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その後一度東京へ戻って、以前から連絡を取っていた大学の教授に会った。
そしてその教授に紹介されたK天文台の職員として都内のキャンパスで働くことが決まった。

東京に戻った時にまず初めにしたのは牧野と入籍して、雫を実子として認知することだった。
2人は煩い東京には連れていかずに、あのまま島で暮らすことにしている。
花沢の別荘はもう使ってはいない。すぐ近くに空いていた家を探してそこに移った。
雫には自然の中でおおらかに育って欲しかったし、つくしももうすっかり島の人間になっていたから・・・。


「俺はしばらく東京とこの島を往復する生活になるけど大丈夫?1人で困らない?」

「何の心配してるの?1年間ここで生活してるのよ?それに週末だけでも類が来てくれるんなら
全然問題ないよ・・・連絡だって出来るんだし。私、携帯持つの1年ぶりなんだけど、使えるかしら・・・」

「絶対に毎日、雫の報告だけはしてよ?寝てる顔でもいいから!」
「・・・はいはい・・・わかったわよ」


都内にあるそのキャンパスで俺がしたかった天文学に関する仕事・・・初めは普通の職員でもかまわなかったが、
すぐに研究室の方に配属された。
ここでは憧れていた大型赤外線望遠鏡のデータ解析をする・・・それを関係業者に提供できるようにするのが
与えられた仕事だった。

つくしとは毎日がテレビ電話での報告・・・雫の僅かな成長ぶりを見ては感動していた。

『ほら・・・首が座ってきたの!抱っこしやすくなるわよ?』

「そうなんだ!お風呂に入れやすくなるって事?次に帰ったときは俺でも出来そう?」

『そうだね・・・出来ると思うよ!ずっと入ってそうだけどね!』

冷たいディスプレイの中なのに、つくしと雫はとてもあたたかく感じた。



そんな慌ただしい生活を続けて3ヶ月、上司と教授に呼ばれた。
その内容は、ハワイの天文台に欠員が出たためそこに行かないか・・・というものだった。

「ありがとうございます!・・・妻を連れて行けますか?」

「あぁ、もちろんだよ。そんなに毎週島に飛んでいかなくても良くなるぞ?早く奥さんに知らせてあげなさい。
出発まであまり時間がないから、今日はもう帰って支度に入りなさい」

大学からの恩師も俺の夢が叶ったことを心から喜んでくれた。

「君は家業を継ぐと聞いたときは残念だと思っていたが、こうやってこの仕事を選んでくれたことは私としても
本当に嬉しかったよ。君を動かした人に会ってみたいものだ。なんといってもあの家を出る決心をさせたんだから・・・
大事にしてあげなさい。そして、何より君の幸せを願っているよ」

「教授・・・本当にお世話になりました。ぜひ、私の家族に会いに来て下さい。向こうで待っていますから・・・」

沢山の人に背中を押されて俺は夢のスタートラインに立った。



竹富島に戻ってすぐにその話をつくしにしたら、ものすごい勢いで俺の首に飛びついてきた。
真っ赤な顔をして、もう半分は泣いてるみたい。

「すごいじゃない!夢ってね・・・叶えられない人の方がすっごく多いのよ?やっぱり牡羊座なのね!
おめでとうっ!もちろん喜んで私も付いていくよ!」

「ありがとう・・・!でも、苦労かけるよ?多分・・・」

「あら!貧乏なら慣れてるもん。私を誰だと思ってるの?雑草のつくしよ!きっと類よりは逞しいわ!」

俺の首にぶら下がったまま嬉しそうに喜んでくれる・・・わかってるのかな。
確かに俺の夢だったけど、それにはつくしがいなきゃ完成しない夢だったって事・・・。
それに今は天使のおまけ付きなんだから・・・。

「星の砂・・・本当は持ち出し禁止なんだけど少し持っていこうよ。もうここへは戻ってこないと思うしさ・・・」

「そうね・・・明日になったら出来るだけ沢山集めようか・・・小さなビンに入れて宝物にするの!」


******


次の日、2人で砂浜に座り星の砂を集めた。雫は日よけをしてすぐ側に寝かせている。
下を向いて砂を集めながらつくしはこれからの話しをする。


「ハワイってどんなところかしら・・・海は近いの?」

「残念だけど天文台は山の上だね。多分、用意してもらえる家もそんなに海の近くじゃないと思うよ。
でも、休みの日には連れて行ってあげるよ。星の砂はないと思うけどね」

「じゃあ、また毎晩、類の星の勉強会が始まっちゃう?」

「日本と見える星が違うから、俺にもすぐにはわかんないかな・・・でも、教えてあげるよ」


雫が泣き出した・・・作業をやめて雫を抱っこするのは俺の役目。
雫は俺が抱き上げると必ず泣き止むから。

「ホントに親ばかね!いつかその子にも彼氏が出来て、類なんか相手にもされなくなるのよ?」

「うわっ・・・ヤキモチ焼いてるの?自分の娘相手に?・・・相変わらず可愛いんだね、つくし」

バカじゃないの?って俺の背中を叩いたつくしは赤い顔して部屋に戻っていった。

雫の大きな瞳が俺を見つめている。いつか見たことがあるね・・・つくしの瞳の中の自分を。
今日は雫の瞳の中に、幸せそうに笑う自分の姿を見ている。
早足で戻っていくつくしの後を、雫を抱いてゆっくりと歩いて帰った。




この後、3人で一度東京に戻った。
それからハワイに向かう準備をする。

東京にはいくつか俺名義の不動産があったけど、1番気に入っているこのマンションを残して後は処分した。
それだけで本当は生活するのに十分な預金にはなったけど、それには手をつけずに自分たちの力で雫を
育てると決めていた。

「ねぇ・・・久しぶりすぎてわかんないよ!こんなに人がいたっけ?」

「ぷっ!・・・いたよ、昔から。一日に数人しか会わない生活してたからそう思うだけだよ。
ハワイはここよりも静かだから心配ないよ」



俺たちの旅立ちまではあと1週間となった。

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ストロベリームーンの日に終わりたかった!
明日が最終話です!
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Comments 3

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2017/06/10 (Sat) 05:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます

えみりん様、おはようございます🎵

あはは!
なかなか上手いなぁ!そうなんですよ。住めば都ですよ。
写真もそうなんです。
私はハワイは行ったことはないですね。

2017/06/10 (Sat) 06:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます

えみりん様!途中で送信しちゃいました!びっくりした❗

ヨーロッパには何回か行ったんですが、毎回トラブルがおきるんですよ。
イタリアに行った時は向こうでカメラが壊れて写真がとれなかったし。今みたいにカメラ付携帯の無いときだったからショックでしたね。

スイスでは危うく雪山で遭難しかけました。
フランスでは発砲事件があったし。

日本が一番ですよ。
でも、行きたいとこは沢山あります。
お話に書いて、つくしちゃんに行ってもらいます!

今日もありがとうございました‼

あ、月は思ってたほど赤くなかった❗
でもちょっと幸せな気分になりました。

2017/06/10 (Sat) 06:31 | EDIT | REPLY |   

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