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plumeria

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『あなたの想い描く未来に私は似合わないし、私の未来にあっちゃんの姿は・・・見えなくなったの』

つくしはこの言葉を出すのがこれまでずっと怖かった。
だが、いざ口に出してみるとそれまで胸に痞えていたものがなくなりすっきりとしていた。


仙道もプライドの高い男。
類に倒されたまま、いつまでも通路に座り込むことなど許されない。

まだ痛みは消えていないのに顔を歪めてフラフラと立ち上がり、何事もなかったかのように2人を睨んだ。
3人を取り囲んでいた通行人は「もう終わったのか」と言葉を漏らしながらつまらなさそうな表情で動き始め、物珍しそうに見る連中は居なくなった。


「・・・いつからだ。いつから俺を裏切っていた」

雑踏の中で仙道の低い声がつくしに届いた。

仙道に背中を向けていたつくしはゆっくりと振り向き、そして躊躇わずに答えた。その手は僅かに震えていたが、自分が掴んでいるのは類の腕・・・それなら勇気が出せる、そう思った。


「・・・いつからなんて答えられない。それを言うならあっちゃんと会う前から・・・だと思う」
「どう言う意味だ?」

「卑怯だって言っていいよ。あっちゃんと付き合おうと思った時、本当の自分から逃げようとしたの。あっちゃんを好きになれば自分の苦しみが消えそうだと思って・・・でもそうじゃなかった。
私の苦しみも消えなかったし、あっちゃんが考えてる理想の彼女と私は違うって気が付いたし、それを話し合うタイミングを逃していたの」
「好きでもないのに付き合ったって事か?」

「それはあっちゃんも同じでしょ?」


仙道の眉根が一層険しくなり、類はつくしを守るために1歩前に出た。
そして無言のままつくしを自分の背中で守り、仙道を睨みつけた。
類の背中から自分を哀れむような目で見るつくしに仙道は腸が煮えくり返ったが、これ以上店に残した両親を待たせるわけにもいかない。
何より、これ以上騒ぎを起こし類の攻撃を受けたら・・・それを思うと母親の前に痣を作った顔を晒すなど出来るわけがない。


「・・・ふん!つくしのような女が英徳のお坊ちゃまの相手になるとは思えないな。・・・いいだろう、少しの間自由時間をやる。その間によく考え直せ」

「牧野に自由を与えるなんて言い方はよせ。彼女はいつも自由・・・誰にも束縛はさせない」

「あんただってつくしを自分の物にしようとしてるんだろ?」

「牧野は物じゃない。俺は束縛するつもりはない・・・自由に飛べる羽を捥ぎ取る気なんて全くないけど?」

「・・・・・・俺はつくしの総てを知ってる。俺の使い古しで良ければくれてやる。でも、このままで済むと思うなよ!」
「あっちゃん!!やめて!」


仙道の汚い言葉は類の鎮まりかけていた感情を爆発させた。
この男がつくしに何もしてないとは思わなかったが絶対に想像したくなかった。それなのに「使い古し」と言う言葉でつくしを辱めたのは許せない・・・!

次の瞬間には類の拳が仙道の顔面を直撃!その手加減無しの一発は仙道の身体を通路の端まで飛ばした。
それだけでは足りない・・・類は地面に踞った仙道の胸ぐらを掴みあげ、もう1度至近距離から殴り付けた!

「・・・ぐふっ・・・うぅっ・・・!」

「もう止めて!花沢類!!」
「・・・許せない!あんたは下がってろ!」

「・・・もういい・・・もういいからやめて!!」

振り上げた類の腕を必死に止めるつくし。
それは仙道の痛みを考えてのことではない。類の手は人を殴るためのものじゃないと思ったからだった。そして同時に類の立場も頭に過ぎった。

これ以上類を傷付けてはいけない・・・つくしは必死に類を止めた。


「きゃああぁーっ!喧嘩よぉ!!」
「誰か倒されたぞ!!おい、大丈夫か!」

「・・・は、花沢類!」
「・・・・・・ん、わかった」


通行人の悲鳴で辺りが騒然とする中、類はつくしの手を取り早足にその場を去った。



どのぐらいの距離、つくしの手を握って走っただろう。
もう騒ぎ立てる人の声が聞こえなくなってから、類ははぁはぁと息を切らしながらガードレールに腰を降ろした。
つくしもまたゼイゼイいいながら類の横で自分の膝に手を当てて呼吸を整える。

暫く2人が同じ事をしていたら、どちらからともなくクスクス笑いだした。


「もうっ!意外と短気・・・花沢類ったら・・・はぁ、驚いた」
「あはは!自分でも驚いた・・・あんなの久しぶりでさ・・・今頃手が痛い・・・」

「そりゃそうでしょ!あれだけ力一杯殴って・・・怪我してない?」
「怪我はあいつでしょ?俺は平気・・・牧野の心に怪我はない?」

「私の心?くすっ・・・大丈夫だよ。類が居てくれたから・・・って言うか、ずっと待ってたの?」


ガードレールから立ち上がってつくしの傍に行き、類はそっとつくしを抱き締めた。
確かに腕の中にある温かさ・・・類はつくしの髪に顔を埋めた。


「店から出てくる時は多分1人だろうと思ったから・・・だから一緒に帰ろうと思っただけ。
今日はあんたを1人にさせたくなかった。どんな終わり方でもきっと・・・泣くと思ったから」

「・・・・・・ありがと・・・」

「車、すぐ近くに停めてる。行こうか」
「・・・うん!」



つくしはこの時初めて気が付いた。
赤くなっている類の指・・・自分の為に闘ってくれた指。

その少し熱を持っている手を握りしめ、つくしは類の横に並んで歩いた。






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2019/09/25 (Wed) 00:31 | EDIT | REPLY |   

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