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「どっちにしようかなぁ・・・やっぱりこっちかな。いや、花沢類はこういう色が好きかな・・・」

つくしは明日の為の服を選んでいた。
バイト代は生活費でギリギリなのに、それを切り詰めてでも可愛い服を買いたい・・・その思いから滅多に行かない表参道に足を向けていた。

「お洒落するなよ?汚れるだけだから」・・・類の言葉が頭を過ぎるから余計悩んでしまう。
わざわざ買ったと思われたくない。かと言って気付いてもらえないのも淋しい・・・これほど服を選ぶのに迷う事があるだろうかと思うぐらいつくしは何枚もの服を手にもってウロウロしていた。


考えてみれば類から「その服可愛いね」なんて言われたことがない。
だから彼の好みがどんなものかつくしには判らなかった。
カジュアル・ストリート系が好きなのか、やっぱり上品なブランド系が好きなのか、暖色系なのか寒色系なのか・・・考えれば考えるほど判らなくなって頭がこんがらがった。

「まさかフリフリが好きとかSexyな物が好きとかじゃないよね?・・・花沢類だもんね?」


最終的には財布との相談・・・選んだのはソフトデニムのサロペットパンツ。ゆったりとした長袖だけどパンツは膝上と言う、まるで子供みたいなものだけどつくしは一目惚れしたのだ。
それにボーダーラインのサマーセーターとワイドパンツの組み合わせ。それを選んでドキドキしながらアパートに帰った。


そしてまた部屋で悩んでいた。
買ったものを並べてどちらにするか・・・1つしか買わなければ悩まなかったのに、これを着た自分と横に立つ花沢類の姿を想像してしまう。
その上持っている服の中で自分が気に入ってるものも同じように並べ、そこまで多くはない枚数の中で組み合わせを想像しながら頭を抱え込んだ。

胡座をかいて腕を組み、目を閉じて眉間に皺を寄せ「やっぱこっちか・・・いや、この方が・・・」、と1時間経っても決められなかった。


その時に鳴ったスマホ。
こんな時に誰だ?と怒ったような顔でスマホを取り出したら、そこに表示された名前は「花沢類」。
つくしは慌てて通話をタップし、目の前に並べた服を掻き集めた。別に見られている訳でもないのに、何故かヤバい!と思ってしまったのだ。


『もしもし・・・俺、牧野、今いい?』
「ん?いいよ、アパートだから。どうかしたの?」

ハイテンションな自分の気分とは違う、類の沈んだような声に一瞬嫌な予感がした・・・もしかして行けなくなったのか?つくしは掻き集めた服を持つ手が緩んだ。


『・・・ごめん、明日行けなくなったんだ』
「・・・・・・あっ、そうなんだ?いいよぉ!そんなに落ち込まなくても。海は逃げないって!」

『うん・・・また行ける日にちを教えて?今度は俺が合わせるから』
「あはは!暫く土日はバイトだなぁ・・・いいよ、いいよ!だって花沢類のネックレスの材料でしょ?別に急がないじゃん?」


無理して笑ってみるが、つくしも言葉を出した後で唇を噛んだ。
確かに「デート」ではない・・・だが「特別なお出掛け」のような気分で心待ちにしていたつくしの落胆はかなり大きかった。それに実は無理矢理バイトを交代してもらって作った休日だったから。

「どうして?」と聞くのも彼女じゃないつくしには、その権利もないと言葉には出さなかった。


もしかしたら誰か他に・・・一瞬そう思ったが確かめるのは怖い。
次の類の言葉を待つ間、つくしはドキドキしながら買ったばかりの服を見つめていた。


『・・・お婆様が亡くなってさ』

暫くして類の声が聞こえた。


「・・・・・・お婆様・・・えぇっ!そうなの?大変じゃん、急いで行かなきゃ!何処なの?東京?」
『・・・静岡。今から行って来る・・・連休あけも大学には居ないと思うから』

「そんなの大丈夫でしょ・・・・・・淋しくなるね。仲が良かったの?」

『・・・あんまり会う機会がない人だったけど優しかったよ。病気だったのも判ってたけど、会いに行かなかったから・・・』

「今から会いに行ってあげなよ・・・きっとお婆様、喜ぶよ?車で行くの?事故・・・しないでね?」


『ごめんな・・・』、その言葉で電話を終えたつくしは小さなため息をついてスマホを手から離した。
急に出来てしまった連休最後の日・・・ポカンと穴が空いたような気分になったつくしは、ぼんやりと窓から空を見上げて雲を見ていた。

心の声が漏れてしまう・・・「行きたかったなぁ」
つくしの気持ちを慰めるかのように、雲はゆっくりと形を変えながら流れては消えて行った。


そしてまた鳴り出したスマホ、それに驚いて急いで手に持った!
だが表示されているのは仙道の名前・・・その瞬間につくしは現実の世界に戻った気がした。






類が静岡の屋敷に顔を出したのは高校入学以来・・・7年ぶりの事だった。
そこで礼服に着替え、静かに横たわっている祖母に対面した。

祖母はまるで寝ているかのように穏やかな表情だったが、生前最後に会った時に比べるとかなり小さくなっていた。
化粧をしてもらっているからやや赤みがかった頬をしているが、そっと触れてみるとやはりそれは既に血の通う人間の体温ではない。

やはり現実なのだと、母の時を思い出して胸が詰まった。


「・・・よく来てくれたな、類。聖司君は遅くなるそうだが・・・」
「お爺様、ご無沙汰してます。お見舞いにも来ないままお別れする事になり、申し訳なく思います」

「はは、今までよく持ち堪えたと思うよ・・・長い患いだったからな」
「・・・・・・」


長い患いだったのに来なかったのだな、と祖父に責められた気がした。

だが類にとってはこの土地は母の思い出が詰まっている場所・・・そして不思議と不安に駆られる場所でもあった。

それがどうしてなのか・・・。
今日も類は祖母への哀惜の想いとは別に、ザワザワとした胸騒ぎを感じていた。






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