の説明を終わらせて休憩・・・また30分後には次をやる訳だが、流石にここで牧野を裏に呼び出した。




************************




『ありがとうございました。奥様にも宜しく』
『どうもありがとう!きっと大喜びだ!』



ふぅ、やれやれ・・・急に話し掛けられたから焦っちゃったわ!
でも良かった!巾着袋にして大正解じゃない♡って、1人でニヤニヤしていたら、真後ろから「牧野!」と恐ろしい声が聞こえてきた。
その声は勿論、西門さん・・・恐る恐る振り返ったら、鬼みたいな顔して私の事を睨んでいた!

側にいた井上さんはそろりそろりと私から離れ、西門さんの視界から外れたと思ったらダッシュ!さっさと上田さんの所に行ってしまって、気が付いたら私のド真ん前に彼が立っていた。

マズい!今のを見られていたのかしら?!


「ちょっと裏の控え室まで来い!」
「えっ?今はデモンストレーション中ですよ?」

「阿呆!うちの次の点前は30分後だ。今から彼奴らが場を作り直すから時間がある」
「・・・・・・はい」

クルリと向きを変えた西門さんの後ろをトボトボついて行って、今からどの部分を叱られるのかと・・・思い当たることが多すぎて判らない・・・。
西門の控え室に入ったらそこにある椅子を跨ぐようにして座り、背もたれを抱え込んで私の方を見た。


「仕事だってのは判ってるのか?」
「・・・はい。判ってます」

「それにしちゃ随分気合いが入ってねぇと思うが、気のせいか?」
「・・・申し訳ありません。確かにドジが多いです・・・」

「お前のドジは今に始まった事じゃねぇけど、今回は何が原因だ?あれだけ巾着袋作る前は張り切ってただろう?」
「・・・それは・・・・・・いえ、何でもないです。海外に緊張しただけです」


こんな時に「お祝い膳」の理由なんて聞けないじゃん。
いや、秘書だから聞いても良いんだろうけど、私が知りたくないって言うか・・・どうせ明日には判るんだし、そんなの今聞いたら本当に笑顔が作れない。

・・・なんで笑顔が作れない?

いやいや、考えちゃダメ!私には西門さんのプライベートは関係ないもん!
仕事で必要なら、そのうちちゃんと彼から言われるんだから。


「何をブツブツ言ってんだ?さっきの爺さん、何を聞いてきたんだ?」
「さっきのお爺さん・・・?あっ、あれは断れなかったんですよ~!ごめんなさい!」

「は?何が?」
「巾着袋なんですけど、お仕事で来られない奥様の分も差し上げたんです。可愛いって褒めてくれたから・・・・・・つい」

「可愛いって?お前が?」
「巾着袋がですよっ!」

「・・・くくっ!」
「・・・ぷっ!」


・・・あ・・・西門さんが笑った顔、久しぶりに見たかも。

やっぱりこっちの方がいいや。
グダグダ考えずに仕事、頑張ろ!もう何回も同じ事言ったけど、今度こそ・・・今度こそ!


「本当にごめんなさい。もう大丈夫です!あっそうそう、そのお爺ちゃんが言ってましたよ?」
「なにを?」

「毎年風呂敷で面白くなかったって。だから華道の東川さんの風呂敷はお断りしたんですって!」
「マジか!すげぇな、巾着袋・・・」

「でしょ~!今度西門流で売りません?儲かるかもですよ?」
「それはねぇな。喜ばれるのはアメリカだからだ」

「はっ・・・そうか!」


よし!と気合いを入れ直して控え室を出て会場に戻ったら、もう次の点前披露の時間10分前。
西門さんは色気を振りまきながら茶室に向かい、今度は井上さんがお客様で上田さんが説明係。私はこれまでと同じくお土産を渡す係としてスタンバイした。

その時に茶室の真正面に立っていた御夫人・・・何処かで見たことあると思ったら、昨日ぶつかった人?


その人が怖い顔をして西門さんを睨んでいた。





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Comments 4

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2019/11/09 (Sat) 13:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

つくしちゃん、もう気分が急降下急上昇で大変💦
こりゃもう告るしかないと思うんですが、鈍感同士、なかなか肝心の言葉が出ないようで(笑)

この御夫人・・・ふふふ、何者でしょう?
明日には判りますよ(笑)

実は色んな人がひょっこり出てくるイベントです!彼も・・・来ますよ?(笑)

2019/11/09 (Sat) 22:48 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/09 (Sat) 23:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

なんかさ(笑)よく見掛けるよね

「名前忘れたんだけど」ってヤツ(笑)
瑠那と颯太っ!なんか遠い昔の名前みたいだけど、あれ書いてた時は楽しかったわ~!

何だっけ・・・ウィンリーとか何とか・・・アマンダ?だっけ?
(調べろよ!)

ってか、違うし!(笑)日本人のおばちゃんだし💦

2019/11/10 (Sun) 23:12 | EDIT | REPLY |   

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