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plumeria

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新潟から帰った次の日、母さんが出張のために不在なのを確認してから自宅に戻った。
話があったのは加代・・・この花沢家に母さんよりも前から居るのは加代と田村だけだけど、この手の話は男性よりも女性の方が勘が鋭いから。


「お帰りなさいませ、類様。少しは食べられるようになりましたか?」
「いや、そうでもないけど大丈夫だから」

「それでしたら今日はどうしてもお食事をしていただきます。胃に優しいものを準備しますからダイニングに行きましょう。そうじゃないと加代は何もお聞きいたしませんよ?」

「・・・ん、判った」
「はい、すぐに支度をします!」


本当は自分の食事なんてどうでもいい。
それでも加代の必死な目を見たら従うしかなかった。

準備されたのはこの家にしては珍しく和食。とても男の食事の量とは思えない程しか出されなかった。
沢山並べても逆効果だと思ったんだろう。確かにそれは当たってて、これだけだから食べられた・・・そう言えば加代は嬉しそうだった。


食事を済ませてから加代を俺の部屋に呼び、そこでこれまでの話を聞かせた。
母さんから少しは聞いてるのかと思ったのに全く知らなくて、つくしが俺以外の男と一緒に居ると言えば驚きのあまり身体を震わせていた。


「そんなっ・・・つくし様が類様を裏切って?」
「いや、そうじゃないと思う。手口は判らないけど、そいつがつくしの意識操作をしてると思うんだ」

「は?なんですか。それは・・・」
「ん・・・そうだな、簡単に言えば別の人間に仕立てられてるって感じかな。花沢つくしだって事を忘れさせてるってこと」

「そんな馬鹿な事がある訳が・・・!」
「判るよ、誰だって信じないよね。でも本当なんだ・・・」


信じられないと言って立ち竦む加代を椅子に座らせ、つくしの事以外も話した。
この事件のターゲットはつくしじゃなくて俺だと思うこと、花沢に対する憎しみのようなものを感じること・・・そしてもしかしたら父さんの過去が発端かもしれないこと。


「旦那様の過去・・・?」
「そう・・・この前のパーティーに出席したがらなかったと聞いたんだけど、父さんが成瀬と何かあったのか・・・ってこと。会社としては取引がないんだから個人的な関わりがあったか知らない?」

「個人的な事なんて存じ上げませんよ?成瀬様・・・そのようなお名前に聞き覚えはありませんわ」
「・・・そうか。じゃあ・・・父さんが母さんと知り合う前に誰か付き合ってた女性が居たとか知ってる?」

「奥様と知り合う前・・・ですか?それは・・・」


加代が俺から視線を外した。
何か知ってるのかもしれない・・・困ったような表情で眉根を寄せて、膝の上の手がエプロンを握り締めた。思い出そうとしているのか首を捻って口元に手が伸びる・・・何度かそんな仕草を繰り返したら、俺に視線を戻した。

そして言葉にしようとしては口籠もる。それを見て「誰にも言わないから」、そう言えばやっと肩に入っていた力を抜いて言葉を出した。


「何処の誰かは知らないのですが、旦那様はお好きな方がおられたようです。
それはおそらく遊びではなく本気だったと私は思うんですよ。その頃に奥様ではないご縁談があったのですが、その方の事を何も聞かないうちにお断りされて、大旦那様に叱られておいででした。
私はその頃は新人でしたけれど大旦那様のお世話係だったので、たまたまお部屋に居た時に大喧嘩を始められた事がありますわ」

「大喧嘩?父さんがお爺様と?」

「えぇ、その時に大旦那様が『そんな田舎者との事は金で解決しろ!』なんて仰って、それに対して『絶対に別れたりしませんから』と言い返されて。でも、すぐに大旦那様が嫌がらせのように旦那様をフランスにやっておしまいになって・・・お戻りになったら奥様との縁談が用意されていたのですわ」


父さんに恋人が居た・・・まさか、それが柊祐の?
両親の結婚時期や父さんのフランス赴任を考えたら、ちょうど柊祐が生まれた頃と重なる。でも柊祐は成瀬に認知を求めてるから父さんとは関係ないと考えるべきなのか・・・。
それとも、もし柊祐が父さんの子供だったら俺を憎む気持ちが生まれてもおかしくないのか・・・?


