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plumeria

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「いっただっきま~す!!」
「・・・・・・・・・」

お昼には少し早い時間だったが、既に混雑しているファミレスに二人は来ていた。
普段こんな店には入らない類はそのザワザワした店内に落ち着かず、逆につくしはファミレスでさえ久しぶりの贅沢で上機嫌。
頼んだのはつくしが「和風日替わり定食」、類が「洋風日替わりランチ」なのだが、そう言うメニューですら類は初めてで、トレイに乗せられた皿を見て暫く固まっていた。


「どうしたの?食べないの?花沢類」
「いや・・・うん、食べる」

「好き嫌いあるの?交換しようか?」
「・・・交換?」

「うん!花沢類が苦手な物と、私の定食の中で花沢類が食べられるものと交換!そうしたら大丈夫でしょ?」
「あぁ、そう言う交換が出来るんだ・・・」

「あはは!した事なんてないんでしょ?どれが無理なの?」
「・・・って言うか牧野が欲しいんじゃないの」

「あっ!バレた?」


ケラケラと笑うつくしの笑顔はいつもの通りで、海で見掛けた大人っぽいものではなかった。
それにホッとして漸く類も手を動かすことが出来て、お互いの皿をつつき合いながらの昼食が始まった。


ただ類は今日のつくしに少しだけ苦しさも感じとっていた。
いつもと違う服装もアクセサリーも自分の為なら嬉しいが、それだけではなくいつもより余計にはしゃぐ感じがする。何か嫌なことがあってそれを忘れたいのだろうか、そんな風に見えた。


その時、ふと思い出した。
以前つくしが友達の事だと言って話した悩み事・・・もしかしたら今日だったのか?

そうだとしても聞くわけにもいかない。
「花沢類のエビ、ちょうだい?」なんて言うつくしに「じゃあ牧野の豆腐と交換ね」と調子を合わせた。


時々スマホで何かを確認してるのは、あいつからの不意な呼び出しを恐れているのか?
いや、それを恐れるのなら既に恋人じゃない。それなのにどうしてその関係を続けているんだろう。

いっその事あいつの手を離してしまえばいいのに・・・そうしたら・・・


この矛盾した感情をつくしにぶつけるのには躊躇いがあった。

類もまた自分の「居場所」が見付からない気がしていたから。
何処から聞こえてくる「このままで本当に良いのか?」と言う声に惑わされるうちは誰も守ることは出来ない・・・そう思っていた。


「・・・・・・・・・はぁ」
「どうかした?朝が早かったから疲れた?」

「え?あっ、ごめん!何でもない・・・明日のバイト、結構大変な所だからやだなぁって。それだけだよ」
「そうなんだ。今日はもう予定無いの?」

「うん、ないよ。帰ったら花沢類のネックレスのデザイン考えて、晩ご飯食べたら寝るだけ!」
「もう晩ご飯考えてるの?クスッ、あんたらしいね。じゃ、もう1箇所付き合ってくれる?」

「へっ?もう1箇所?」
「うん、多分あんたは好きだと思う・・・俺の癒やしの場所」


類の癒やしの場所を自分が好きになる・・・そう言われたつくしは途端に頬を染めて視線を類から外した。

今の言葉の「は」が「が」だったら・・・瞬間そんな事を考えてしまったのだ。
ドキドキしながら慌てて飲んだ味噌汁を思わず噴き出しそうになり、目の前に座っている端正な顔を歪ませ、今度は漬物と一緒に自分の舌を噛み箸を落とす動揺ぶり。

「落ち着いて食べな?」とまるで親が子供に言う台詞を出され、ヒリヒリする口の中を水で冷やすつくしだった。




ファミレスを出て車を走らせること30分。
類は桜の頃に訪れた水族館につくしを連れて来た。

ここに母以外の人間と来るのは初めて・・・そして「ルイ」に初めて紹介する女性だ。

沢山あるアトラクションや施設を通り過ぎ、類はすぐにイルカのいるアーチ状の水槽に向かった。
水槽上部には屋根がないから今日みたいに晴れている日には陽光がキラキラと降り注ぎ、雨の日には水面に無数の波紋が広がる。その日によって変わる水の色と模様、そしてその中を泳ぐイルカたち。

類が簡単に水槽の説明をしている時、つくしはアクリルガラスにへばりついて水の向こう側の空を見つめていた。


「うわぁ!凄い・・・初めて来た、こんな水族館!」
「・・・何処にいるんだろう。いつもはすぐに来るのに」

「え?誰か知り合いがいるの?」
「うん、友達・・・寝てるのかな」

「は?こんな時間から寝てるの?流石花沢類の友達だねぇ~!」
「違うよ、この水槽の中に・・・」




「あら!ルイ、今日はそんな所に隠れているの?」

不意に2人の後ろで聞こえた声、それはここのイルカ調教師の瑞希だった。
類は自分の説明を中断させた事への苛立ちの表情を浮かべたが、つくしは類の事を呼び捨てにする女性が現れたと思ってドキッとした。


もしかしてこの人が友達と言いながら実は恋人?
この人に会わせたいためにここに連れて来られたの?

類を呼び捨てにするのはあの3人と藤堂静ぐらいしか知らないつくしは焦った。
それに目の前の女性はどう見ても自分より大人で美しい・・・ツナギ姿で手に持っているのはバケツにブラシだが、綺麗に髪を結い上げ自然なメイクは好感度抜群。
羨ましいほど可愛らしい声に優しそうな笑顔・・・そして瑞希の向こう側には1頭のイルカが泳いでいた。


「あぁ、あんな所に居た」
「・・・あの人なの?」

「うん、同じ名前なんだ。カマイルカのルイ。可愛いでしょ?」

「えっ!イルカなの?」
「そうだよ。誰だと思ったの?」


面白そうに笑う彼女とその向こうのイルカ。
それを目を細めて見ている類がどっちを見ているのか、つくしは全然判っていなかった。






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