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車に乗り込んでエンジンをかけ、すぐに発進させた類だったが、暫くしたらウインカーを出して路肩に止めて考え込んだ。
つくしはそんな類をみて何処か痛むのかと不安になり眉を顰める・・・でも、類の頭の中は全然違うことを考えていた。

つくしをアパートまで送るつもりだった。
そしてそのままつくしを・・・そんな想いがあったのに、あの部屋のベッドを仙道が・・・そう思うと戻る気にはなれない。


でもこのまま別れたくはない。
お互いの気持ちを確かめ合ったばかり・・・それをもっと強く感じたいと思うのは自然な感情だろう。


「・・・・・・・・・・・・」
「花沢類・・・どうかしたの?」

「・・・・・・・・・・・・」
「何処か痛めたの?やっぱり手が痛いの?」

「・・・あ、ごめん、そうじゃなくて・・・・・・あんた、明日も大学だっけ?」
「え?あぁ、うん!勿論だよ」

「・・・・・・じゃあ・・・1回帰ろうか」
「・・・1回?」


再び車を発進させ、今度は少しばかり笑みを浮かべて運転する。
つくしはそんな類に驚きながらも助手席のシートに埋もれ、これまで緊張していた身体と心を解していた。そして目を閉じてさっきの類を思い出す・・・。
自分の為に闘ってくれた、普段と違う類の動き・・・初めて見る激しい怒りは海で見た穏やかな表情とは違って男らしかった。


瞼の裏にその姿を想い描くと再び上がってくる身体の熱。
つくしは今、この時間が止まらずに流れていくのが残念で堪らなかった。


そう考えている時に限って道は渋滞もせず、車はスムーズに2人をアパートまで運んでしまうもの。
防犯灯に照らされたオンボロのアパートが忌々しくつくしの目には映る・・・でも、仕方がない。そのぼんやりした灯りの下に停まった車の中で「はぁ・・・」と深いため息をついて俯いた。
そして「色々ありがとう」と淋しげに告げ、車から降りようとするつくし。類はハンドルを握ったまま助手席に顔を向け、「大学に行く支度をしてきて」と言った。


「え?どういう事?」
「そう言う事。場所を変えたいだけ」

「・・・・・・えっ!」
「それとも・・・このまま帰りたい?」

「・・・そうじゃないけど・・・」
「くすっ、いいから取っておいで」

「・・・・・・うん!」


途端に勢いが良くなる足は早送りした動画みたいに階段を駆け上がり、数秒後その部屋に電気を灯した。それを見てすぐに電話したのはリザーブしている部屋があるホテル。そこに今から行くことを伝え、自宅には報告しないように頼んだ。

それが終わるともう1件、とある店に電話をしてある事を頼んだ。
それは明日の朝の事・・・直接大学に行くなら当然で、そういう気が回る自分に類自身が驚いていた。


部屋の電気は僅か1分で消えて、大きな鞄を持ったつくしが頬を赤く染めて戻って来た。
チョンチョンと助手席を指さすと恥ずかしそうな顔のままぐるっと回って、さっきまで座っていた席に身体を沈め、持って来た荷物を胸に抱えて顔を埋める。
類はそれを見てクスクス笑い、そのままが安心するならいいか・・・と車をアパートの前から移動させた。



今度は2人共が何も話さない。
静かなエンジン音だけが耳に届き、それよりも自分達の鼓動の方が五月蠅い・・・それはつくしも類も同じだった。

やがて着いたホテルの地下駐車場・・・そこで降りてつくしを車に待たせて1人でフロントに向かい、カードキーを受け取ると再び駐車場に戻った。
そして今度はつくしを連れて直通のエレベーターで最上階に向かう。
こうすることで誰にも2人が一緒に居るところを見られない・・・そう説明すると微妙な表情のつくしだった。


「別に隠したい訳じゃないんだ。ただどうしても騒ぎたいヤツが出てくるから・・・それだけだから」
「うん、気にしない。私も急に色々言われるのはイヤだから・・・」

「大丈夫、もしも何かが起きても俺が守る、そう言っただろ?」
「ん・・・信じる」


エレベーターに乗り込むと、そこには最上階のボタンしかなくて誰も途中で入ってくることはない。
類は静かにつくしを抱き寄せ、2人だけの空間を楽しむかのように自分の胸に押し付けその温かさを感じていた。つくしもまた荷物を床に落として両手で類の背中を抱き締める。