「その相手のこと、加代は何も知らないの?」

「えぇ、私はその頃は旦那様とお話なんてしませんから存じ上げません。
知ってると言えば・・・どうやら1人暮らしで生活に困って居たんじゃないかと思うんですよ。色々と家具や電化製品を揃えて差し上げてると聞いた事があって、それが大旦那様と大奥様に知られたらマズいことになるって当時の先輩達が話してましたから・・・」

「生活に困ってる・・・・・」


成瀬社長にも田舎から追ってきた恋人が居た・・・。

柊祐の出自が判らない以上総ては推測・・・もし父さんが成瀬を避ける理由がこれだとしたら、同時期にその女性が成瀬社長と父さんの2人と交際してたって事になるんだろうか。
そして妊娠した・・・これが全部当たっていたとしたら、どっちの子供か・・・って事だけど。

「子供」という言葉が知らず知らずのうちに口から出ていたみたいだ。
加代が慌てたように手を振り、俺の想像を訂正した。


「あの!旦那様には隠し子なんていないと思いますよ?」
「えっ?」

「大旦那様がいつも口煩く旦那様に言ってたんです。『余所で勝手に子供など作るなよ、それは悲劇でしかないんだから』と。旦那様も大人になってまで親からそんな事をお説教されて随分と嫌そうでしたわ。よく怒って『そんな事は判っています。軽はずみな事はいたしませんよ』って言い返されてました。
1度私の前でも『実はそういう事は1度きりしかなくて、その時もちゃんと避妊したんだ』って言われまして、私もなんとお答えしたらいいのかと悩みましたもの」


1度きりしかそういう関係になかった、そしてちゃんと避妊した・・・可能性としてはゼロじゃないけど。


「まぁ、父さんらしいよね・・・真面目な人だから」

「えぇ、私もそう思いますわ。そこでお子様が生まれても花沢に入れてもらえないと判っておいでですもの」


やっぱり父さんの子供じゃなさそうだ。

じゃあどうして成瀬を避けてるんだ?
直接聞くしか無いのかもしれないけど、あの人が真実を口にするかどうかは判らない。

また調べ直し・・・・・・加代には今日の事を母さんに言わないようにと念押しして、その日は自宅に泊まった。



それから数週間、なんの進展もなく毎日が過ぎていき、つくしが妊娠を知らせてきてから1ヶ月半が過ぎた。




********************




「お腹が目立ってきましたね。もうそろそろ胎動が判りますか?もう5ヶ月目の後半かしら。悪阻も治まりましたか?」
「・・・・・・えぇ、吐き気は治まりました」

「そう。だからといって食べ過ぎないようにね。お庭を散歩したりして運動不足にならないように・・・」
「それよりも病院は?!どうして連れて行ってくれないの?!」


森田さんに当たっても仕方ないって判ってるけど、誰も私の話を聞いてくれないから今日も大声を出した。
八つ当たりして投げた膝掛けを黙って拾ってテーブルに置いて、森田さんはいつも冷静だ。
まるで感情を何処かに置いてきたみたい・・・看護師さんだから、こんな患者の1人や2人、慣れっこなのかもしれないけど私はイライラして仕方なかった。

お腹は大きくなってきたから赤ちゃんは順調に育ってるんだと思うけど、検診に行ってない事が不安で不安で・・・。


ドラマで観るようなエコー写真だって見た事がない。
「これが心臓ですよ」なんてお医者さんの言葉を聞いて、類と一緒にその成長を見るのが夢だったのに・・・!


このまま本当に彼の居ないところで産むんだろうか・・・そう考えたらゾッとした。ただでさえ怖いのに、側に類が居なくて産めるんだろうか。
産まれてすぐに抱いてくれるのは彼しかいないのに、まさか柊祐がこの子を抱く気なの?

そんなの嫌だ・・・!絶対に嫌!!


「もう1度私からも病院の検診を頼んでみます。あまり心配しないで・・・おそらく今は大丈夫よ。じゃあ採血しましょうか、お母さんの健康状態もみないとね」

「・・・ごめんなさい」

「いえ、気持ちは判るわ。普通の状態の妊婦さんだって初めての出産は怖いものですから」

本当に気持ちが判ってるのかさえ疑わしい口調で、森田さんは私の血液を採っていく。そのあとは淡々と後片付けをして、冷たく微笑んで出ていった。

窓から彼女が乗った車が出ていくと門番さんが大きな鉄の門を閉める・・・それを見てからベッドに倒れ込んだ。



柊祐の復讐ってどうなってるんだろう。

私が妊娠したからなのかしら・・・ここに来た時に復讐に協力するように言われたけど、実際何もしていない・・・彼が動いてる様子も私には判らない。

じゃあ花沢は・・・類は無事なのかしら。
花沢物産にトラブルは無いのかしら・・・類はすっかり元通りだろうか。


そんな事を考えていたら・・・ポコン!とお腹に違和感があった!


「え?今のって・・・もしかしたら?」

慌ててお腹に手を置くと、そこにまた・・・ポコン!と振動が伝わってきた・・・!


お腹の赤ちゃんが蹴ったんだ・・・そう思ったら今度は嬉しくて涙が出た。

「元気出せ、頑張れ」って言ってくれたみたい。
その後何度も伝えてくる「応援」・・・両手でお腹を抱えて「ありがとう」って呟いた。





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