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plumeria

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総二郎と新潟行きの話を済ませたら、今度は今日の出来事の報告。
また頭の中に昼間の2人が浮かんできて、心臓をえぐり取られるような感覚・・・思わず震えが来た俺を総二郎が「大丈夫か?」と気遣った。


「どうした?成瀬、何しに来たんだ?その事だろ?」
「・・・・・・・・・」

「なんだよ・・・これ以上すげぇ出来事でもあったのか?」

「ん、驚くと・・・思うけど」
「何言ってきたんだ?いいから話せ、類」


「つくし・・・妊娠してるらしい」

「・・・・・・は?」

「妊娠3ヶ月だって柊祐が言ったんだ。花沢の近くまで産婦人科を探しに来たって・・・」
「ちょ、ちょっと待て!」


総二郎が手を出して俺の言葉を遮った。
そして俺の目を凝視して、口を開けたまま固まった・・・想像通りの反応だ。いや、これが司でもあきらでも同じだろう。

信じられる訳がないんだ。つくしが・・・あいつの子供を身籠もるなんて。


「どういう事だ、類!」
「でもあいつの子供だとは信じてない。本当につくしが妊娠してるなら俺の子供だと思う」

「でも3ヶ月って言ったら・・・」
「そんなの見ただけじゃ判らないし、病院の話をしてたけど俺が聞いたわけじゃない。柊祐がいくらでも誤魔化せる範囲だ。それに今日もつくしに何も触らせなかった。あいつ、ずっと自分の腹に手を当てて、ソファーにも珈琲カップにも手を出さなかった。つまり指紋を残さないため・・・そう思ったんだ」

「・・・じゃあ、やっぱり」

「そうすることでつくし本人だと言ってるようなものだけど、妊婦にどんな影響があるか判らないから変な薬品は使わなかった・・・って思った。そして柊祐も妊娠は予想外だったんじゃない?」

「何か計画を立てていたけど変更せざるをえなかった・・・ってか?」

「・・・良く判らないけど、態と幸せそうな演技をして、それを見せる為だけに現れた・・・そう感じたんだ。
でも妊娠してるなら時間が無い。だからどんな事でもいいからつくしや成瀬、有栖川に関する情報が欲しい。俺も含めて何処かで絶対に繋がってるはずだから」


つくしの妊娠・・・今はそれが凄く嬉しい。

社で聞いた時はショックを受けたけど、何があっても、どれだけ記憶をすり替えられてもつくしが俺以外の男を受け入れるとは思えないから・・・。
あんなに恐ろしい目で俺を見ても、何処かで助けを求めてるつくしが居る・・・そんな気がする。


だから産まれてくるのは俺の子供だ。
柊祐の元でなんて育てさせる訳にはいかない・・・その子を抱くのは俺の腕だけだ。
一刻も早く総てを暴いて、子供が産まれてくる準備をつくしと2人でしたい。それに彼女だって初めてのこと・・・絶対に不安になってるはずだから早く安心させてやりたい。それは俺にしか出来ない事だから。


総二郎も「そんじゃ急がねぇとな!」なんて戯けるように言葉を出したけど、玄関で見送る時には「俺も一緒に闘ってやる」・・・そう言って帰っていった。



**



次の日、夕方の飛行機で新潟に入り、その日は新潟市内に泊まることにした。
総二郎は新潟支部の連中との会食が予定されていたから空港で別れ、俺は1人でホテルに向かった。


その部屋でもずっと成瀬や有栖川と言うキーワードでネット検索をして、新たな情報がないかを調べてみたけど、目新しいものはなかった。
柊祐が俺に言ったバイオガスプラントの建設プロジェクト・・・強いていえばこれが成瀬コーポレーションのニュースとしてアップされていたぐらいだ。

有栖川に至っては何も見つけられない。
それでも時間を忘れて調べ続けた。



気が付いたらベッドじゃなくてパソコンの前で転た寝をしたまま朝を迎えていた。
東京よりも少し気温が低い朝・・・ゾクッとする空気の中で薄明るい窓の外に目をやった。
今日は新しい何かが見付かるだろうか・・・それが俺をつくしに近づけてくれるだろうか、と考えながら上着を手に取って部屋を出た。

それから総二郎に会い、簡単な朝食を済ませたらすぐに西門が用意していた車に乗り込んだ。


「何時に終わるんだっけ?」
「講演は10時に始まって11時半には終わる。本当はその後に飯を言われてたけど断わったから、終わったらこの車で村上に行くわ」

「じゃあ俺は新発田からレンタカーで先に行って、片岡に聞いた住所を探す」
「だな。順調に行けば午後1時にはそこで会えるな」

「ん・・・」
「1人で行動するな。何があるか判らないから俺が行くのを待っとけよ」

「判った」



でも、総二郎が来るまでもなかった。

総二郎と別れて村上市に行った俺が向かった先・・・片岡に聞いた住所には誰も居なかった。
何度確かめてもそこが有栖川の自宅住所なのに、今にも崩れ落ちそうな古びた日本家屋があって、門には立ち入り禁止の立て看板が打ち付けられている。

どう見てもそこに人が住んでいるとは思えなかった。

近所に住む人に聞いても、もう何年も前からこの状態で誰も居ないと言われ、有栖川の移転先についても知ってる人間は居なかった。
誰か古くからこの土地に住んでいる人はいないかと聞けば、1人の年老いた女性を紹介されたが、既に認知症の症状があるらしく会話にはならなかった。


呆然と佇む門の前・・・でも、屋敷の大きさは相当なものだ。
ここに人が住んで居た時ならかなりの資産家だったというのは間違いないのかもしれない。

よく見たら閉ざされた門の内側に、「有栖川」と微かに読める表札が転がっていた。
伸びすぎた草に荒れ果てた建物と割れた窓硝子・・・それに荒らされたような庭には、昔は手入れしたと思われる木が朽ちていた。


せっかく有栖川に辿り着いたと思ったのに・・・後から来た総二郎も、この屋敷を見て呆然としていた。


「・・・類、ここって海が近いよな?」
「海?あぁ・・・みたいだね」

「牧野の両親って・・・最後に見掛けられたのって海じゃなかったか?」
「・・・そういえばそんな事を進が言ってたけど・・・まさか?」

「調べてみようぜ」


西門の車をここで返し、今度は俺のレンタカーで海に向かった。
運転は総二郎・・・俺がガッカリした顔していたから、仕事終わりで疲れてるのにハンドルを握ってくれた。そして向かったのは海水浴場みたいな砂浜じゃなくて崖のある場所。
時々車を停めて、道行く人に「事件」があったかどうかを聞いて回った。

でも「そんな事はなかった」との答えばかりでなんの情報もない。
それはある意味ではいいことなんだけど、だんだん焦りから苛つき始めた。気が付いたら拳を固く握って自分の膝を打っている。総二郎はそんな俺を見ても何も言わなかった。


「お!また人がいた・・・停めるぞ」
「・・・ん」

俺達が走ってる道の反対側の歩道を歩く老夫婦が目に止まり、総二郎が車を停めて話し掛けた。


「すみません!もう20年近く前なんだけど、この辺で身投げ騒動なんてあったか知ってます?」

随分と変な質問・・・そう思ったけど、意外にもこの老夫婦は顔を見合わせ何かを話していた。
その様子を見て、今度は俺達が顔を見合わせ、急いで車から降りた。


もしかしたら、何か判るのかもしれない。




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