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plumeria

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波の音を横で聞きながら、つくしはしゃがみ込んで貝殻の山の中から形のいい桜貝を拾っていた。
類は自分の見付けたいヒメルリガイを、ポケットに手を突っ込んだまま目だけで探す・・・傍目には真剣にも見えない姿だったが本人は至って真面目だ。

時々海風が強く吹いてつくしのポニーテールを揺らしている。
その時、大きな波の音がしたらハッと顔をあげ海を確認する、そんなつくしを横目で見ながら類は潮流物の隙間で青く光るそれを探していた。


「見付かったぁ?花沢類」
「・・・ない」

「だから言ったじゃん!桜貝にしようよ、こんなに沢山あるよ?ほら、これなんかホントに白いからいいんじゃない?」
「・・・やだ」

「もーっ!頑固だなぁ・・・って、ヒメルリガイってどんなの?」
「綺麗な青だから目立つと思うんだけど。形はカタツムリだよ」

「カタツムリ?巻き貝なのね?」
「・・・うん」

「あっ!綺麗なシーグラス発見!よし、集めよう~っと!」
「・・・・・・」


類の探し物を一緒になって探してくれるのかと思えば、急にシーグラスを集め始めるつくしに類は思わず噴き出してしまった。
それを見て「何が可笑しいの?」なんて膨れっ面を見せ、つくしは新しいビニール袋を取り出した。

薄くて割れやすい桜貝と硝子破片のシーグラスを同じ袋に入れることは出来ない。
沢山集めた桜貝の袋は鞄に入れることも躊躇って、砂浜の上の方にある流木の上に置いた。そしてパタパタと走って戻って来た時に打ち上げられた貝殻を踏み荒らして類に叱られた。
「ヒメルリガイがあったらどうするのさ!」・・・急に立ち止まって自分の足元を確認するつくしはまるで子供のようだった。


「ごめ~ん!早く見付けなよ、そのヒメルリガイ!怖くて海岸を歩けないよ~!」
「1センチぐらいしかないんだし数も少ないから判らないって・・・・・・あっ・・・・・・あった!!」

「ホント?!どれどれ?!」
「これ・・・ほら、ここ!」

「・・・うわ、綺麗だね!」
「・・・ん、牧野、袋とって?」


類の長い指がその小さなヒメルリガイを慎重に拾い上げる。この貝もまた極薄の殻だから少しの圧で欠けてしまう。
見付けたのは欠けの無い綺麗な形をしたもので、これはかなりレアだった。
つくしも類の慎重な動きに思わず息を止めて袋を広げ、青い貝がポトンと入れられるまで緊張していた。

1つだけ特別待遇のようなヒメルリガイも桜貝を置いた場所に持って行き、そこでやっと思いっきり砂浜を歩けるようになったつくしは、類の所まで走って戻ってハイタッチをした。


「良かったね!」
「うん。でも1つしか無いから作る時に失敗しないでね?」

「・・・・・・はっ!」
「くすっ・・・宜しく、デザイナーさん!」



そして今度は2人でしゃがみ込んでシーグラスを集めた。
シーグラスとは海に捨てられた空き瓶や硝子の割れた欠片が波にもまれ、岩や砂にさらされるうちに角が取れ、丸く削られた状態で砂浜に打ち上げられたもの。
1つとして同じものは無く、どれだけの年月を海の中で過ごし、何処の海のものかで変わってくる。


「変な話だと思うけどさ・・・人間が捨てたものが殆どなのに、シーグラスって長い間海を漂うじゃない?その間に海と月が持つ神秘の力を宿すって言われて、癒しの力があるとか願い事をすれば叶うとか言われるんだよ?」

「でもそれを信じたくなる色だよね。ほら、これなんて凄く綺麗な緑色だよ?」

「うわっ!ホント!花沢類にもこれで何か作ってあげようか?」
「作れるの?」

「うん!穴を開けて革紐でペンダントにするの。男の人でも似合うと思うよ?」


アクセサリーの話になると途端に力が入るつくしだった。




海岸に人が増えてきた。
また少し風が出てきて波が高くなったからサーフィンを愉しむ連中がやってきたようだ。

「そろそろ止めようか」、と類が声を掛けるとつくしもシーグラスを拾うのを止めて立ち上がった。
でもその顔は如何にも遊びたそうに波打ち際を見つめている。類の貸した上着がパタパタと音を立てるほどなのに我慢出来ない様子で海に向かって指をさした。

「少しだけ!少しだけ遊んでいい?」
「濡れるからダメだって」

「スニーカー脱いだら裸足だもん。そんなに寒くないよ?」
「急に大きな波が来たらどうすんの?俺は入らないよ」

「大丈夫だって!ちょっとだけね!」
「・・・もう、子供なんだから!」


つくしはシーグラスの入った袋を類に投げ渡し、急いでスニーカーを脱ぐと海に向かって走り出した・・・と、思ったら駆け足で戻って来て類の上着を脱いだ。
そしてそれも「ありがとう!」の声と共に類に返し、ブラウス1枚で再び海に向かって行った。


足首だけを海に浸けて波と戯れるつくし。
流木に腰掛けて、つくしの熱をまだ持ってる上着を羽織った類・・・少しだけつくしの香りがあるような気がして、自分の上着なのに落ち着かなかった。

そして軽やかに翻るブラウスが少し透けて身体のラインがくっきりと判ると、慌てて立ち上がって叫んだ。


「牧野!もう帰るからこっちにおいで!」
「・・・へ?!今、浸かったばかりだけど?」

「いいから早く!5月は紫外線が多いんだから日焼けするって!」
「・・・なんで慌ててるの?日焼け止め、一応してるよ?」

「・・・少し早いけどご飯食べに行くから!」
「はーい!今行く~!!」


戻って来る時にも背中からの光で細い身体が丸判り・・・。
もしかしたらわざとか?と類は真正面の彼女を見ることが出来なかった。

「帰るよ」と先に立ち上がって、まだスニーカーを履いてないつくしを置いて行くように歩きだし、「待って~!」の声に聞こえないフリをする。
早くこの鼓動を静めないと・・・そう思うのに意識は背中に向かう。


そして諦めたように立ち止まって振り向くと、無邪気な笑顔のつくしが自分に向かって走ってくる。
それを両手で抱き留める事が出来るのなら・・・一瞬上着のポケットから出しそうになった手を止めて、類は黙ってつくしが来るのを待った。





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