お互いの鼓動を聞き比べてるかのようにピッタリと寄り添い、そして部屋まで待ちきれずにキスをする。


微かな振動が最上階に着いたことを知らせると、つくしは慌てて類から飛び退き、床に落とした荷物を拾った。
それを見て類はまたクスクス笑い、「誰も居ないから」と真っ赤になってるつくしの腕から荷物を奪った。それをひょいっと自分の肩に掛け、エレベーターを降りて部屋に向かった。


「・・・・・・重たい鞄。いつもこんなの持ってるの?」
「うん!だって家でも勉強しなくちゃだもん。特待生の辛いところよね~」

「・・・じゃあまだ英徳に居るの?」
「えっ?・・・あぁ、進路の話ね。うん・・・まだ悩んでるよ」

「そっか・・・。うん、よく考えて決めな。俺の考えは今でも変わってないから。あんたの夢を応援してる」
「・・・ありがと!」


そんな会話をしているうちに着いてしまった類の部屋・・・ドア横のセンサーにカードキーを翳し、ドアを開けると先につくしに入るように促した。
気付かれないようにゴクリと唾を飲み込み、つくしが恐る恐るそこに入ろうとした瞬間、後ろからちょんと背中を突かれてガクンと膝が崩れた。


「もーっ!何するの?危ないじゃない!」
「だって凄く遅いからさ。いくら俺が急かさない性格でも部屋ぐらい素直に入ってもらわないと・・・」

「そ、そんなに遅かった?」
「うん、亀の方が早いぐらい」

「ひどっ!そんな訳ないじゃ・・・・・・」


つくしの言葉が終わらないうちに後ろから抱き締めた類・・・やっと誰にも邪魔されずに2人きりになれた安心感で、その黒髪に埋めた唇から大きな溜息が漏れた。
それを感じたつくしは驚きすぎて身体が硬直したが、手だけは自然と類の腕に重ねた。

自分の首筋に掛かる息・・・途端に上がる自分の体温。仙道には感じた事のない熱に、つくしの胸は早鐘を打った。


「牧野・・・言ってよ」
「え?・・・何を?」

「まだ聞いてない・・・はっきり言って?俺の事、どう思ってんの?」
「・・・い、言わなかったっけ?」

「言ってない。俺、待ってたんだから」


顔が見えない類の子供みたいな言葉・・・それが可笑しくてクスッと笑うと、類の腕の力が強まった。
「早く・・・」なんて彼らしくない台詞が今はすごく嬉しい。

つくしは類に身体を預け、その両腕を抱き締めて囁いた。


「花沢類のこと、ずっと前から好きだった・・・苦しいほど好きだったの」





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大変お待たせしました。
「Substitute」(身代わりの意)の続きを本日より公開します。

くどくて申し訳ないのですが、三人称は苦手でして、時間が掛かるので1話が短いです。
そして再びの長編です。どうぞ宜しくお願いします。


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Comments 4

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2020/01/15 (Wed) 08:05 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/15 (Wed) 08:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

あはは💦そうなんです~、私なんです~💦
変な事をしたばかりにこんな公開の仕方で申し訳ありません。

気長にお付き合いいただけたら嬉しいです。
(そういう本人がこれまでの話を忘れています・・・ははは!)

2020/01/15 (Wed) 10:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 待ってました!

いちご様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

大変お待たせしました💦

久しぶりなのにこんな場面だったとは(笑)
と、自分で驚きました。

そうだった・・・いい場面で書けなくなったんだ・・・と、秋の記憶が蘇り・・・。
三人称でラブラブしたシーンを書こうとしてもなかなか上手く行かなくて断念したんだった・・・。

・・・・・・・・・。


何とか頑張って書き上げたいと思います(笑)
どうぞこれからも宜しくお願いいたします。

2020/01/15 (Wed) 10:41 | EDIT | REPLY |   

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