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自分の夢を仙道以外の人間に初めて話したつくしは少しだけホッとしたように笑った。
誰かが胸の奥に抱えていた不安を知ってくれれば嬉しい・・・そんな気持ちからだろうか。

そして仙道にも伝えていない悩みを口に出した。


「でもね、私って国文科でしょう?この夢とは掛け離れた分野なの。夢を叶えるならやっぱりこの大学じゃ無理かもしれない。だからってこの大学の美術デザイン科なんて学費が払えないから無理。そこには特待生の枠は無いから」

「退学を考えてるの?」

「・・・でも、頑張って入ったからなぁ!それはそれで惜しいのよね、欲張りだけどさ」

「そういう専門学校があるんだ?」

「うん、あるよ。アクセサリーデザイナーって特別な資格は要らないの。デザインに関する基本知識、制作技術、マーケティングって言うの?それを教えてくれる学校。そこだとこの業界への就職支援もあるんだよね。
まぁ、問題は感性ってヤツ?えへへ、これは自分で磨かなきゃいけないけどさ」


少し照れたように鼻をすするつくしを、類が苦笑いしながら片肘ついて見ている。

そんな時間はあっという間に過ぎてしまい、午後からの講義を1時間さぼってしまって2人だった。それは卒業出来るかどうかなんて気にもしなくていい類とは別に、つくしには「勿体ない」事だった。
特待生として在籍しているつくしには出席そのものが重要・・・「レポート提出で取り戻さなきゃ!」と眉を顰めた。


「でもさ、相談が俺って残念だったね」
「なんで?なんで残念?」

「見たら判るでしょ?俺、アクセサリーなんて殆ど着けないし、その業界のことも詳しくないから」
「あはは!そんな部分は気にしないよ」

「どんな部分で俺だったの?」
「へっ?あぁ・・・それは、その・・・」


この質問がつくしの女性としての部分を困らせるだなんて類は考えもしない。

自分がつくしに対して恋心を抱いていても、相手に同じ感情を強く求めない。
セーブしているわけではないが、つくしの笑顔が見られればそれが自分にとっても幸せだと思ってる彼は、意味深な言葉でつくしの気を引こうだなんて思わないからだ。
純粋に彼女の進路について相談に乗るのなら総二郎やあきらの方が断然向いている、そう思っただけだった。


「に、西門さんや美作さんだとね、なんて言うかなぁ・・・私が決める前にあの人達が用意しそうなんだもん」
「あぁ・・・、ここで働けとか、専門家を準備したぞ、とか?」

「うん。気が付いたら都心のド真ん中にお店が出来てるかもしれないじゃない?『ほら、牧野ここで作れよ』ってさ!」
「あはは!そうかも」


「・・・私が相手にしたいのはセレブな人達じゃないの。そんな人達はすっごい金額出して、すっごい大きくて光り輝くネックレスを特注するでしょ?でもさ、次の年には違うものを買うの。大金叩いた豪華なアクサセリーでも数回で出番がなくなるとかってよくあるでしょ?それは嫌なの・・・大事にしてくれて、特別な時には身につけてくれる、そんなものを作りたいの」

「あんたらしいね・・・」

「・・・そ、そお?だからね、詳しすぎる人だと先走っちゃいそうで怖かったの。だ、だから花沢類に聞いたのよ、それだけ!」


「・・・悪かったね、詳しくもなくて先走ることも出来なくて」
「ああっ!そうじゃなくてね、そうじゃなくて・・・」


類が拗ねたのかと思ったつくしは慌てて彼の方に向き直り、その服の端を掴んでしまった。
そうしたら類がクスッと笑う・・・間近で見てしまった薄茶の瞳に急に顔を赤らめて、パッとその手を離してしまった。

「そろそろ行こうか・・・」、類がそう言うとつくしも黙って立ち上がり、パンパンとスカートを叩いた。


屋上の重い扉を類が開けると、その腕の下をつくしが潜って通り抜ける・・・これもいつもの事だった。
ギィッと鈍い音を立てて閉めると外からの光は遮断され、一瞬その踊り場が暗く感じてつくしは毎回ドキッとする。でも類は気にもせず階段を降り始めて、つくしは小さなため息を漏らしながら彼の後を追った。


なんだ、今日もこれで終わりかな・・・つくしの心の声だ。


数段降りた所で足を止めたのは類。
そしてくるっと振り返ると、自分と同じ高さの所に顔があるつくしの目を見つめた。


「うわっ!な、なに?」

「・・・あんたの思うように進めばいいと思う」

「・・・は?」

「自分の夢・・・諦めることはないよ。時間が掛かっても、誰かに反対されてもいいじゃん?1度諦めた夢にもう1回挑戦しようと思っても、その時には今と同じエネルギーが有るかどうかは判んないよ。
牧野がこの大学に居ることが正解なのか、新しい場所で学んだ方がいいのか・・・もし、専門的に学ぶ方が良くて、この大学を出て行くのなら俺は反対しない」

「花沢類・・・私がこの大学に居なくてもいいの?」

「そう言う意味じゃない。大学に在籍することで繋がってる訳じゃないでしょ?そんな事言ってたら俺、来年の春には卒業してるし」



階下の方が騒がしくなり、学生達の声が上の方まで響いてきた。

その雑音が総て掻き消されるかのようにつくしの耳には類の言葉だけが残った。





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2019/05/27 (Mon) 12:36 | EDIT | REPLY |   

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