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plumeria

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突然抱き締められたつくしは驚きのあまり身体が硬直した。
服越しに伝わる類の体温・・・それに背中に回った手の温かさと指先の力。

それをどう受け止めていいのか、つくしは頭が真っ白になった。そこに留まりたいと思った・・・このまま自分も彼を抱き締めたい、そう思った。

でも自分の恋人は仙道だ・・・・・・類は理解ある友人、そう思うことに決めたはず。
だから離れなくちゃ、とつくしはその言葉を出そうと唇を動かしたが声にはならなかった。


「・・・・・・・・・」
「・・・行くな」

「・・・・・・え?」
「もうバレてるよ・・・あんた、分かり易いから。来てるんだろ?あいつの親が・・・」

「・・・そんなんじゃ・・・」
「じゃあ俺が実家に連れて行ってあげる、そう言ったらどうするの?」


類は抱き締めていた手を緩め、つくしと顔を見合わせた。
その距離はいつもより凄く近い・・・類の瞳につくしの顔が映って見える程の距離で、今度は両肩に手を掛けていた。
つくしが慌てて下を向こうとしたのを「ちゃんと目を見て」、と小さく呟いて止める。

類の本気がつくしの心を揺さ振っていた。


「ギックリ腰なら動けないだろ?買い出しなら手伝うし、必要なら休日診療の医者に連れて行ってあげる。どうする?牧野」
「・・・それは・・・」

「言わないならそうするよ?」
「・・・・・・だめだよ。お母さん・・・元気だもん」



「・・・馬鹿だね」
「だって!・・・・・・だって、言いたくなかったんだもん!」

「部屋に入れてくれる?すこし話せる?」
「・・・・・・うん」


車を近くの路肩に停め、二人は一緒に車を降りた。
そして黙ったまま隣を並んで歩き、二人の間にはぎこちなさがあったが心の距離は縮まった、そんな空気があった。今更ながらお互いに照れているのか向けている顔は反対側・・・なのに手が触れあうほど歩調を合わせていた。

アパートの階段を上がって部屋の前に行くと今度はつくしの手が止まった。

朝、ドタバタしたから散らかってないかしら、そう思ったらすぐにドアが開けられない。
仙道のものなど置いてはいないが、見られたくない自分のものがそこら辺に投げ出されてないか・・・それを思い出そうにも思い出せず、つくしはドアノブに手を掛けたまま眉根を寄せて類を見上げた。


「・・・今度はどうしたの?」
「いや!その・・・少し待ってて?」

「くすっ、散らかしてるの?」
「朝ね、どうだったかなって・・・あの、見てくる!」

「いいのに・・・」


類をドアの外に立たせたまま慌てて部屋に入り、僅か5歩もあれば辿り着く部屋を確認。
そこには朝使った化粧品とアクセサリーのケース、それに置きっぱなしの珈琲カップ、脱いだ服は何処だ?と慌てて洗濯機に行けば、そこには見られてはヤバいものが丸見え。慌てて洗濯籠にバスタオルを掛けた!

そしてベッドのある部屋を覗いたらカーテンレールに下着が干されている。それは隠す所もないから取り外して部屋の隅にハンガーごと投げた!

これで良し・・・!そう思って玄関に行くと類はクスクス笑いながら半開きのドアを押さえて待っていた。


「凄い音だったね」
「はっ!いや、その・・・ははは!色々と・・・ね。えっと、スリッパもないんだけど、ど、どうぞ・・・」

「ん、ありがと」


もともと片付け上手のつくしの部屋は本人が気にするほど散らかってはいない。
類がこの部屋に入るのは初めてだったが、想像通り小綺麗でさっぱりした部屋だった。

それでも神経を集中させて仙道の存在を探してしまう。

だがここには男性の存在を感じさせるものは何もなかった。二人の写真があるのかと思ったがそれもない。仙道の服が置きっぱなしだったらどうしようかと思ったが、勿論それもなかった。
つくしが急いで片付けたものがそれだったんだろうか・・・少しはそれも考えたが、ネクタイや灰皿、ライターなどの小物もないのにはホッとした。

ふと視線を横に向けるとガラスの引き戸がある・・・その向こうに薄ら見えるのはベッドだろうか。



「珈琲ぐらいなら淹れられるから待っててね」

つくしのその声でハッと視線を戻し、頭の中から余計な光景を打ち消した。

数分で戻って来たつくしの手には自分用のマグカップと、一応来客用なのか綺麗な花柄の珈琲カップ。
それを真剣な表情で持って来てテーブルに置いた。


「・・・何時に待ち合わせ?」
「・・・6時・・・赤坂で」

「それ、行かないでほしいんだ。牧野も会いたいわけじゃない・・・そうだろ?」
「・・・・・・そうなんだけどね」

「前にも話したよね?話が進めば進むほど引き返す勇気が要る・・・だから気持ちが100%前向きじゃなかったら会わない方が賢明だって・・・会わせる目的がなんなのか、わかってるんだろ?」


つくしは自分のマグカップを抱えたまま俯いた。そしてチラッと時計を確認・・・類はその視線が気に入らなかった。
瞬間自分より仙道を意識された気がしたから。

あいつと会うための時間は気にしないで・・・自分との時間だけを考えて欲しい。
滅多に執着心を表に出さない類の心がつくしの時間を自分のものしたいと動き始めた・・・それに1番驚いているのは類本人かもしれない。

これまでは総てを胸の奥底に隠してしまう・・・そんな男だったのに。



「でも、何も言われてないのよ。だから会うだけで、それ以外の話は・・・」

「あいつは親の前で将来の話を切り出すつもりなんだと思う。牧野の性格を考えて、自分の両親の前で断わる勇気はないって思ってるんだ」


「・・・そんな」
「だから行かせない・・・牧野、俺はあんたをあの男に渡したくない」


もう綺麗な言葉で逃げたりはしない。
助言を与えるだけの友人で終わりたくない。

つくしの手からマグカップを奪い、類はその指を絡めた。


そしてもう片方の手でつくしの顔を引き寄せ、初めて唇を重ねた。






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2019/09/02 (Mon) 11:13 | EDIT | REPLY |   

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