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牧野の腕の中で眠っている天使・・・覗き込んだらその愛らしい口元が少しだけ動いた。
まだ小さすぎるからなのかな・・・俺に似た柔らかそうな髪の毛をそっと触ってみた。


「どうして驚かないの?・・・類、知ってたの?」

「知らなかったよ。総二郎が最近ここに来たんじゃない?動画を送ってくれたんだ・・・ちょうど今みたいに
牧野がこの子を抱いて散歩しているところ・・・その時はびっくりしたよ」

「・・・そうだったの。ごめんなさい。西門さんに口止めしたのは私だから・・・西門さんがこの子を見たいって
急に来たからどうしたのかと思ったのよね」

「まさか、総二郎が言った牧野の大変だったことがこれだとは思わなかったよ」

「西門さんが、もう類に会う決心はついたか・・・なんて言うから、会いたいなぁって・・・思わず言っちゃったの。
長いこと我慢してたからつい言葉に出たのね。動画だなんていつ撮ってたのかな・・・気がつかなかったよ」


言ってくれたら良かったのに・・・なんて事は言えない。
すごく悩んだだろうから。俺の事を考えて1人で頑張ろうって思ったんだろうから・・・。
俺も前から聞かされてたらこんなにゆっくりなんてしてなかっただろう。
どんな大騒ぎになったってすべてを放り出してここに戻ったかもしれない。
色んな準備もせずに、亜由美のことも放ったらかして・・・そして最悪失敗していたかもしれないから。


「石垣島にずっといたんだけど、この子が生まれてから竹富島に戻ったの。もう花沢の人もいなかったから
勝手にここに住んでしまったの・・・ごめんなさい」

「牧野は悪くないよ・・・ここにはもう住めないと思うけど、今からは俺がいるから心配しないで?」

俺はもうこの家の持ち主じゃないから・・・でも3人で住むならどんなところでも平気だよね・・・。



「ねぇ・・・抱いてもいい?」

「うん・・・。はい、落とさないでね。まだ1ヶ月なんだから・・・」

「1ヶ月・・・そうなんだ。うわっ・・・すごく軽いんだね。」

なんて柔らかい肌をしてるんだろう・・・そしてすごく甘い香りがする。
俺が抱いてるからなのか、牧野はまた泣いている。俺はこの子を抱いたまま、もう一度牧野を抱き締めた。


「名前はなんてつけてくれたの?・・・男の子?女の子?」

「名前は雫・・・。女の子だよ」

「雫?・・・可愛い名前だね。女の子なんだ・・・ね、どっちに似てると思う?やっぱり俺かな・・・?
動画を見ただけじゃわかんなかったんだよね」


雫を抱いたまま牧野と並んで砂浜に座った。

「花沢を出てきたよ。もう、あそこには帰らない。これからは俺が働いて雫を育てるんだ。・・・楽しみだね!
この子にはどんな未来があるんだろう・・・夢が詰まった未来にしてあげたいな」


「花沢を出たって・・・大丈夫なの?」

「弁護士を通して書類も作った。俺は花沢の財産もすべて放棄したんだ・・・いいんだよ。すっきりしたから」

「私がそうさせたのね・・・類は本当にそれで良かったの?」

1年前みたいに牧野は少し悲しそうに足元の星の砂を掬った。同じように風にそれを飛ばしながら呟いた。

「俺がそうしたかったんだよ。これで俺も好きな事が出来たら言うことないんだけどね。これでもちゃんと考えたんだ。
知り合いの大学教授に天文学をしている人がいるから、その人に頼んで今度K天文台のキャンパスに行ってくる。
上手くいったらそこで働けると思うんだ。牧野・・・応援してくれるよね?」

「もちろん!類の夢ですもの・・・二人で応援するよ!」


少し風が出てきた。
ここは南の島だけど季節で言えば今は冬・・・もちろんここは寒くはないけど雫が風邪を引かないようにと部屋に戻った。
抱いていると暖かい・・・まるで幸せが詰まったかのような雫を大事に抱えて、そしてベビーベッドに寝かせた。

牧野はすっかりママの顔になっている。随分と慣れた手つきでおむつを替えてベッドを整えて・・・
雫の世話を済ませて俺の隣に戻ってきた。
両手を広げた俺の胸に、牧野はまっすぐ入ってくる・・・そして強く抱き締めた。


