FC2ブログ

plumeria

plumeria

ガクッと項垂れた西門さん・・・話を聞いて呆れてしまった。

いくら子供の時とは言え、そんな馬鹿な事をする人だとは。
井上さんも上田さんもその頃は西門に入門してなかったみたいで驚きを隠せなかった。

でも、よく考えたらこの草薙さんも子供相手に大人気無かったんじゃないのかしら。
素直に「ありがと~」って言って点ててもらえば西門さんだって美味しいお茶を・・・10歳なりの美味しいお茶を出したんじゃないの?しかも15年前のことならさっさと水に流せばいいのに。

やれやれ・・・困った2人だ。


「草薙様、今はもうそのような事は致しませんし、そのお茶に対する思いを今日で終わらせていただけませんか?若宗匠が心を込めて点てますから、飲んでみてください」

「・・・あら?あなたはよく見たら昨日の・・・西門の人だったの?」

「はい、そうなんです。昨日は申し訳ございませんでした。のんびりした性格なもので・・・でも、草薙様?あんまり急いで歩かれると危ないですよ?人生と一緒でゆっくりのんびりが幸せだって、私の両親は言ってました」

「余計なお世話です!とにかく、私は西門のお茶など飲む気にはならないわ、失礼!」

「では私が点てます!西門流に入門なんてしてないけど、私のお茶なら飲んでいただけます?」

「・・・あなたが?」


「おいおい!」って西門さんの声が聞こえたけど、私はこの人が西門さんのせいでお茶嫌いになったままなのがイヤだった。
だからもう1度飲んでもらって・・・私のお茶で好きになるとも思えなかったけど、精一杯真心を込めれば何とかなりそうな気がした。
そんなに甘いもんじゃ無いっていう事はあのお屋敷にいたら判るけど、この場で何もせずに帰らせる訳にはいかない。

私が引っ張り込んだし、見学している外国人は沢山居る・・・もう1度頭を下げて「お願いします!」って言うと、草薙さんは「仕方無いわね・・・」って怒った顔して正座してくれた。


「おい、牧野!何を勝手に・・・!」
「だって若宗匠が大昔に悪戯なんてするからでしょうよ!何とか頑張って一杯だけ点てますから退いてください!」

「・・・お前、亭主に退けって」
「いいから!みんなが見てるでしょ?少し後ろから指示してください」

「指示はいるのかよ・・・」
「当たり前でしょ!」


まだ何回かしか通してやってないけど・・・・・・こうなったら根性で点ててみせるわよ・・・!


「若宗匠、帛紗!」
「は?俺のは男用で・・・」

「いいから!無かったら困るでしょ!」
「お、おぉ・・・」


よし、帛紗捌きから・・・・・・って、どうだったっけ?




**************************




牧野がド真剣な顔で亭主畳に座り、すげぇ辿々しい所作で帛紗捌きをした。

『こ、今度は女性が亭主の場合をご覧頂きましょう』

上田が咄嗟に男性と女性では多少作法が違う事を英語で説明したのはいいが、問題はそんな事より牧野が間違えずに出来るかどうか・・・いや、間違っても外人には判んねぇと思うが、流石に湯を溢したり茶を溢せば気が付かれる。
そんな初歩的な間違いをするんじゃないかと真後ろでヒヤヒヤしながら見ていた。

勿論、そんな表情は表には出さずに。



この草薙のおばさんとうちのお袋は実は幼馴染み・・・俺と司達みたいなもんだ。

でも学生の時に草薙のおばさんが好きだった男がお袋の事を好きになって、その時に関係が拗れて一方的におばさんが敵意を露わにするようになったんだとか。
で、お袋も深窓の令嬢だったのに意外と気が強かったから、売られた喧嘩を買ったらしい。事ある毎に、お互いが張り合って「持ち物自慢」みたいになっていったと聞いた事がある。

お袋が古風な茶道家に嫁いだとなれば、おばさんは外交官のところに嫁いで海外を飛び回る。
お袋が祥一郎を産んだ時には偶然だろうが女の子を産んだ。

そして着飾った娘を連れて来て「女の子は可愛いわぁ!」なんて見せびらかしたもんだから、女の子が欲しかったお袋が激怒。暫く絶縁していたらしいが、孝三郎の7歳の誕生日の祝いの席にわざわざ呼んで、男の子が産まれなかった草薙のおばさんに当てつけたらしい・・・実にくだらない争いだけど、本人達は真剣に喧嘩してるみたいだった。

お袋がそれを志乃さんに愚痴ってるのを聞いたから、あの時・・・・・・つい、悪巫山戯をしてこの人にすげぇ苦い茶を出した。

おかげで今度は俺がお袋に叱られ、両親がおばさんにお詫びに行って散々文句を言われたと聞いた。


まさか、そんな人がここに来るなんて・・・しかもド素人の牧野が茶を点てる羽目になるなんてっ!!
これで失敗したら2度と西門流はこのイベントに呼ばれないんじゃねぇの?・・・別にいいけど。



俺の心配を余所に、牧野の点前は進んで行った。

・・・・・・・・・あれ?牧野って・・・こんなに綺麗に作法出来たっけ?


多少力んでる所はあったけど、西門で稽古した時には出来なかった茶筅通しを思ったよりスムーズに終わらせ、茶碗を拭く手つきも前より上達してやがった。
細かい所作には問題有りだが以前に比べると全然落ち着きが違う・・・いつの間に?と俺が不思議に思うほどだ。

今度は茶をはく(入れる)為に茶杓を取り、薄茶の分量一杓半を・・・ここで、少し手が止まったから何かと思えば、濃い茶を飲まされて抹茶嫌いになったおばさんの為に半杓を少しだけ減らして茶の量を加減した。

その判断には驚いた。
確かに一杓半が基本だけど、これは客の好みに合わせてもいい。
濃い方が好きなら増やし、薄めが好きなら減らす・・・それをこの状況で判断して薄めた事は、大袈裟に言えば手慣れた亭主のする事・・・とても茶道初心者がそうするとは思えなかった。

まぁ、愛矯ってのかもしれねぇけど茶筅の回し方は下手くそ。
それは手も口も出せなかったけど、最後の最後にガクッ!とくるほどお粗末・・・柄杓が釜の縁からコロンと転げ落ちた。それを見て何事もなかったかのように元に戻して、見てる奴等にはこれもミスったなんて判らないからいいけど。

そして初めての茶がアメリカでのデモンストレーション・・・牧野は微かに震えながら草薙のおばさんに茶碗を差し出した。


暫く其奴を眺めていたけど、おばさんは静かに茶碗を取って牧野の茶を飲んだ。
その後で「ふぅ・・・」、と大きく深呼吸。表情は変えなかったけど「大変美味しゅうございました」、と礼を言った。

これを見ていた連中も上田の説明を聞きながら「excellent!」・・・いやいや、そんな訳ねぇけどよ。


それでもあれだけ気分を荒げていたおばさんを黙らせたんだ。もしかしたらすげぇ度胸の持ち主かもしれないと、腹の中で密かに笑っていた。


「総二郎君!」
「は、はい!」

「・・・なかなか面白いお弟子さんをお持ちのようね。腕はイマイチだけど、お気持ちが籠もっていたので美味しかったわ。あなたのあの時のお茶より数倍ね!」

「・・・申し訳ございません。そして、ありがとうございました」


深く頭を下げると草薙のおばさんは同じように礼をし、来た時とは全然違う立ち居振る舞いで茶室から出て行った。そして見学者に英語で『体験してご覧なさい』なんて・・・。


「・・・牧野、ご苦労さん。気分良く帰ってもらえたようだ。良かったな」
「・・・・・・・・・うっ!」

「どうした?感動してんのか?いや、俺もまさか牧野が点てられると思わなくて・・・」
「・・・痛いっ・・・ダメ・・・もうっ・・・」

「・・・は?」
「足が・・・痺れて立てないっ・・・!」


・・・・・・・・・そこ?




にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/11/11 (Mon) 14:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

お返事遅くなってスミマセン💦

あっはは!つくしちゃん、頑張ったでしょう?(笑)
勿論完璧なんて出来ませんよね💦

日本のお茶会だったら完全にアウトでしたね(笑)

ええっ?!着物でそれは難しくないですか?それこそ着崩れして控え室で・・・・・・いかんいかん、まだまだ♡
ツンツンの方が可愛いですけどね~♡

まだまだデモンストレーションハプニングが続きます。
長いのよね・・・ここ。糖度が増えなくてごめんなさいね(笑)

2019/11/12 (Tue) 00:07 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply