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仕事仲間という言葉に何を思ったのか、総二郎がいきなり座って居た場所から立ち上がり、俺の胸ぐらを掴みあげた!
俺もそれまで座っていた身体がこいつの手で持ち上げられ、その早さに一瞬面食らった!

「きゃあああーーっ!総、やめて!」
「父様、だめぇっ!!」


牧野と花音の言葉が聞こえたけど、総二郎の手が俺を締め上げる力は緩まない。
顔面を紅潮させて、左腕で喉元をグッと押されて喋ることも出来なかった。
花音が総二郎の脇腹にしがみついて止めようとしてるのが見えたけど、このままだと彼女もこいつの勢いで振り払われて倒れるんじゃないかと焦った。


「仕事仲間ってなんだ・・・そんな中途半端な気持ちで側に置かれる花音はどうなるんだ!お前、花音の気持ちが判るって言うなら同じ事が出来るのか?え、類・・・俺が気がつかなかったとでも思ってるのか?!」
「・・・総・・・二郎・・・!」

「お前、俺達を見るのが嫌でこっちに赴任が決まるまで帰国しなかったんだろうが!
自分はそうやってつくしを見ないようにして逃げたクセに、花音は側に置くってどういう事だ!自分の事を見てくれない男の側で暮らすのがどれだけ辛いと思ってやがる!」

今まで見た事がないこいつの怒り・・・そして総二郎の言う通りだと判ってる。


判ってるけど・・・・・・!


返事が出来ない俺をありったけの力で締めつけ、本当に窒息するかと思うほど・・・でも、こいつを蹴り飛ばすことも、その腕を引き離すことも出来なかった。
こうなって当然・・・そんなの覚悟して来たんだから。


「父様!!それは花音が頼んだの!類お兄様はダメだってちゃんと言ってくれたの!でも私がどうしても行くって言ったのよ!だから離して!その手を離して、父様!!」
「花音は黙ってろ!」

「黙りません!父様こそ私の気持ちが判って無いのよ!私が望んでるのは類お兄様に選んでもらうことじゃない・・・私が選んだ恋を貫きたいのよ!父様も母様もそうだったんでしょ?!どうして判ってくれないの!」


花音の叫び声が静かな西門邸に響いた。

それは心の底から吐き出すような、激しい感情がそのまま声に取り憑いて総二郎に襲いかかったみたいだった。
その時、総二郎が俺を睨んだまま力も動きも止まったから・・・。


「花音、もういいから君は黙って・・・」
「いいえ!私が言います。類お兄様はちゃんと大学を卒業しなさいって、その間に私の気持ちも変わるかもしれないって言ったわ。でも私の気持ちは変わらないの・・・だからパリで大学を卒業するって言いました。その後はアシスタントなら側に居ていいってお兄様が言うから、それに納得したのは私なの!」


総二郎が俺から手を離して花音の方に向き直った。
花音はそれを見て俺の前に駆け寄ると、まるで庇うように仁王立ちで総二郎に身体を向けた。


「・・・・・・花音、お前・・・そこまで」

「・・・類お兄様が私の事を女性として好きじゃ無いことぐらい知ってるわ。誰が好きなのかも知ってる・・・そしてその人に勝てないのも知ってる。どれだけ頑張ったって無理だって判ってるわ。
それでも私は側に居たい・・・類お兄様は遠くからでもその人の幸せを願ってれば幸せだって言ったけど、私はそんなの出来ない。だから側に居たいって我儘言ったのよ!」

「馬鹿野郎!それの何処が幸せだ?!ダメだ、花音・・・こいつだけはダメだ!」

「でも私の幸せはそこにあります!他の人じゃダメなの!」

「いい加減にしろ!!」
「殴りたいなら殴って下さい!それで西門から勘当してくれていいわ!どれだけ叱られてもこれだけは譲れません!」

「・・・・・・・・・!!」



総二郎の手がダラリと下に落ちた。
俯いて俺にも花音にもその表情が見えなくなった。その後で「勝手にしろ!」と掠れたような声で言い、部屋を出て行った。


牧野はそれを見ていたけど追い掛けなかった。
それよりも俺達の方に目を向けて苦笑い・・・「仕方無いわね・・・」なんて。

ふぅ、と溜め息をついたら俺の前に来て、ジッと目を見つめられた。それを花音は苦しそうに見ていたのが判ったけど、俺は牧野から目を逸らせなかった。


「花沢類・・・色々ご迷惑かけたのね。私からも聞くけど、本当に花音を連れて行くの?決して気紛れとか同情とか・・・そんな気持ちじゃないって誓える?」

「気紛れでこんな事言えないでしょ。同情でもない。本当に花音は大事なんだ・・・だから本当は俺じゃないヤツと幸せになって欲しいんだけどね」

「くす・・・それはこの子が譲れないのね・・・」


『結婚を許して欲しい』・・・本当はそう言えば、総二郎も牧野も違うんだろうと思う。
年齢や場所が掛け離れていても、恋愛感情があって連れて行くんなら納得出来るのかもしれない。

でも、それはまだ・・・出来ない。


「ねぇ、花沢類。1つだけお願いがあるの。フランス行きを1日だけ遅らせることは出来ないかしら。うちにも支度と覚悟がいるわ。総にちゃんと納得させるのに時間が少なすぎるの。
大学の事もあるし、お義父様達にも話さないといけないでしょう?お願い・・・します」




