FC2ブログ

plumeria

plumeria

「くすっ、もしかしたらヤキモチかしら?類君が誰かを連れて来たことはないものね」

瑞希がそう言うと後ろを泳ぐイルカが何処かに泳いで逃げてしまった。
それを目で追った類は大きなドーム型の水槽の上層部を見て・・・そしてまたニッコリした。

つくしにはどれがルイなのか区別なんて付くはずもなく、数頭泳ぐイルカと隣の類と、目の先に居る瑞希を交互に見ていた。


「うふふ、初めまして。ここのイルカ調教師の真田瑞希って言います。類君の・・・彼女さん?」

少し離れて立っていた瑞希が2人に近寄り、彼女は愛くるしい笑顔でつくしに話し掛けた。
近くまで来ると余計に自分とは違う大人っぽい容貌に、つくしは同性ながらドキドキして顔が火照った。しかも「彼女さん」と言われ、それに類がどう反応するのかを見るのが怖くて慌てて類の背中に隠れた。

それをくすっ、と笑って見下ろす類・・・自分の右腕を持っているつくしを細めた目で見つめた。

「えっ!い、いいえ!かの、彼女なんて・・・ねぇ、花沢類!」

でもその表情がつくしのこの言葉を聞いて少しだけ曇ってしまう。
確かにそうだけど、ここで瑞希にあっさり否定の言葉を出さなくてもいいのに・・・と視線を正面に戻した。


「そうなの?とてもお似合いだと思ったのに。類君がそんなに穏やかな顔するんだもの、特別な人かと思っちゃった」

「特別?!えっと・・・はい!特別仲のいい友達です!ねっ、花沢類」
「・・・うん」

「あらら、今日はお友達が居るのにご機嫌斜めなの?だからルイが来ないのかもよ?あの子は人の心を読んじゃうから」


そう言って瑞希も水槽内をぐるっと見回したら、今度は類の真後ろにルイは来ていた。
そして何度も身体を回転させながら「話そうよ」のアピール、それを見て類がアクリルガラスに手を当てるとその指が触れている所にキスするみたいに近寄って来る。
つくしもその行動に驚いて目の前に進んで行った。

その瞬間に逃げていくルイ・・・つくしの事を警戒してるようだ。


「うそっ!私はダメなの?」
「そうじゃないよ。あの子、人見知りなんだ。俺もここに来て仲良くなるまでああだったから」

「そうなんだ!じゃあ私も何回か来たら近寄ってくれるかな?」
「くすっ、きっともうすぐここに来ると思うよ」

「花沢類、判るの?」
「まぁね・・・友達だから」


やがて美しく光る水槽の泡の中、類が言ったようにルイは戻って来た。
そして同じようにガラスに近寄ると類の目の高さで動きを止めた。ちょっとだけ前後に身体を動かしながら、類が手を伸ばすとそこにタッチして、その後は嬉しそうに身体を回転させた。

「この子は俺の友達・・・仲良くしてやって?」
「・・・・・・よ、宜しく・・・」

「牧野、手を出してごらん?」
「・・・うん!」


こんなやり取りの最中に瑞希はクスクス笑いながら自分の持ち場に戻って行った。
それをチラッと見てしまったつくしは次に類の表情を確認・・・類が瑞希を目で追わない事にホッとしていた。その後は視線を水槽に移し、類と同じようにガラスに手を当てた。

その動きでルイは再び移動したが、今度は2人の視界から消えることなく戻って来てつくしの方にも目を向けている。それがまるでイルカから面接でも受けているかのような気分になって可笑しくなった。


「おいで、ルイ!」


つくしがイルカを呼んだのに、自分の名前を呼び捨てにされたと思った類はビクッとした。
つくしが自分を呼ぶ「花沢類フルネーム」は彼女にしてみれば既に渾名となっている。その声で名前だけ呼ばれると胸の奥がむず痒くなって、ガラスの向こうの友人から視線を外した。

ルイのほうはつくしに興味を持ったのか、自分から視線を外した類の前から移動してつくしの前に・・・そしてつくしが指を当てている所をチョンチョンと突くような動きを見せた。

「うわぁ!ねぇ、花沢類、見た?私の指に来てくれたよ?!」
「・・・え?もう?」

「うん!ほらほら・・・可愛いなぁ!このガラスがもどかしいねぇ~」
「・・・くすっ、うん判る」

「ルイ、ルイ・・・あはっ!来た来た!」
「・・・・・・・・・」


自分の時には3回目じゃなかったっけ・・・こうやって近寄ってくれたの。
すぐに心を許したかのようなルイに少しだけジェラシーを感じながら類は楽しそうに笑うつくしを見つめていた。

随分長いことここでルイとの会話を楽しんでから、2人は水族館を後にした。



「あー!面白かった、って言うか可愛かったぁ!」
「良かった。牧野は好きだろうと思ったんだよね」

「うん、大好き!でも本当は・・・少し悲しくなる時もあるよ。水族館とか動物園とか」
「・・・悲しい?」


「だってあんな狭い所は嫌でしょう?本当はもっと広い海で暮らす子だもん。自分で選んであそこに住んでるわけじゃないだろうから、そう思うと人間の都合で可哀想だなって・・・本当の居場所で伸び伸び暮らせたらいいのにねって思うのよ。
キリンも象もライオンも・・・檻の中の動物は窮屈だろうなっていつも思うな」


両手を高く上げて空を仰ぐつくし・・・「自由っていいよね!」の言葉は類の胸を熱くさせた。


♪~♪~♪・・・


「牧野、電話・・・」
「・・・えっ?」

「自分の鞄の中で鳴ってるのに気が付かなかったの?」
「あっ、ホントだ!空ばっかり見てたから・・・あはは!は・・・」

駐車場に向かう途中で鳴ったつくしのスマホ。
その画面を見た瞬間、つくしの笑顔が消えた。


類がそれを見逃す筈がない・・・掛けてきたのが誰なのか、その名前を聞かなくても判ってしまった。





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡
関連記事
Posted by

Comments 1

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/31 (Wed) 18:43 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply