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怖い顔して睨んでいる御夫人・・・こうしてみると家元夫人とあまり変わらないぐらいの歳の人だった。
今日も真っ赤なルージュにお歳の割には派手なコーラルピンクのスーツ。でもキリッとした表情は、やり手の実業家って感じの人だ。

そんな人がなんで西門さんを睨んでいるんだろうって思ったけど、すぐに始まった2回目のデモンストレーションで私達のブースは既に人が沢山集まっていた。
だから上田さんが英語で説明している時、私はセッセとお土産の準備、その御夫人の事を見てる時間は無かった。

でもやっぱり気になる・・・ふと顔を上げると、その人はクルッと向きを変えて華道の東川さんの方に行ってしまった。


「なんだ、うちに興味があるんじゃ無かったのね?ま、いいけど・・・」、なんて巾着袋を並べていたら、急に華道ブースで大声が上がって驚いた。
うちのブースで西門さんを見ていた人もそっちに顔を向けて、説明の上田さんの声も止まった。

茶室の西門さんを見ると、この騒ぎを耳にしてるんだろうけど手を止める事はない。自分のお茶に集中しているように見えて、流石だと思った。


「お客様、そんなつもりではございませんから・・・」って聞こえたのは宏美さんの声だ。
一体何が起きてるんだろうかと思ったら、どうやら彼女が身支度について御夫人にお説教されてるみたいだった。


「このような場所に派手な振袖などを選ぶなんて非常識でしょう!花より自分が目立ちたいですか?」
「いえ、そういう意味ではございません。これも日本文化の・・・」

「あなたは生ける方では無いからいいと言うの?でもそのような長い袖では何かがあった時に邪魔ですし、外国の方に生け花をご紹介するなら花を輝かせる努力をしなさい!華やかでも訪問着、無難な色無地か付け下げで充分です!これだから若い人は嫌なのよ、まず自分の事を1番に考えるでしょう?」

「・・・申し訳ございません、でも!」
「なに?私に意見でも?」


マズい・・・こんな筒抜けの会場でそんな言い争っちゃダメじゃないの?しかも日本人同士じゃん!
みんなが何事かとざわざわして、宏美さんも真っ赤・・・東川さんは専用ステージでお花を生けてる最中だけど、どうしようかとオロオロしてるみたいだった。

もうっ!仕方ない、こうなったら・・・!


「上田さん、ちょっと受け付けお願いします!」
「えっ?牧野さん?」

驚く上田さんを振り切って自分の持ち場から離れ、華道のブースに向かった。
その時に初めて西門さんが茶席から視線を外して私を見たけど、それよりこの騒ぎを鎮める方が先だと思ったんだもの!ザワザワして足が止まってるお客さんの間をすり抜けて、その御夫人と宏美さんが向き合ってる所まで行った。


「あら、お客様!そちらにいらっしゃったんですか?茶道はこちらですよ?」
「・・・えっ?!なに、あなた・・・」

「お待たせしたのですね~、申し訳ありません!ささ、どうぞ~!」
「えっ?・・・ちょっと!」

「・・・ま、牧野さん?」
「宏美さん、お騒がせ致しました。皆様、どうぞごゆっくり東川様のお花をお楽しみ下さいね~!」


宏美さんもキョトンとしていたけど、事もあろうか日本語でお客さんに断りを入れて、御夫人の手を引っ張って茶道のブースに連れて行った。
そして茶室の入り口に案内して、ポカンとしている井上さんに「交代です!」と言い、御夫人を客人の席に・・・御夫人も呆気に取られてそれまで抵抗しなかったけど、無理矢理連れて行った茶席で初めて手を振り払われた!


「お離しなさい!私は茶道なんて・・・!」
「申し訳ありません。でもここはお茶を飲んで落ち着きませんか?西門・・・若宗匠のお茶、美味しいですから」

「勝手に言わないでちょうだい!お茶は嫌いで・・・」
「すみません!でも純粋にお花を楽しんでおられるお客さんもいます。あそこで騒ぐとそれこそせっかくのお花が・・・お願いします!ここで少し落ち着いて下さいませんか?」


畳の上で両手を着いて頭を下げたら、その御夫人は黙った。
そして「仕方無いわね・・・」、なんて言って茶室の客人側に座った。その所作は茶道を知らない人じゃないみたい・・・凄く綺麗な動きだった。

だから西門さんにお茶を頼もうと思って亭主側を見たら・・・・・・あれ?なんでそんなに驚いてるの?




*********************




人が茶を点ててるってのに隣で何やら大騒ぎ・・・でも、それを気にして目の前の点前が疎かになってはマズい。
だから耳には届いていたけど無視して自分の世界に入っていた。

それなのに牧野が急に走って行ったから驚いて、それまで茶に集中しようとしていたのに振り向いてしまった!井上も「なんでしょう?」なんて言うし、西門のブースに集まっていた連中も俺の方なんて見ちゃいねぇ。
なんなんだ!と腹がたって覗き込んだら・・・どっかで見たことあるおばさんが居た。


何処でだっけ・・・でも、あの恐ろしく吊り上がった目に覚えがある。


それが全然思い出せなくて腕組みしてたら、東川の所で揉めてるそのおばさんを牧野がうちに引っ張って来た?!
マジで?どうする気だ?!

慌てて元の姿勢に戻って知らん顔・・・井上もキョトンとして騒ぎを見ていた。


「井上・・・牧野、何してる?」
「えーと・・・女性を1人、こっちに・・・あっ、柵の中に入って来ました!どうやら茶室に・・・・・」

「なんだと?ここに?」
「はい!あっ・・・来ました・・・」


見学通り越していきなり茶を飲ませる気か?!・・・って思った時には、俺の真横で牧野の手をはたき落とすおばさんが居た。


「お離しなさい!私は茶道なんて・・・!」
「申し訳ありません。でもここはお茶を飲んで落ち着きませんか?西門・・・若宗匠のお茶、美味しいですから」

また言い直したな?
いや、それよりもこのおばさん・・・やっぱり見た記憶がある。

くそっ、思い出せない・・・っ!


「勝手に言わないでちょうだい!お茶は嫌いで・・・」
「すみません!でも純粋にお花を楽しんでおられるお客さんもいます。あそこで騒ぐとそれこそせっかくのお花が・・・お願いします、ここで少し落ち着いて下さいませんか?」


確かに・・・牧野にしちゃマトモな事を言ってる。
いい歳してこんな場所で大きな声を出すなんて、宏美も常識外れかもしれねぇけどこのおばさんも人の事は言えねぇよな。
・・・なんて、誰にも判らないように、うんうんと頷いていた。


「すぐに新しいお茶碗、ご用意しますから。ね、若宗匠!」
「は?あぁ・・・そりゃいいけど」

「いいえ、やっぱり結構よ。若い頃に何処かの悪戯坊主に身体を壊す程のお茶を飲まされて以来、抹茶が大っ嫌いなの!」


「・・・・・・・・・(どっかの悪戯坊主?)」


・・・・・・ああああーーーっ!!
思い出したーーっ!!





「あら、その顔は思い出したの?総二郎君」

「・・・お久しぶりでございます。まさか・・・ここでお会いするとは・・・」

「そうね。私は今、ニューヨークで暮らしているの。今日はお友達がどうしてもって言うから仕方無く来ただけ。それなのにまさか茶道が西門で来たのがあなただとは思わなかったわ」


これには牧野も井上も上田も「は?」って顔してる。
いや、無理もないんだけど・・・。

しかも会場は漸く落ち着いて、俺のブースにも客が戻って来た。マズい・・・これはどうすりゃいいんだ?


「若宗匠、お知り合いなんですか?」

「・・・この方は草薙様と言ってお袋の同級生なんだ。ご主人は外交官をしておられて、その為に殆ど日本にはお住まいでは無いんだそうだが・・・」

「あら!家元夫人のお友達って事ですか?それは奇遇ですねぇ~!」


いや、そんなに楽しそうに言う話じゃねぇんだけど。
珍しく俺が背中に汗かいてんのに、牧野が嬉しそうに草薙のおばさんに「本当にお茶、飲めませんか?」なんて聞いていた。


「私、美和子さんとは幼馴染みで大学までずっと一緒なんですよ。仲が良いのかと言われれば疑問ですけれどね」

「あら、でも西門にいらっしゃるのでしょう?」

「・・・たまに足を運ぶぐらいです。最近・・・にしては随分昔ですけど、3番目のお子様のお祝い事に呼ばれて西門に行きましたの。その時に美和子さんの2番目のお子様のお茶をいただくことになりましてね」

「2番目の・・・って事は・・・」
「・・・・・・・・・」

「えぇ、こちらにおられる総二郎さんですわ。でも、まだ子供でしたから『お点前なんて無理でしょう?』って言ったら『出来ますよ。点てて差し上げましょう』なんて澄ました顔で言ってね、通常の3倍ぐらい濃いお茶を飲まされましたの!
その後、自宅で胃痛を起こして大変な目に遭いました!流石、あの美和子さんの子供・・・忘れもしません!」


そうだった・・・。
そんな事があった。まだ俺が10歳ぐらいの時だ・・・。


「ホントなんですか?若宗匠」
「・・・ホントだ」





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Comments 4

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2019/11/10 (Sun) 13:13 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/10 (Sun) 14:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

そうなんです♡そう言う人なんですが・・・ちょいくせ者です(笑)
またそのうち名前が出てくると思います。

いや、悪い人ではないですよ?(笑)

ここらでつくしちゃんの活躍がチラホラ・・・日本に帰ってからのお楽しみです♡

2019/11/10 (Sun) 23:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、おはようございます!

コメントありがとうございます。


そうそう!
お抹茶って、空きっ腹に飲むと胃を痛めるからってことで簡単な食事、茶懐石を先にいただくんだそうです。
だから人によっては3倍も濃い抹茶を飲むと胃痛を起こすかも(笑)
結構な量ですからね・・・3倍って。

総ちゃん、勿論態とやったんですよ(笑)
「お点前なんて無理でしょ?」にカチンときたんでしょうね(笑)


さて、このおばさんをどうやって退治するんでしょ?

2019/11/11 (Mon) 07:55 | EDIT | REPLY |   

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