********************


<sideつくし>

「・・・いいよ。渡仏は3日後にする」
「本当?ありがとう・・・花沢類」

私のお願いに日にちを延ばしてくれた花沢類。それを聞いて花音は逆に戸惑いを隠しきれなかった。
すぐにでもここから出ていけば総に叱られないとでも思ったのかしら。

そんな花音を先に部屋に戻して、駐車場まで見送ったのは私1人。
花沢類は運転席に座ってから窓を開け「ごめんな・・・」と辛そうに言った。それには黙って首を振るしかなくて、この日はそれで彼とは別れた。


「さてと・・・今度は総の番ね。世話が焼けるなぁ・・・」


私は部屋に戻らずに、そのまま彼が育てている茶花の畑に向かった。そこに居るような気がしたから・・・。


思った通り、月夜の下で秋の茶花が微かに揺れてる庭の真ん中・・・そこに総はポツンと立っていた。

少しだけ肩を落として淋しそうな背中。きっと私が近づいてる事も判ってるだろうに、振り向きもしない。
ホント、昔から花音の事になると周りが見えなくなる・・・困った父様なんだから。


「総・・・風邪引くわ。中に入りましょ?」
「・・・お前は入ればいいだろう。俺はまだここに居る」

「気持ちを鎮めてるの?花沢類、帰ったわよ」
「・・・ふん!」


顔は見せないけど声が掠れてる。
私は彼の少しだけ後に並んで立って、暫く黙ったまま・・・何処か遠くで鳴いてる虫の声を聞いていた。


「・・・・・・総」
「・・・・・・なんだ。説教なら聞かねぇぞ」

「そんなのしないわよ。たださ・・・花音の気持ちを大事にしてあげようよ」
「でも類の中に花音との事はないんだ。それを判ってて行かせるなんて・・・」

「それも自分で踏ん切りつけなきゃ花音は前に進めないわ。今のままだとあの子は苦しいままここに残ることになる・・・宙ぶらりんになった気持ちをずっと抱え込むわよ?」
「会わなきゃそのうち忘れる」

「・・・私と会えなかった時、総はそんな事考えたの?私は・・・そう考えたけど無理だったよ?」
「・・・・・・・・・・・・」


「もしも花音が傷ついたら、帰って来られる場所を作って待っててあげればいいじゃない。父様が怒っていたらあの子は帰る場所がなくなるわ。それに・・・たとえ夫婦にならなくても好きな人と一緒にいる幸せってあるのかもしれないわよ?
少し特別な2人・・・そんな愛情表現もあるのよ、きっと・・・」

「・・・馬鹿言え!そんなの・・・・・・俺は認めねぇよ!」


「馬鹿ね・・・淋しいだけでしょ?でも総は1人じゃないんだよ?私も紫音も・・・絢音も颯音もいるわ」

「1人欠けたら・・・」
「欠けないわよ。花音は一生総の娘でしょ?生きていく場所が少し違うだけよ」



「1人にしてくれ」って総が言うのに首を横に振り、私は彼の足が動き出すまで付き合って立っていた。

花音が日本を出て行くのは3日後・・・・・・総は最後まで「許す」とは言わなかった。




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Comments 8

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2019/11/04 (Mon) 12:52 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/04 (Mon) 14:43 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/04 (Mon) 14:47 | EDIT | REPLY |   
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2019/11/04 (Mon) 22:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: せつないですね。

シポンヌ様、こんばんは。

毎日お立ち寄り下さいましてありがとうございます♡

で、切なかったですか?(笑)

もうねぇ(笑)どうしてこんなの書いてるんだか!って話ですよ。
ふふふ、凜とした総ちゃん、素敵ですよね~!

次話はそんな総ちゃんが出るかも?しれませんよ。
いや、もしかしたら頑固親父かもしれないけど(笑)


プレッシャーにはならないから大丈夫です。お気遣いいただき、ありがとうございます。
ただいつかはおやすみすると思うので、その時はアナウンスしますね。

のんびりマッタリ、続けていこうと思っています。
これからも宜しくです♡

2019/11/04 (Mon) 23:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

・・・・・・どうしてもこれしか出来なくて(笑)

1度は「結婚」の文字を入れて書いたんですが、止まっちゃうんです。
やっぱり元々は類つくですから、そこはねぇ💦

と、言いながら花音ちゃんも大好きなので・・・マジで悩んだ方向がこれ(笑)

あと2話かな・・・予定を随分過ぎてしまったので、あきら君を書けるかどうかが判らなくなりました(笑)
でもあきら君を書かないと紫音にいけない・・。

こりゃ12月まで掛かりますね💦ひえぇ~~~~~!!

2019/11/04 (Mon) 23:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あっはは!親父、大爆発の巻!そして庭でしょぼん(笑)
でも、書きながら泣いた私(笑)

私、結構泣くんですよね・・・ナルシストって意味じゃ無くて、テレビでも本でも曲でも、涙腺が弱いの。
それで、書きながらその場面を想像すると、泣いちゃうのよ。

親は子供が帰れる場所をいつも作っておきなさい・・・ってのはバレエの先生に言われました。

それを思い出してしまいましたね。
(と、言いながら電話で喧嘩したら毎回『2度と家に帰るな!』って言う私)

2019/11/04 (Mon) 23:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 切ないです

ぴろきち様、こんばんは。

ご訪問&コメントありがとうございます。
初めまして。

嬉しいお言葉♡嬉しいです!

どちらにも幸せに・・・確かにそうですが、ちょっと濁してしまいましたね(笑)
類つく、総つくのクセにこの流れはマズかった、と反省しております💦

でも何とか希望に満ちた終わり方にしたいと・・・(出来るのか?)思っています。
あと数話ですが、宜しくお願い致します。

2019/11/04 (Mon) 23:43 | EDIT | REPLY |   

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