「ありがとう・・・ずっと待っててくれて・・・」

「1人じゃなかったもの。西門さんが随分助けてくれたわ。和代さんって人もずっと私を守ってくれたの。
だから頑張れた・・・でも、本当は寂しかった・・・すごく会いたかった。」

「ごめんな・・・でも、頑張ってくれたんだね。本当にありがとう・・・」

牧野を抱き締めたまま何度もキスをしてお互いを確かめ合った。
懐かしいこの島の風の匂いがする・・・もうすっかり陽が落ちて空がその色を変えようとしている。
もうすぐ俺が見たかった満天の星空の時間が来る。


「類の相手の人は・・・大丈夫だったのかしら。西門さんから話しは聞いていたの。同じような立場の人だって。
ちゃんと幸せになれるかな・・・」

「どうだろうね・・・。2人が会う前にフランスを出たからわかんないけど。でも上手くいくんじゃないの?
本気で愛し合ってたらね」

久しぶりに牧野の手料理を食べて、お互いの1年間を話し合った。
総二郎の救出劇や島での暮らし・・・つわりが酷かったこと、病院で産まずに自宅で産んだこと・・・。
亜由美と回りを騙しながら婚約者のフリをしたこと、亜由美が落ち込んで結婚に踏み切ろうとしたこと。
もう今となっては少し冗談を交えて話せるけど、お互いに辛かった1年間だったと・・・。


雫がよく眠っていたから、2人で星を見に外へ出た。

今日は満月・・・牧野が見たかった月の道が目の前にあった。


「すごく綺麗・・・東京でもフランスでも星空なんて見なかったな・・・」
「私は毎日見ていたよ。でも、類がいないから全然わかんなかった。どれが星座なのか全く覚えられなかったよ」



「あ・・・!ごめん、忘れてた!」
「え?なに?・・・どうしたの?」

いきなりポケットから出したもの・・・箱にすら入れてないプラチナの指輪を牧野に差しだした。
は?って顔した牧野は次の瞬間吹き出した。


「フランスで唯一買ったものだよ?」

牧野の左手薬指でそのプラチナの指輪が月の光を浴びて輝いた。


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Comments 6

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2017/06/09 (Fri) 05:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます

えみりん様、おはようございます🎵

そうなんですよ。決めておりました❗( *´艸`)
パパそっくりの女の子❗
黒髪で切れ長の瞳だと恐いけど。

Plumeriaもホラー&サスペンス&コメディだけじゃないのよ?ってわかっていただけるかしら?ふふふ❤

あゆみちゃん(綾乃ちゃんて書きそうになった!)はきっと大丈夫。花沢は今回は無視❗します。いや、ホントなら
大問題で捜索が始まりすぐに捕まりますよね❗
そしたらサスペンスが始まりますもの。

あと2話になりました。
最後まで宜しくお願いいたします🎵

2017/06/09 (Fri) 07:00 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/09 (Fri) 09:28 | EDIT | REPLY |   
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2017/06/09 (Fri) 10:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは🎵

可愛いでしょ?初抱っこ❤
この話、いつの間にこんなに微笑ましい内容に
なったんだろ。初めは暗かったのに~。

花沢の家は忘れましょう‼
現実に起きたらそりゃ、捜索されて連れ戻されて仕事は妨害されるなんて悲劇的なことになりそうだけど。
そして、このお話もいきなり明日から悲劇になったら私はまた類君ファンからクレームの嵐ですわ!

ここはそっと終わらせしまいます。

え?また、サスペンスにしたい?

私はいいけど⁉…読者さんはいやですよね?

今日もありがとうございました🎵

2017/06/09 (Fri) 12:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは✨

花沢は忘れましょう‼
えぇ!わかってますとも!絶対、花沢が諦めないっていうのは。いくら公正証書を作ろうとも実は逃げられないんですよね~❗

ただ、このお話の中では忘れましょう🎵
マジで昼ドラが始まりますからね。雫ちゃんも危ないよ?
ってなるし。

総二郎、ここでは( 笑)カッコいい⁉
いや、どこかでカッコ良ければ私も嬉しいですよ。

今日もありがとうございました🎵

2017/06/09 (Fri) 12:32 | EDIT | REPLY |   

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