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plumeria

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途中で席を立つ事がどれだけ非礼な事かつくしは充分理解していた。
それでも、もう「良い彼女」に戻らなくてもいい・・・自分に正直に生きていこう、そう思ったら振り向くことなど考えなかった。

そしてビルを出て、街灯が煌めく通りを見ながら大きく息を吸い、ふぅーーっと吐いた。


「よし、アパートに帰って花沢類に電話しよっと!」

そう言って身体をバス停に向けた瞬間、その腕を後ろから思いっきり引っ張られて体勢を崩し、誰かの身体にぶつかった!
驚いて顔をあげるとそれは仙道・・・恐ろしい目をした仙道がつくしの腕を掴み、睨みつけていた。


「・・・あっちゃん!は、離して!」
「・・・どう言うつもりだ。何故あんな事を言った・・・?」

「何故って・・・じゃあ聞くけどどうして私がもう婚約者になってたの?私、いつあっちゃんにプロポーズされた?全然記憶にないけど?」
「両親に会わせるってのはそう言う意味だろう。それに言葉にしてなくても判ってただろ?俺はつくしを大事にしてたって・・・それは将来を考えたからだ!それぐらい判れよ!!」

「そんなのあっちゃんの中のルールでしょ?もう離して、人が見てるじゃん!」
「五月蠅い!いいから戻って母さんに謝れ!」


仙道がグイッと捻り上げた腕を、つくしは思いっきり振り解いた。そして仙道から数歩離れて向かい合った。

これまでなら大人しく言うことに従っただろう。
怒らせることに恐怖を感じ、自分はそれに立ち向かうだけの力はないと思っていた。
何処か自分を騙していたという思いはあったが気付かないフリをして、この男について行けば幸せになれると信じ込もうとしていた・・・この言葉を出してはいけないと数時間前まで思っていた。


「ごめん、あっちゃん。私・・・今はあっちゃんのこと、好きじゃない。息苦しいの・・・だからもう一緒に居られない」

「・・・なんだと?」

「あっちゃんの言葉や態度の中に私への愛情を感じなくなったの。それ、あっちゃんが一番判ってるんじゃないの?」

「どう言う意味だ?馬鹿な事を言うな・・・俺はつくしのことを愛してる。それに嘘はない・・・いいから来い!」
「いやああぁーっ!」

「馬鹿野郎!俺に恥をかかせるな!」


人が多く行き交う通路の真ん中で、仙道は大声を張り上げつくしの片腕を掴んだ。
そのまま向きを変えて店に入ろうとすると、今度は仙道の腕を誰かが掴み、その動きを封じた。

その腕を掴んだ力は女性ではない・・・仙道は驚いて振り向いた。



「・・・離せよ。怖がってるじゃん」

「・・・あんた、英徳の・・・」
「は、花沢類?!」


現れたのはさっきと同じ格好のままの類。
もう帰ったと思っていたつくしは類の姿に驚いたが同時に安堵の表情を浮かべた。逆に類はこれまでに無い鋭い目付きで仙道を睨みつけた。

つくしの腕を掴んでいた手を今度は類が捻り上げ、仙道はその手を離した。
自由になったら慌てて類の側に寄り、類はすぐに片手でつくしを自分の背中に回す・・・そして「大丈夫?」と一瞬だけ優しく微笑んだ。
つくしは声も出せずに頷いて類の上着を握り締め、その身体の向こうに見える険しい表情の仙道を見ていた。

通行人が何が起きたのかと振り返ったり、立ち止まったりする中で、類の手は仙道を捕らえたまま離さない。


「・・・あんたこそ手を離せ。関係無いだろう!」
「このまま黙って引き下がるなら離してやる。でも牧野を連れて行こうとするなら俺が相手になる・・・こんな街中で暴れる勇気があんの?」

「何故あんたが邪魔するんだ?・・・・・・まさか、そう言うことか?」
「牧野の為に言っとくけど、彼女はあんたを裏切った事はない。今日まではね」

「今日まで?」
「・・・今日であんたと会うのは最後だって事だ。それが牧野の気持ちだよ」

「・・・・・・俺から離れるなんて許さない。俺が別れを告げられる側になんて回ることは許されないんだよ!!」


仙道は方腕を掴まれたまま、もう片方の手を拳にして類に殴りかかった。
だがその拳は類の俊敏な動きで空を切り、類はつくしの身体を少しだけ押して「下がってろ!」と叫んだ。


仙道の腕を離した類も攻撃の姿勢に変わる。
そして空振りして体勢を崩した仙道の鳩尾に膝蹴りを喰らわせた。その鈍い音と共に仙道は腹を押さえて前のめりに倒れたが、すぐに起き上がって類に向かって行った。

普段は大人しく荒々しい姿など見せない類だが、本気になった時の動きは素早かった。
だがそれは悍馬のような激しさではなく、無駄がないシンプルなもの。派手な動きと狂気に満ちた表情で向かってくる仙道とは正反対で、冷静に動きを見極め最低限の動きで攻撃を交わした。


そして攻撃では容赦はない。
それも傍目には然程力を入れてないかのように見えるが、相手の急所近くを狙い、確実に動きを封じようというものだった。
だからといって心臓や内臓を襲うほどのこともない。瞬間腕を使えなくするために肩を攻撃し、神経が集中している脇の下を目掛けて足を蹴りあげた。


「ぐわっ・・・!!うっ・・・くそっ」

「まだやるの?これ以上続けたらあんた、店じゃなくて病院行きだよ」

「・・・なんなんだ、お前は!・・・・・・つくしは・・・やっと見つけた女なのに・・・くっ!」



やっと見つけた・・・その言葉は素直に聞き入れれば愛情溢れたものなのだろうが、今の仙道の表情と口調から、つくしには真逆の意味に聞こえた。


「あっちゃんが見付けたかったのはお母さんに似た・・・ううん、お母さんに合わせられる人なんでしょう?私ならお母さんの言う事に逆らわない・・・私ならあっちゃんの言う事に逆らわないから丁度いいと思ったのよね?
だからお母さんの好きな色や小物を私に持たせて、将来はお母さんのような女性にしたかったんでしょ?」

「・・・・・・・・・」

「でも、本当の私はそんなんじゃない・・・私はもっと我儘で自由で、もっと沢山の夢をみたいって思う人間なの。誰かの選んだ道じゃなくて、自分で選んだ道を思いっきり笑って歩きたいと思う人間なの。
だからあっちゃんとはもう無理・・・あなたの想い描く未来に私は似合わないし、私の未来にあっちゃんの姿は・・・見えなくなったの」


つくしは類の側に行き、その腕を掴んだ・・・それを苦しそうに眉を顰め、道路に踞って居る仙道が睨んでいた。





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2019/09/18 (Wed) 15:27 | EDIT | REPLY |   

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