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plumeria

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「牧野・・・お前、何か見失ってないか?」

総二郎に言われて俯くしかないつくし・・・それは見失ってるというより見ないようにしていることだと自分で気が付いているからだ。

これまで誰も言葉にはしなかった。
自分でも自分らしくないと感じながら仙道の横に居た。
彼の横が自分の居場所なんだと・・・それが似合ってるんだと言い聞かせてきた。

そこに疑問が生じても気が付かないフリをしてきた。
この恋は「偽りの自分」が「夢の中」で築いているのだと・・・それを認めたら再び辛い恋心が目を覚ますから。


「・・・見失ってなんかないよ、ちゃんと判ってるって。あっちゃんが大人だからさ、ついて行くのが必死なんだよね」
「大人か?俺には自己中心的で我儘なガキにしか見えねぇけど?」

「そんな事ないよ!だってもう25歳だもん。会社でも期待されてる若手で、色んな事知ってて、多分言ってる事は正しいんだと思うし・・・ガキって言い方はないでしょ?」

「・・・ばーか!俺が言ってるのは実年齢じゃねぇよ。それに『多分言ってる事は正しい』って何だよ。それに牧野が納得してるんなら良いけど、そうじゃないから悩むんじゃねぇの?お前にはお前の意見があるんだろ?それを真っ正面からぶつけられないのなら止めとけ。お前はそんな人間じゃねぇだろうが!」

「そんな人間って何よ・・・」


つくしを見る総二郎の目が一段と厳しくなった。
総二郎が女性に対して本気の目を向けることは珍しい。普段から遊び人で数多くの女性を相手にしている彼だが、その誰にも自分の「素」を晒すことはなかった。

それは自分のテリトリーに彼女たちを踏み込ませないから。
だが、恋愛感情を抜きにしてつくしにはそこに入ることを許可していた。裏を返せばつくしには、遊びの女性に対して絶対にしない干渉をする事もある。

総二郎にとって、つくしは放っておけない女性なのだ。
その胸の奥にある感情が何なのか・・・総二郎もまた「これは恋愛じゃない」と自ら否定している状態だった。


「・・・司の時、最終的にダメだったかもしれねぇけどお前は全身でぶつかって行ったじゃねぇか。だから結果が別れだったとしてもお前は受け入れてるんだろ?その時の決断を後悔してねぇんだろ?
だけど今はどうよ?そいつのやり方に不満があっても言わずに従ってるから、自分の心が迷子になってんじゃねぇの?」

「・・・そんなこと・・・」

「そうやって下向いて俺の目も見れないようじゃダメだな。無理矢理歩こうとしねぇで立ち止まってみ?人生振り返るなって言うヤツもいるけど、迷ったら振り返るのも有りだぜ?」


総二郎の言葉はつくしの痛い部分の中心に突き刺さったが、不思議と怒る気持ちにも悲しい気持ちにもならなかった。
逆に「ありがとう」と小さく呟いて、カップのミルクティーを飲み干した。

仙道とは話し合ってみる・・・そう総二郎に告げようと顔をあげたら、彼の後ろから近づいてくる類の姿が目に入った。


「あっ・・・」
「どうした?」

つくしの驚いた表情に、総二郎も後ろを振り向いて・・・そしてニヤッと笑って席を立った。
「選手交代!ってヤツか?」なんて戯けた台詞を残し、仏頂面で歩いてくる類の方に向かう総二郎。

そしてすれ違う時に軽く類の肩を叩き「じゃ、あとは宜しく!」・・・つくしはその言葉にも焦って顔が真っ赤になった。
「あとは宜しく」って言われても仙道の相談など類に出来る訳がない。ミルクティーもなくなったし、どうしようかとオロオロしている間に総二郎が座って居た席に類が腰を下ろした。

でも何も言葉はない・・・類の機嫌の悪さはその場の張り詰めた空気で伝わってきた。


「・・・・・・・・・」
「お、おはよ、花沢類」

「・・・何かあったの?凄く真剣だったね」
「は?真剣って・・・私が?そんな顔してた?」

「・・・総二郎にも進路の相談してたの?」
「あっ、違うよ!と、友達の相談?!友達がさ、彼氏の親に会うって言うから・・・そういう時の男性側の真意って言うか、その・・・会わせる意味って何だろうと思って聞いてたの。それだけ・・・うん、それだけだから!」

「・・・ふぅん」

「・・・・・・・・・はは、怖い、花沢類・・・」


つくしの下手な演技など類に通用するはずもなく、類はすぐにその意味を理解した。

仙道が動いた・・・それは次に何をしようとしているのか。
それを悟った瞬間に、さっき総二郎と会っていた事などどうでも良くなった。


動き出したら早いのかもしれない。そして今のつくしは危うかった。
このままだと本当に攫われてしまうかもしれない・・・類の中に焦りが生まれた。


「その友達、どうするんだろうね・・・」
「ど、どうするんだろうねぇ・・・私が決める訳じゃないから」

「総二郎、何だって?」
「・・・えーと、先ずはお互いの気持ちだろうって」

「でも、友達とその彼氏は真剣なんだよね?」
「・・・・・・どうかな。友達は・・・少し迷ってるみたい。まだ気持ちは迷子・・・なのかもしれないって言ってた」


その話し方は友人の心配なんかではない。
自分の事だから類の目を見ながら言えない・・・つくしは空になったカップに視線を向けたまま言葉を出した。そのカップの少し向こうには類の指が見える。
類の長い指先がテーブルの上で組まれているのを視界の端に入れながら、息をするのにも緊張していた。

ただ、類が自分を見ていることには気が付いていた。
何処か心の内を見透かされて居るような気がして、余計自分の指先が震える。それをギュッと握って隠したが、類がその小さな仕草を見逃すこともなかった。


「それなら会わない方がいい。後戻り出来なくなるかもしれないから」
「・・・花沢類?」

「どんな状況でも後戻りって出来るんだけどそれはその人次第だから。たとえばウエディングドレス着て教会に行ったとしてもそこで回れ右は出来る。でもその時は凄いエネルギーが必要なんだ。
話が進めば進むほど引き返す勇気が要る・・・だから気持ちが100%前向きじゃなかったら会わない方が賢明だと思う」


類の目はつくしの目を真っ直ぐに見ていた。





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