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plumeria

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それから10日後・・・類と海に行く日が近づいた。
そしてアパートの部屋では眉間に皺を寄せ、胡座をかき腕を組み・・・「恋」とは無縁に見えるつくしが頭を抱えていた。


「今度こそだわ!どっちにしようかなぁ・・・」

再び始まったつくしの服選び。
あの時に買った服をもう1度並べ、実はこの2週間の間にも一目惚れした服を買ってしまった。
目を閉じて思い浮かべるのは類の横に立つ自分の姿・・・勿論類に負けずに、なんて事は思わない。少しでも「お似合い」に近づきたいと言う乙女心がつくしを悩ませていた。

ソフトデニムのサロペットパンツ・・・やはり日焼け防止の為には長袖がベストか。それならば膝上というデザインは止めた方が良いのか?
ボーダーラインのサマーセーターとワイドパンツの組み合わせ・・・でも海だから波打ち際で遊びたくなったら長いズボンは邪魔か?


「う~ん・・・あの時はこれで決まりだと思ったのになぁ・・・こっちにするか!」

最終的に決めたのはサックスのシフォン2枚重ねのロングブラウス。
透け感があってこの季節には丁度いいと店員に言われ、奮発して買ったものだ。それに紺色のカプリパンツ。
ふんわりしたトップスから細身の膝下パンツでほんの少し大人っぽく・・・と言われたものの、自分が着てみたら確実に子供の背伸びみたいで似合ってるのかどうかは疑問。

でもこれなら日差しも海も、動きやすさも良いのかもしれない。
つくしは「これ以上悩んでも新しい服はもう無理!」と叫んで、それ以外の服をタンスにしまい込んだ。


「あっ!ヤバいっ、講義に遅れる!」

今日の講義が遅いとは言え時計は10時・・・10時40分からの講義開始に間に合わせるためにはすぐに出掛けないといけない時間だった。

今日も桜のピアスを揺らしながらつくしはアパートの鍵をかける。
そしてダッシュでバス停に向かった。



大学の昼休み・・・何とか間に合ったつくしが講義を終え廊下からコートヤードを見下ろしたら、もう新緑ですら色が濃くなった桜の木の下で類が寝転がってるのを見付けた。
「相変わらずだなぁ」と思わず頬が緩む・・・そして急いで階段を降りてそこに向かった。




軽やかに自分に近づいてくる足音。
類はそれが彼女のリズムだとすぐに判るから、閉じていた目を薄く開き、校舎の通路から駆け寄って来たつくしの姿を確認して身体を起こした。

驚かそうと思ったつくしは「あれ?」って表情で逆に足を止める。
類はそんなつくしの惚けた顔が好きで、いつも「プッ!」と噴き出すのだった。


「なーんだ!起きちゃった。わっ!ってやろうと思ったのに」
「よく言うよ、そんなに元気よく走って来て。昼休み?」

「うん!もうお昼だよ・・・って言うか、いつから寝てたの?今日も講義受けてないの?」
「・・・今日は昼からしか講義がなかったのに間違えて早く来ただけだって」

「はぁ?!もうっ、意外とドジだよね、花沢類って!」
「・・・くすっ、まぁね」


こんな混雑したお昼時に類とカフェなどには行けないし、慌てて出てきたつくしはランチの準備もしていなかった。
そしてお決まりのように鳴くお腹の虫・・・その音を丁度目の前で聞いた類は、再び噴き出しながらベンチから立ち上がった。


「そっ、そんなに笑わなくてもいいでしょう?!生きてるんだからお腹ぐらい鳴るわよ!」
「あっはは!本当によく鳴るお腹だよね!」

「あーーっ!意地悪!でもどうしよう・・・花沢類、お昼は?」
「用意してると思うの?」

「全然思わない」
「・・・プッ!だよね。じゃ・・・外に出ようか?」


コートヤードの周辺から矢のように刺さる視線・・・つくしはそれを感じながらも類の少し後ろをくっつくようにして出ていった。

向かったのは大学内でも特定の生徒に与えられた監視システム付きの駐車場。
そこに入ると自動的に監視カメラに映ってしまうから、つくしは入ることを躊躇った。万が一それが花沢家に知られたら・・・そう思うと足が進まなかった。

勿論類もそれは理解している。
類としては父に知られる事など構わなかったが、つくしの気持ちはそうではない。恐怖心が残っていることは判っていたから同時に車に乗り込むような事はしなかった。

車を移動させ、少し離れた場所でつくしを乗せる。
そして車は大学を出て、すぐ近くにある小さなイタリアンレストランに向かった。




「うわっ!可愛いお店・・・良く来るの?」
「・・・たまにね。あんまり知られてない店だから1人で食べるには丁度いいんだ。静かだし、そのまま寝たこともあるけど」

「えっ!お店でも寝ちゃうの?」
「気分が良い場所なら何処でも」

そう言ってニコッと笑う類・・・今日もその不意に見せる無防備な笑顔につくしは真っ赤になった。

注文したのは類が「イカと茄子のペスカトーレ」、つくしが「キノコとベーコンのペペロンチーノ」。
それがテーブルに置かれると、今度は類がつくしの笑顔に見惚れていた。


「あっ、日曜の行き先だけどさ」

その言葉につくしがドキッと手を止める・・・今朝の事を見透かされたのかと思ったのだ。
お洒落するなと言われてるのに悩み続けているその日の服・・・無駄遣いまでして服を買ったこともバレたのかとヒヤッとした。


「千葉も良いと思ったんだけど、神奈川の海にしようかなって思うんだけど」
「・・・は?あぁ!うんうん、私は何処でも良いよ?全然詳しくないから」

「・・・なんで慌てたの?」
「へっ?!慌ててなんてないよ?うん、全然・・・晴れるといいねぇ!」

「変な牧野。雨だったり風が強かったら中止ね。海岸でも危険だから」
「うん、判った。その判断も花沢類に任せる。私はついて行くだけだね!」


「・・・ん、それでいいよ」


ついて行くだけ・・・極普通の会話なのに、そのひと言だけが何故か類には嬉しかった。





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2019/07/09 (Tue) 11:43 | EDIT | REPLY |   

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