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約束の日曜日は明日。
つくしは今日もバイトが終わってから黙々と作業をしていた。

作っているのはパワーストーンのブレスレット。
イメージは海・・・そしてさり気なく類の誕生石、アクアマリンを取り入れたものだ。

ラリマーとアクアマリンに水晶、それを専用の紐でマクラメ編みにするだけだが、全部が手作業でしかも2つ作る。自分のものと少し長めの男性用。
頭に浮かぶ顔は勿論仙道ではない。
ただ、これを渡す理由は「海に連れて行ってくれたお礼」・・・つくしは真剣な表情で丸く磨かれた石を針に通していった。

ラリマーと言う石の持つ意味はアクアマリンのそれによく似ている。
『愛と平和』を象徴するラリマーは心の奥にある怒りや嫉妬と言ったマイナス感情を鎮めてくれる。安らぎを生み出し避けられないストレスさえも軽減してくれると言われている。
『変化』に強い石で、新しい環境への不安をやわらげ、自分で目標を見つけられるという幸運をもたらしてくれる・・・作りながら「それは私の事かな?」なんて独り言を呟いていた。

つくしから見て類にはそのような心配は無用・・・だけど何かしらの迷いはあるような気はしていた。


「だからって石に頼らなくても大丈夫な環境だけどね~!私とは全然違うもんね!」

そう言いながら出来上がった一つ目のブレスレットを安っぽい蛍光灯に翳して、その輝きに目を細める・・・たとえ石そのものはランク的に下級クラスでも、自分の手で作り上げたものは何故か綺麗に見えた。

そして次は類のもの・・・ラリマーよりもアクアマリンを多めに取り入れ、つくしのものより3センチほど長め。
今度は少し進ませては手が止まった。
バランスや色合いが少しでも気に入らなかったらやり直し・・・自分のものは気分良く作ったくせにこっちは誰も見ていないのに緊張した。

最後の石を通して全体を眺める・・・「よし!」とガッツポーズでそれを握り締め、結んだ紐の端を始末して出来上がり。

小さなテーブルに2つ並べて自己満足の笑みを浮かべた。


その時に鳴った電話、つくしは明日のことで類から掛かってきたと思い急いでスマホを鞄から出したが、そこに出ていた名前は仙道だった。

あの日、両親に会わせると一方的に言われてからは出張が重なり本人とは会っていなかった。
恋人ではあるけれどメッセージは所在確認の類いのもので甘い言葉などない。一瞬出ることを躊躇ったが、そんな事をしたらアパートに来るかもしれない・・・目の前のブレスレットに目をやりながらつくしは通話をタップした。

そして待ち焦がれていたかのように元気な声を作った。
作らなければいけない状況に身体の何処かが痛むような気になりながら、それでも誰も居ない部屋で笑顔さえ作った。


「もしもし、あっちゃん?ごめんね、出るのが遅くて」
『もしかして出先なのか?つくし、誰かといるの?』

「ううん、アパートに居るよ?今日もバイトでクタクタだから今からお風呂に入るの」
『そうなんだ?でさ、悪いんだけど明日の昼間、時間作ってくれ。両親が急に来るって言い出したんだ』

「えっ・・・明日?」
『本当はもう少し先だったんだけど自分達の都合がついたからって言うんだよ。バイト入ってるんならすぐに誰かに交代してもらって、昼に赤坂の店に来てくれよ。場所教えるから』


明日・・・明日は類と海に行く約束をしているのに。
つくしは返事が出来ずに黙って仙道の話を聞いていたが、そこにつくしの気持ちも都合も確かめない恋人にだんだん腹が立ってきた。
頭に浮かんだのは総二郎と類の言葉・・・それを思い出している時、仙道の声はつくしの耳には入らなかった。


『そいつのやり方に不満があっても言わずに従ってるから、自分の心が迷子になってんじゃねぇの?無理矢理歩こうとしねぇで立ち止まってみ?人生振り返るなって言うヤツもいるけど、迷ったら振り返るのも有りだぜ?』

『気持ちが100%前向きじゃなかったら会わない方が賢明だと思う・・・そう友達に言っといて?俺からのアドバイス』



つくしはテーブルの上から出来上がったばかりのブレスレットを掴んだ。
そしてギュッと強く握り締め、1度唇を噛み締めた。


『・・・・・・の時間に空港に着くみたいだからさ、それから俺は両親をつれて・・・』
「ごめん、あっちゃん、少しいいかな」

『え、どうした?あぁ、着る服なんてそこまで気にしなくていいぞ?そこそこ可愛くしておけばさ』
「そうじゃないよ。私の都合ってどう思ってるの?そんなに簡単に変えられるものだと思ってる?バイトだから?」


バイトでは無いが流石に類との事は言えない・・・ここだけはバイトにすり替えてつくしは話を進めた。


『・・・なに言ってるんだ?そんな事は思ってないけど喫茶店だろ?そんなの誰でも出来るじゃないか』
「誰でも出来るからって簡単に交代してもらえないよ。それに誰も代わってくれなかったらどうするの?そんなの迷惑掛けるだけでしょう?」

『あ~・・・じゃ、病気になれば?それだと文句言われないだろう?』

「・・・仮病使えって言ったの?」


ゴクリと唾を飲み込んだ。怒鳴られるかもしれない・・・でも、もうこの状況で明日の笑顔は作れない。

この「恋」はここで終わるかもしれない。
それでも構わないとつくしは手の中のブレスレットを見つめた。


”力を下さい・・・自分の気持ちに素直になれる力を下さい”・・・・・・そう念じた後に大きく息を吸った。


「・・・私は明日のお昼は無理。今からシフト交代なんて出来ないし、仮病なんて卑怯な事はもっとできない。ご両親が上京するならあっちゃんが相手してあげたらいいんじゃない?」

『・・・何だって?俺の言う事が聞けないのか?』

「今回は聞けない。だって私があっちゃんのご両親に会う理由なんて無いでしょ?そんな話、私たちの間には何もない・・・私の気持ちを確かめてくれた事はないじゃない?それなら明日はあっちゃんが親孝行してあげなよ」

『つくし、何言ってるんだ?俺達は恋人だろう?』


「恋人でも確認は必要だよ・・・何をしても、何を言ってもいい訳じゃないでしょ?会ったらどうするの?何を話すの?私にはまだ判らない・・・ごめん、あっちゃん。そう言う事だから」

『つくし・・・お前!!』


そして電話を切った。電源も落とした・・・つくしは初めて仙道に逆らったことでドキドキしていた。
もしかしたら恐ろしい事が起きないだろうか、と。


それでも明日は類と会うんだ・・・そっちを選んだ自分に後悔はなかった。





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