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plumeria

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その日のうちに休暇願いを出し、それに反対する母さんの小言を無視してマンションに戻った。
やはりつくしの過去から調べる方が早く成瀬に辿り着く・・・そんな気がしてならなかった。


すぐにでも新潟の村上市に行こうと調べていたら、インターホンが鳴り、そこに映っていたのは総二郎・・・ロックを解除して中に入れたら数分後に玄関のチャイムが鳴った。
急いでドアを開けると俺の勢いに驚いて「どうしたんだ?」と目を丸くした。


「ごめん、少し焦ってて。入れよ」
「あ?あぁ、なんか知らねぇけど急に来て悪かったな」

「いや、いい。ちょうど話があったから」
「話・・・牧野の事か?」

「・・・今日、成瀬に連れられて花沢に来たんだ」
「は?わざわざ会社にか!」

「あぁ、幸せそうな顔してね」


リビングに入ったら俺が調べていたパソコンの画面を見て、何故か少し驚いていた。
「酒なら好きなの飲んでくれ」、そう言うと「いや、バイクだから」と冷蔵庫からジンジャーエールを持って来て、そいつを直飲みしていた。


「どうして新潟行きを調べてるんだ?出張・・・じゃねぇよな?」
「ん、調べたいことがあって村上市に行こうと思って」

「村上・・・?北の方だな」
「総二郎の話から聞くよ。何か判った?」

「判ったって言うか、後援会の婆さんから少しだけ成瀬の情報もらったからさ。どうせなら顔でも見ながらと思って電話にしなかっただけだ。実はな・・・」


総二郎の話が始まった。
その時だけはパソコンを見ずに、自分も同じものを冷蔵庫から持って来て向かい合わせに座った。

後援会の老婦人から聞いた話は、成瀬社長の妻、バーバラが20年近く前に社長の浮気について愚痴を漏らしに来たと言うものだった。
その老婦人はその歳にしては珍しく英語が堪能で、何処かでバーバラと知り合ってからは友好関係にあったらしい。その時も誰にも言えないと言って、泣き付いて来たんだそうだ。


「なんでも社長がバーバラと結婚する前後に何処かの田舎に赴任していたらしいんだけど、その時に女が出来たらしい。その女が社長が東京に戻った後に追い掛けて来て、暫く不倫関係にあったって言うんだ。
それで子供が出来て、社長に知らせずに出産・・・数年後にその女が病死したからって、子供を引き取る話になって大喧嘩したんだってさ」
「それが柊祐?」

「じゃね?ちょうど歳が合うと思うんだよな・・・婆さんもよく覚えてないって言うんだけど、もう小学生ぐらいの男の子だったらしいから」
「20年近く前で小学生・・・確かに合うな」

「バーバラも子供が欲しかったのに出来なくて、それでもまだ諦めて無かった時に隠し子だろ?だからショックで大泣きして大変だったらしいぜ」

「・・・それで認知しなかったから社長には子供がいないって事?」
「多分な。ただ書類上は成瀬になってないけど、どうやら社長はその子を自分の息子だと名乗ることを認めたらしいんだ。だから成瀬って言ってるけど、本当は名字が違うんじゃないか?」


本当は成瀬じゃない・・・そして妻の死後も柊祐を成瀬にはしていない。
何故だ?大反対のバーバラが亡くなったのなら、その後でも良かったんじゃないのか?

じゃあ本当は柊祐はなんて言う名前なんだ?

まさか・・・?


「総二郎、子供って1人か知ってる?」
「は?婆さんは男1人って言ってたぞ?」

「・・・じゃあ違うのか」
「どうした?」

「ん、進に会って話を聞いたんだけど・・・」


今度は進と真由美から聞いた話を総二郎に聞かせた。

牧野を育てた新潟の親戚は実は進も知らない他人で、その人の事を牧野の叔父も話したがらないこと。牧野は真由美に「有栖川という家で女の子と暮らしていた」と話していたこと。
今朝、あきらの家で調べてもらい、新潟の村上市に一軒だけ「有栖川」と言う名字の家があり、そこが東京で以前不動産関係の会社を経営していてかなりの資産を持っていることが判ったと・・・。


「有栖川か・・・すげぇ名字だな」
「全国でも凄く少ないんだ。でも牧野が「有栖川」って言ったことと、進がそれに近い名前を聞いたことがあるって言うから間違いないと思う。牧野は全然知らない他人の家に連れて行かれて、そこで女の子と暮らしたんだ。
だから一瞬柊祐に姉妹がいれば・・・って考えたんだけど」

「でも、それなら柊祐だってその家に居るだろ。牧野が女の子と住んでたって言うなら別じゃね?」

「・・・そうだな。だけど気になるから村上市に行って、牧野の子供の時の事を調べたいんだ。何かが繋がるかもしれない・・・そんな気がするから」

「それじゃ明後日にしようぜ?俺もちょうど新潟に行くからさ」

「総二郎が?」


総二郎は新潟の新発田で講演をするらしく、それが偶然にも明後日・・・だからそこまで一緒に行くことにした。

今度は俺から今日の報告・・・総二郎の反応が少し怖かった。




***********************




柊祐と何処かに出掛けての帰り道、あの日を思い出すような山道で気が狂いそうなほど興奮してパニックを起こした。
そして有栖川のお屋敷に着いた途端発熱・・・すぐに森田さんが呼ばれた。


「・・・そこまで高くはないですね。37、5度。どうですか?何処か痛みますか?」
「いいえ、何処も痛くはないけど頭が重くて・・・」

「疲れたのでしょうね。お腹は?痛くない?」
「はい、痛くはないです・・・でも、どうして病院に行かないの?私、それが心配で・・・」

「それは私に言われても困るんですけどね・・・悪阻はどう?まだ酷いですか?」
「えぇ、まだ時々吐きそうになります。帰りたい・・・東京に、彼の所に帰りたい・・・」


森田さんが何処まで知ってるのかは知らないけど、私がここに監禁されていることは気が付いてるはず。それなのに協力してくれそうな雰囲気が無いのは気になった。
それでもこの人しか私の身体を診てくれない・・・だから感情をぶつけることは出来なかった。


「最近、ご隠居様も具合が悪いのですよ。だから私もしょっちゅう来ますから、何かあったら言ってね」
「お爺様が?」

「えぇ、昨日も発作をね。随分弱っておられるから・・・」


そういえば最近顔を見ていない。
謎だらけで花沢を憎んでるというお爺様だけど、私を育ててくれた事には変わりない。

熱が下がったらお見舞いに行こう・・・そんな事を考えていたらまた聞こえてくるあの音・・・。


チリン・・・・・・チリン・・・チリン・・・

           チリン・・・チリン・・・




また私の意識が遠のく・・・・・・。
誰だろう・・・私によく似た怖い顔の人が睨んでる気がする。


あなたは・・・・・・誰?



チリン・・・・・・チリン・・・チリン・・・




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