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「珍しい・・・降りとくって言ったクセに」

類は時計を見ながらつくしの部屋の窓を見上げた。
いつもならこんな時間から活動しない類が自ら目が覚めた朝・・・つくしを連れて海に行く約束の日。

ただ貝殻を拾いに行くだけだと自分に言い聞かせながら車を走らせ、約束の2分前に到着。それでもつくしならもう出て待ってると思ったのに姿が見えないことに気が抜けてしまった。
何故か自分だけが浮かれていたかのような感じがして気恥ずかしかった。


「ま・・・いいけどね。海シーズンじゃないから道路も人も混まないし・・・」

類は運転席に深く身体を沈めて、スマホで今日行こうと思っている海岸の情報を調べていた。
その時にカンカンと階段を駆け下りてくる足音を聞いて顔をあげると・・・思わず「え?」と小さな声が出た。

あれだけお洒落なんかするなと言ったのにつくしのブラウスはふわふわしたシフォン素材。
しかも細い足を強調するカプリパンツは膝下で、その下は当然素足・・・ハイカットの白いスニーカーもヒールのあるものでまるでデートに行くような格好だ。

しかも大きく揺れるポニーテールは類の記憶では過去に数回・・・何年か前の花火大会の浴衣以来じゃないかと心臓だけが慌てていた。
それを表情に出さないのは得意技・・・『ヤバっ』と言う言葉も口から出さなかった。


「ごめんね!花沢類、待った?」
「・・・いや、来たのはついさっき。降りてなかったからまだ寝てるのかと思った」


助手席に乗ってきたつくしの胸元には星が光る・・・同じものを耳にも見付けた。
それが正面から照らす朝日に反射してキラリと光り、つくしの笑顔を大人っぽく見せた。


「あはは!早くに目が覚めて起きてたのよ。でも支度に時間掛けちゃって!それにほら、ご飯もさ!」
「えっ!食べたの?」

「勿論!あれ?花沢類、食べてないの?」
「・・・何処かで食べようかと思ってた」


本当はそんな事を思ってなかったのに、いつもと違うつくしに戸惑いを感じて会話をはぐらかす類。つくしを助手席に乗せると、彼女に気付かれないように1度小さく息を吐いてからハンドルを握り締めアクセルを踏んだ。
「何処の海岸?」と聞かれた時、今から走るルートが一瞬頭から消えてしまうほど隣の存在に胸が騒いだ。


「今から行くのは材木座海岸。多分桜貝が多いと思うんだよね」
「桜貝?うわっ!アクセサリーには丁度いいね!小さめじゃないとネックレスには邪魔になるし」

「・・・でも探したいのはヒメルリガイ。青いヤツ・・・1センチぐらいなら出来る?」
「うん。出来るけどそれを包み込まなきゃいけないから出来上がりはもっと大きくなるの。鬱陶しくなければ大丈夫だけどな・・・」

「・・・邪魔かも」
「はぁ?じゃあ桜貝にしなよ。色の薄いヤツなら男性でも気にならないし、それをコーテイングしてそのままネックレスに出来るし。小さなものだとレジンに沈めても厚みは出ないよ?」

「・・・・・・ヒメルリガイで。見付かればだけど」
「はいはい!自分のものだから好きに探してください!どうにかして作ってあげるから」

「くすっ、その方が好きなんでしょ?」
「・・・まぁ、ね」


途中つくしのひと言でコンビニに立ち寄り、少しばかりのお菓子とサンドイッチ、珈琲を買った。
そんな所のサンドイッチも珈琲も初めての類だったが、隣から嬉しそうに差し出されると食べないわけにはいかない。
味なんて判らなかったが「美味しい?」と聞かれれば「まぁ、それなりに」、なんて素っ気なく返すのが精一杯だった。




目的地に着いたのは9時。

類の想像通りシーコーミングをしている人が数人しかいなかった。
風がすこし強めだったから流石に泳いでいる連中はいなかったが、もう少ししたらサーフィンなどで楽しむ連中がくるはず。
それまでに終わらせないと、そう思ってつくしを海岸に連れて行った。


「うわぁー!こんな時期に海なんて初めてかも!」
「やっぱり風で少し寒いね。牧野、上着持って来ただろ?羽織っときな」

「・・・あ、忘れた・・・」
「えっ!持って来いって言ったじゃん!」

「あっはは!大丈夫だよ、寒くないよ」


寒いかどうかの問題じゃない。
風に揺れて身体のラインが丸わかりのブラウスが怖いだけ。他の男が見るかもしれないし。
それに少し日に当たると透けてしまう・・・その素材を海に選ぶかな!


心の中で呟く類の言葉はつくしには聞こえない。
急に上がったような気がする体温と速まる鼓動・・・すぐ傍で聞こえる波の音がもっと煽るようだった。

仕方なく自分が羽織っていた上着を脱いでつくしの傍に行き、無言でそれを差し出した。


「・・・え?これ・・・」
「ダメ、着ときな。風邪引いたら困るから」

「だってそんなに・・・」
「いいから!言っただろ?海風をずっと受けてたら身体が冷えるから」

「・・・ごめん、花沢類」
「いいって。じゃ、向こうに沢山あると思うから」


そう言うと類はつくしよりも先に海岸を歩き出した。
つくしは受け取った上着を暫く持ったまま類の背中を見つめていたが、唇を噛み締めながらそれに腕を通した。
そしてブカブカの上着を抱き締めるようにして類の後を追い掛けた。


可愛い服を選んだのに・・・似合わなかったのかな?
それとも張り切りすぎたから呆れてる?怒ってる・・・の?


つくしの心の声も類には届かなかった。

だから何となく立ち止まって沖の白波を見た。
早起きして頑張ったのに・・・その気持ちが空振りになった気分がして、光る海ですら自分を笑ってるように感じて知らず知らずのうちに眉が寄ってしまう。

その時に遠くから類の声が聞こえた。



「牧野!あった、桜貝の大群!来てみな?」

「・・・うん!待って、花沢類!」


なんて単純なんだろう・・・つくしはもう笑顔に戻って砂浜を走っていた。









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2019/07/16 (Tue) 12:19 | EDIT | REPLY |   

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