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「・・・電話、でないの?」
「あっ、う、うん・・・ちょっとごめん、お母さんからだわ」

つくしは類から遠離りながら通話ボタンをタップした。鳴り始めてから随分経ってる・・・いきなり怒鳴らないだろうかとドキドキしながらスマホを耳に当てた。
振り向いたら類は自分に背中を向けている。目の前で話さない自分の事をおかしく思わないだろうかとそっちの方が気になったが、呼吸を整えて声を出した。


「も、もしもし・・・あっちゃん?」
『・・・休憩じゃなかった?まだ仕事中か?』

そのひと言で少しホッとした。取り敢えず落ち着いているようだと感じられたから。
もう1度仙道には気付かれないように深呼吸して、つくしも何事もなかったかのように返事をした。


「うん、休憩中でね、もう少ししたら戻るけど。あっちゃんは?ご両親、一緒なの?」
『あぁ。丁度今、説教されてた所・・・俺が1人だからさ』

「えっ?あぁ・・・そうなんだ。ごめんね・・・」
『あはは!冗談だよ。でも説教は本当なんだ。彼女の都合を無理に変えるなんてとんでもない!ってさ。昨日はごめんな?だからさ、夜に食事行かないか?』

「ご両親、東京に泊まるの?」
『あぁ、俺も知らないうちにホテルを予約してたらしい。気を遣ったんだよ、俺の部屋に泊まっちゃ悪いってね・・・』

「・・・そうなんだ。うん・・・場所は何処?」
『店は同じだ。赤坂の・・・』


その店の名前を聞きながらつくしは真下に出来た自分の影を見ていた。
何故か顔があげられない・・・せっかくこれまで楽しかったのに、そう思う自分が凄く嫌だった。

その時・・・


『ご来場のお客様のお呼び出しを致します』

水族館の館内放送が流れてつくしは驚いてスマホを手で覆った。
今の声が仙道に聞かれなかっただろうか・・・この後に全然知らない人の名前が放送されたが、何処にあるかも判らないスピーカーをキョロキョロと探し、放送が終わってから急いでスマホを耳に当てた。

『・・・なんだ?今の声・・・今日は喫茶店だったよな?』
「え?う、うん!今ね、お店の外を何かの宣伝カーが走ったの。何を言ったのか判らなかったけど・・・う、五月蠅かったわ」

『あぁ、休憩室じゃなくて外に出てたのか?』
「は?そ、そうだね。だって話し声がお店に聞こえちゃイヤだからさ・・・ははは!私、時々声が大きいから!」

『確かに!じゃあ夕方6時に店で待ってる。1人で来れるか?俺は両親に東京観光させるからさ』
「うん、大丈夫だよ。じゃあね・・・」


心臓がバクバクと五月蠅い・・・それよりも汗が止まらない。
切ったはずのスマホを持つ手が今頃震えて、咄嗟についた嘘に怯えていた。


類はつくしの会話を聞かないように意識を空に向けていた。
だがさっきの館内放送で狼狽えたつくしの表情を見ればその理由が判る・・・ここに来ていることを知られたくないのだと思った。そしてやはり今日がその日だったんだと。

それなのに自分を選んでくれたのか・・・そう思ったら胸が締め付けられた。


もうこの感情を抑えることは出来ない。
さっきまで伝える事を躊躇していたのに、震えるつくしの背中を見ている類の中にひとつの決心が生まれた。


「・・・牧野、どうした?」
「えっ?あぁ・・・ごめんね、何でもないの。ははは、お母さんったらギックリ腰になったんだって!そんな事、今言われても困るから夕方に行くって・・・だから帰らなきゃ・・・」

「ん、判った。車に行こうか」
「うん、でも急がなくても大丈夫。時間はあるから」


つくしはその会話の最中も類の目を見ようとはしない。
自分が顔にすぐ出してしまうと知っているから・・・今の自分の顔を見られたくはなかった。
それを総て察してしまうから、類も何も聞かずに先に車に向かって歩き出す。つくしはその広い背中を見ながらトボトボとついていった。



行きと違って会話のない車内。
つくしはシートベルトに縋るように顔を乗せ、疲れて寝たフリをしていた。

運転席でハンドルを握る類はそれがつくしの演技だとすぐに判った。
鞄を抱き締めてる手に緊張感があるし、そういう時には緩んでしまう唇が固く結ばれているから。自分に「何も聞かないで」と訴えているような気がしたから黙って車を走らせた。


つくしのアパートに着いたのは午後4時。
「着いたよ」と声を掛けると下手くそな演技で目を覚まし、変なポーズで背伸びをするつくしに苦笑いだ。


「あっ!花沢類、忘れるところだった!」
「・・・なに?」

「これ、今日のお礼なの。昨日頑張ったんだよ?はい!」

「・・・・・・?」


つくしが鞄から出した小さな袋に入ったもの・・・類はそれを取り出すと自分の手の平に乗せた。
綺麗に編み込んであるブレスレット・・・マットな水色の石の名前は判らなかったが、水晶とアクアマリンは判った。それを指先で摘まんで太陽光に当てると、今朝見た海を思い出すかのようだ。

そしてつくしはもう一つ取り出して自分の手の平に乗せた。
一回り小さめの、石の色合いが少し違うだけの同じデザインのブレスレット。


「・・・作ってくれたの?」
「うん!これはね、ラリマーって言う石なの。ラリマーはね、心の奥にある怒りや嫉妬みたいなマイナス感情を鎮めてくれるんだって。花沢類にあるかどうかは知らないけどストレス軽減にも役立つらしいよ?
新しい環境への不安を取り除いて、自分で目標を見つけられる・・・あはは!自分の事かもね!」

「いや、凄く嬉しい。自分で目標を見付ける・・・うん、素敵だよね」

「でしょ?」


類はその場でブレスレットを付け、それを嬉しそうに触った。
つくしは「そんなに良いものじゃないよ?」と、逆に申し訳なさそうな顔になったが、このブレスレットは類の決心をさらに強くした。


新しい環境への不安を取り除いてくれる・・・つくしとなら出来るかもしれない。


「それじゃあね!ネックレス、楽しみにしててね!」

「・・・牧野!待って・・・」

「ん?どうした・・・・・・」


車を降りようとしたつくしを引き寄せ、次の瞬間には彼女を自分の両腕で抱き締めていた。





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2019/08/31 (Sat) 13:49 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/31 (Sat) 18:26 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/01 (Sun) 03:30 | EDIT | REPLY |   

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