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plumeria

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再び類の車に乗り、仙道が待つ店に向かう・・・状況はそうなのだがつくしには笑顔があった。

素直に口に出せなかった言葉を出せたから。
同じ言葉を類から聞くことが出来たから・・・それは不安でしかなかった自分の将来を、ほんの少し希望に変える事が出来たからなのかもしれない。


新たに抱えた問題は道明寺家の時と同じだろう。
それに打ち勝つ自信はまだ持てなかったが、全くあの世界を知らなかった子供の時とは違う。
情熱だけで押し切ろうとしたあの時とは何もかもが違うのだと・・・隣で同じように微笑む類を見ていた。


やがて車は仙道が両親を連れて来ている店の近くに着いた。
つくしは大きく深呼吸してまっすぐ前を見つめた。それは既に恋人に会いに行く目ではない・・・類はそれに苦笑いだった。

この時になってもやはり行かせたくない・・・拳を握り締めて唇を噛んでいるつくしの腕を掴み、そのまま車を出してしまいたいと言う衝動に駆られた。
つくしの気持ちが仙道に無いことを判っていても、自分以外の男が待つ店になど・・・それでもけじめを付けたいつくしの意思を尊重し、焦る気持ちを抑え込んだ。


「・・・じゃあ、行ってくるね」
「ん、気を付けて・・・」

「くすっ、すぐそこだよ?」
「それでも気を付けて・・・今のままの牧野で帰ってきてよ?」

「うん、大丈夫。今夜、ちゃんと連絡する・・・花沢類、寝ないで待っててね?」
「ん、待ってる」


この場面を誰かに見られても関係無い。類はつくしを引き寄せ軽くキスをした。
つくしもその後に類を抱き締め、そして車を降りた。

「先にここから帰って?店に入るところを見られたくないから」・・・運転席の真横まで来て苦しそうな笑顔でそう言うと、類は軽く頷いて車を発進させた。


類の白い車が他の車に混じって消えて行く・・・つくしはそれを見届けてから待ち合わせの店に向かった。




「いらっしゃいませ。お待ち合わせで御座いますか?」
「はい。仙道さんの・・・」

「畏まりました。こちらのお席で御座います」

そこは比較的新しい創作フレンチの店。
雑誌にも紹介されるような、予約も取りにくいと聞いた事があるお洒落な店だった。案内係の男性のマナーも完璧・・・店内の雰囲気にも少しばかり緊張してしまう。
それに何と言ってもこの格好だ・・・サマーセーターにワイドパンツ、如何にも遊び着と言った感じでこの店には全然合ってない。

ドレスコードがある店だったら入らずに済んだのに・・・案内係の後について行きながらそんな事を考えていた。



「お待ちのお客様をお連れ致しました」、そう言われて窓際の予約席に行くと、仙道の向かい側には上品な男性と女性がいる。
仙道は母親似なのだろうか、同じような目付きの、その年代にしては綺麗な夫人だった。
父親の方は恰幅も良く大らかな雰囲気の持ち主で、つくしは父親の方に安心感を覚えた。

案内係がその場を離れるとつくしの格好が丸見えになり、それまでにこやかだった仙道が一瞬で眉根を寄せた。
それをつくしも見逃さなかったが頑張って表情には出さず、両親に向かって頭を下げた。


「お待たせして申し訳ございませんでした」
「・・・いや、時間は過ぎてない。だがもう少し早めに来るものだ。間に合えばいいってもんじゃないだろ?」

「ごめんなさい。仕事が少し長引いたから」
「言い訳は聞きたくないな。いいから座れ、つくし」

「・・・はい。失礼します」


相変わらず上からの物言い・・・それを聞いても仙道の両親は自分の息子を窘めようともしなかった。むしろ母親の方は軽く頷いている。
自分の息子の言う事は正しい、そう言う意味なんだな、とつくしは小さく息を漏らした。



「・・・篤、紹介してちょうだい。その為に来たんだから」

「あぁ、彼女が電話で話していた牧野つくしさん。まだ英徳大学の学生なんだけどね、専攻は国文科。母さんと話が合うんじゃないかな」
「・・・初めまして。牧野つくしと申します」


母親と話が合う?・・・もしかしたらそれが私を選んだ理由だろうか。何故かそんな気がした。
顔をあげて仙道の母親を見た瞬間、これまでの彼の趣味や強要がこの人に繋がっているように感じた。

チラッと隣を見たら自分よりも母親を見て微笑んでいる。
この人の理想は目の前の人・・・私をこの人の好みに合わせようとしたのだろうか。

つくしは鳥肌が立った。
誰にも気付かれなかっただろうが喉がゴクッと鳴った。


母親が着ている服の色は仙道は好んでつくしに着せようとした色。
持っているブランドの鞄も同じメーカーのもので、アクセサリーはパール・・・自分の中のルールを崩さないと言う強い意志を感じる鋭い目。

仙道は誰よりも母親が好きなのだ・・・そう思えた。


「ふふふ、日本文学がお好きなのかしら?今度ゆっくりお話しがしたいわねぇ。なかなか可愛らしいお嬢さんじゃないの、篤。素敵な人を見付けたのね」

「あぁ、普段はもう少し大人っぽいんだけどね」
「・・・・・・ごめんなさい、仕事帰りだから」

「仕事・・・アルバイトだろ?そんな事よりこっちを気に掛けて欲しかったな・・・」
「・・・・・・・・・」


「まぁまぁ、いいじゃないか。まだ若いんだからそんな格好の方が楽なんだろう。それより食事を始めようじゃないか。予約困難な店を取ってくれたんだから」
「・・・そうね、いただきましょうか。篤の親孝行なんだものね」

「勿論!母さんが喜ぶ顔を見たかったからさ!」


「・・・・・・・・・・・・」


この服で来て正解だった・・・・・・つくしは逆にホッとしていた。





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