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plumeria

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コートヤードを2人並んで出ると何処からともなく冷たい視線が降り注がれる。

終わった事とは言え道明寺司を恋人にしていたつくしが、今度は花沢類を隣に置いて歩く姿をこの大学の女生徒達が快く思わないのは当然のことだった。
しかしそれが陰湿な行為に及ばないのは、類のみならず西門総二郎、美作あきらといった司の親友が揃いも揃ってつくしを守っているから。

彼等に敵意を持たれないために、高等部の時のような虐めは表面上起きなかった。類達に見えない所での無視や些細な悪戯などは相変わらず続いていたが、つくしがそれを気に留めなかっただけだ。

ただもう一つ・・・学生達をモヤモヤさせる理由があった。


「牧野、いいの?」
「何が?」

「俺と並んで歩くところ・・・あいつに見られたらヤバいんじゃないの?」
「あぁ、あはは・・・大丈夫だよ。今日は来ないと思うから」

「・・・俺は良いけどさ」
「・・・私も問題ないって。あれから喧嘩なんてしてないから」


類の言葉を聞いて桜の花びらを包んだハンカチを強く握ってしまったため、慌てて広げて傷付けなかったかと確認するつくし。そんな彼女に類は立ち止まって切なそうな目を向けた。
「うん、大丈夫・・・」、その言葉は桜の花びらだったのか、類の言葉に対する答えだったのか・・・。

それまで明るかった表情を少し曇らせたが、つくしはまた類の横に並んでお互いの教室まで歩いて行った。




つくしには半年前から付き合い始めた恋人が居た。
仙道 篤・・・類よりも3歳年上で大手印刷会社勤務、つくしとはバイト先の花屋で知り合った男だった。

母の誕生日のために真っ赤な顔をして真剣に花を選ぶ彼にアドバイスして、可愛らしいブーケを作ったつくし・・・その笑顔に一目惚れした篤が告白して始まった恋だった。

秋の終わりにスタートした恋は丁度イベントの始まる頃と重なった。
クリスマスにつくしの誕生日、新年にバレンタイン・・・篤とつくしの恋は次から次へと来るイベントに流されてどんどん加速していくかのように見えた。


そして2月のバレンタイン。
毎年のように渡す類、総二郎、あきらに加え、父親や弟にも渡すために手作りのチョコケーキを作った時のことだった。

『うわっ!今までで1番の出来かも!』

つくしが大喜びでケーキをカットしてセロファンで包み、綺麗にラッピングして大学に持って行くと、そこには篤の姿があった。
印刷会社で営業をしている篤の顧客の中に英徳大学があったからだ。


『・・・つくし?手に持ってるものはなんだ?』
『これ?あぁ、友達へのバレンタインチョコ。ちゃんと篤さんにもあるよ?』

『・・・俺以外の男にも渡すのか?』
『え、だってこれはそう言う意味じゃないもん』

『俺はそう言うのは嫌いだ!それを寄越せ!』
『えっ?!だって・・・やだ、これは頑張って作った・・・』

『そんな所で頑張ってどうするんだよ!いいから渡せ!』
『いやぁっ、だめぇ!』


『牧野・・・!!』


キャンパス内での騒ぎを見付けてつくしを助けたのは類。
腕を掴まれ手荷物を奪われそうだったつくしを篤から引き離し、スーツ姿の彼を殴り倒した。その光景は多くの学生に見られ、あっという間にギャラリーか彼等を取り巻いた。

つくしを背に回して庇う類に、唇を切って血が滲んだ篤・・・つくしはガタガタと震えてその場に座り込んでしまった。


『間に入らないでもらえるかな・・・この子は俺の彼女なんだから』
『・・・・・・え?』

『・・・・・・』

『君・・・まさかそのチョコを受け取る男なのか?』
『チョコ?』

『違う!この人はそんなんじゃない・・・もう仕事に戻って、篤さん・・・ここに出入り出来なくなるよ?』

『・・・チッ、つくし、今日の晩は部屋に行くからな!』


スーツの乱れを直して口元を拭い、類を睨みつけて篤は大学から出て行った。

地面に落ちてしまったケーキの箱・・・折角作ったチョコケーキは無残な姿になっていた。それを拾って両手で抱え、つくしは鼻を啜った。「あ~あ、凄く綺麗に飾ったのになぁ!」と、わざと明るい笑顔で類に笑いかけたが、その目には薄らと涙が光った。

そんなつくしに片手を差し出した類だったが、つくしはそれを取らずに立ち上がり「ありがとう」と礼を言って彼の前から走り去った。


それを知ったからと言って類の気持ちが変わることはない。
新しい恋がつくしを笑顔にしてくれるのなら、自分はそれを応援してやれる・・・そう思っていた。

だが、その日以降つくしの笑顔が少なくなっていった事を類は気付いていた。





「牧野、あんた・・・幸せなの?」

「え~?あはは!うん・・・幸せだよ」


幸せだよ・・・その言葉だけ俯いて答えたつくしを、類は両手をポケットに突っ込んだまま見ていた。
ポケットの中で固く握られた拳、それをつくしに見せる訳にはいかなかった。






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2019/05/24 (Fri) 18:54 | EDIT | REPLY |   

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