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plumeria

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ゴールデンウィークが終わり、再び大学が始まった。
つくしはいつも通り1人でキャンパス内を歩き、次の講義にむかっていたが、その足取りは重かった。


電話で言われた通り、仙道はゴールデンウィークの最終日の夕方、つくしのアパートに現れた。
その手にはつくしが好きだと言った菓子箱と、硝子で出来たオルゴール。
小樽にあるオルゴールの店で選んできたと言われ、12月生まれのつくしに合わせて誕生石カラーの天使がモチーフだった。

『わっ、可愛い・・・ありがとう、あっちゃん』
『俺が選んだ物がこの部屋にあるのは嬉しいからさ。音、聞いてみてよ、綺麗だったから』

『・・・うん、何処かな、ネジ・・・』
『ここだろ、貸してみ?』


確かにオルゴールは可愛らしかった。
12月の誕生石、ターコイズに因んで綺麗な水色の天使・・・それに流れてくる音も素敵だった。ただ『俺が選んだ物がこの部屋にあるのは嬉しい』と言う仙道の言葉はつくしを縛り付ける。
ここは私の部屋だ・・・あなたの部屋じゃない、と言う小さな反抗心が胸の奥で芽生える。

それを顔に出さないように笑顔を作る自分が嫌いだった。




「・・・次の講義は・・・あぁ、1時間空いてるんだ!じゃあ・・・何か飲もうかな」

試験が近いなら図書館で勉強してもいいのだがそれは終わったばかり。
それなら少し贅沢しようかな、とカフェに向かった。

目の前に置かれたのはロイヤルミルクティー。
その淡いベージュ色、そして甘い香りはつくしをホッとさせ、それ以外には何も頼んでないのに凄く幸せな気分にさせてくれた。日々の生活がギリギリのクセに、これの値段は玉子が何パック買えるのか・・・瞬間そんな事を考えるのも自分らしいとニヤけながらゆっくり口に運んだ。


ほぅっ・・・と息を吐き窓の外を眺める。

すぐ近くの通路を仲の良さそうなカップルがじゃれ合いながら歩いているのが見えて、つくしは頬杖をついた。
あの人達は楽しいゴールデンウィークだったんだろうなぁ、なんていつになく僻みっぽい思考まで浮かんで、慌てて首を振った。

そしてもう1度カップを抱え込むと・・・今度は仙道の言葉が蘇って来た。


『今度両親が東京に来るからその時は空けておいて?一緒に食事に行くから』


何故、そんな言い方だったんだろう。
一緒に行くからって決定事項だったんだろう・・・普通は「一緒に行かないか」「会ってくれないか」って言う言葉が先じゃないの?

そんな風に思いながら残りのミルクティーを見つめていた。


「あれ?珍しいな、牧野じゃん?」

その声に驚いて顔をあげたら、つくしのすぐ横に居たのは西門総二郎。今日もその腕には女性から見てもドキッとするような妖艶な美人がへばりついている。
そして彼女はつくしを見ると鼻先で「くすっ」と笑い、つくしもそんな総二郎を「またか・・・」と呆れた顔で見上げていた。

かと言ってこの女性が総二郎の恋人だと言うわけではない。
総二郎は「悪いけどここまでな!」なんて言葉でその女性からスルリと腕を抜き、つくしの向かい側に座った。

当然鬼のような形相に変わった女性だが、ここで騒ぎ立てるのは英徳のお嬢様には考えられない事・・・それまでの淑やかだった動きを粗っぽく変えはしたものの、総二郎から離れて何処かに消えて行った。


「相変わらずだねぇ、西門さん。いつか刺されるってみんな言ってるのに」
「ははっ!この俺がそんなドジ踏むかよ!心配すんな、次に会った時には上手くやるから」

「まさか今日初めての彼女?」
「ん?まぁな。さっき大学の入り口でナンパされた」

「・・・はぁ、いいわねぇ、全身軽い人って」
「そうか?まぁ、今だけだからな!」


そう言われるとつくしも黙るしかない。
西門総二郎は茶道西門流の次期家元・・・類とは違うが彼もまた自分の将来を決められている1人。しかも未来を切り開くと言うより、これまでの歴史を背負わなくてはならない特殊な立場に居る男性だからだ。
それを知っているから総二郎の素行を今は咎められない・・・つくしは何処かで納得は出来ないのだが、ニヤニヤ笑う総二郎に負けて噴き出してしまった。


「お気楽だなぁ!でも楽しい時間も必要だもんね!刺されたら見舞いぐらい行ってあげるよ」
「はは!頼むわ。その時は牧野の友達の中で1番可愛い子を連れて来いよ?お前だけとか嫌だからな?!」

「うわっ!ひどっ・・・いいわよ、男友達連れて行くわ!」
「・・・あいつとなら来るなよ」


「・・・は?」


総二郎があいつと言ったのは仙道のこと・・・つくしはすぐに口を噤んだ。


「なんでだろうなぁ・・・ホント、牧野のそこだけは判んねぇ、俺」
「そ、そんな事言われても・・・私だって」

「私だって?やっぱお前、自分に嘘ついてんじゃねぇの?そう言うの、最終的にはバレるぜ?一生隠しきれる自信なんてないだろ?」

「一生って・・・そんなんじゃないけどさ。でも・・・西門さん、変な事聞いてもいい?」


総二郎はカフェの椅子に長い脚を組んで座り、両手を椅子の背凭れに回した格好でつくしを真っ直ぐに見た。
その時の表情はつくしの様子を察してか急に真面目になり、つくしは彼の目が自分の心の奥底を見抜いて居る気がしてドキドキした。

それでも聞かずには居られなかった。


「あのさ・・・西門さんが自分の両親に会わせたい人が出来たら・・・どっちに先に言う?ご両親?それとも彼女?」
「・・・は?」

「いや、あのさ、いきなり親に会わせる機会を作っちゃう?その・・・女性の気持ちを確かめる前にさ・・・」
「・・・・・・言われたのか?」

「・・・いや、そうじゃなくて・・・一般論?」
「今度両親と飯食うからバイトすんな、絶対来い、ってか?」

「そんな酷い言い方じゃ・・・あっ」
「言われたんだな?」


「・・・・・・・・・うん。もう決められてた・・・」


総二郎はガクッ!と顔を落とし、つくしは慌てて「どうしたの?!」と総二郎に手を伸ばした。
すぐに顔は上げられたが、その時の口元は如何にも「お前は馬鹿か!」と言わんばかりにヒクヒクとしている。それを見てつくしも手を引っ込めて「何よ!」と小さく呟いた。


「俺の家は特殊だから普通の家とは比べられねぇけど、少なくとも女の気持ちを考えずに動くことはしねぇな。
自分の恋人だろうが一個人だ・・・俺の所有物じゃねぇ。まぁ、俺がこんな台詞を言っても説得力はないかもしれないが、本気だったら1番初めに考えるのはうちみたいな家に来る女の事・・・そいつの気持ちだ。
それが判んねぇうちに親に会わせるなんて有り得ねぇけど?」

「・・・所有物?」


「そう・・・所有物ならそいつの意見なんて考えなくていいって事だ。牧野・・・お前、何か見失ってないか?」






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2019/07/02 (Tue) 06:33 | EDIT | REPLY |   

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