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plumeria

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少し動かしただけでこの激痛・・・!よく考えたら正座が出来るのは最大5分だったのに、今のお点前だけで15分ぐらい座ってた!
だから足の指を1ミリ動かしただけでビリビリと・・・っ!

それを見て西門さんが「どうでもいいが茶室で転けるなっ!」って小さい声で言うから、痺れが取れるのを引き攣った笑顔で待っていた。だってまだお客さんが見てるんだもの、ここで悲鳴なんてあげられない。
そして何とか立てるようになったら見学者に一礼して蹌踉けながら茶席を降り、今度は巾着袋を2つ持って草履のまま小走りで会場を出た。


「何処に行ったんだろう・・・向こうの会場?それとも・・・」

会場の外にもう草薙さんの姿は無いし、隣の会場は能の公演中で閉めきられてる。じゃあロビーに降りたんだろうかと、急いでエレベーターに・・・って思ったら暫く来そうになかったから、慌てて階段を駆け下りた。
こういう時の着物はホントに不便!一段飛ばしで降りられないんだもんっ!

ロビーに降りてからもグルッと見渡したけど彼女の姿は見えなかった。お友達と一緒って言ってたから、まだ会場の何処かに居たのかしら?でも、確かに出ていったのは見たのに・・・。


「まだホテルの中なのかな・・・えーと、ピンクのスーツの人・・・!何処に・・・あっ、居た!」


やっと見つけた草薙さんはもうホテルのエントランスに出ていて、タクシーに乗ろうとしていた。
今度はそこに向かって草履で猛ダッシュ!少しはしたない格好だったけど、どうしてもこれを渡したかったから・・・!


「草薙さまぁ~!!待って、乗らないでぇ~~!」

そう叫んだら気が付いてくれて、タクシーに乗ろうと腰まで屈めていたのに振り向いてくれた!そして次に待ってる人にタクシーを譲って、その場で待ってくれた。
良かったぁ~って近づいた時にはもうクタクタ・・・着物の前側が少し乱れて、絶対に西門さんに怒られると覚悟した。


「・・・まだ用があるの?ちゃんとお客を演じたでしょう?あれじゃあ満足しなかったとでも言うの?!」
「はぁはぁ、いえ・・・そうじゃなくて・・・はぁ、苦し!」

「本当にあなた、西門の人なの?着物着てそんなに走る人なんて見たこと無いわ。そんな姿を余所の国で見せるなんて恥ずかしい事ですよ?!美和子さんったら躾がなってないわねぇ~!」

「はぁはぁ、ごめんなさい・・・でも、家元夫人のせいじゃないです。私、まだ西門に入って数ヶ月だから・・・はぁ、落ち着いた!」


会場で見せたような怖い顔に戻っていた草薙さん・・・この人の前に巾着袋を出して「これ、お土産です!」って言うと、キョトンとした顔でそれを受け取ってくれた。
何度もひっくり返したり、紐に着いた和風ビーズを見たりして、なんだか小さい子供みたいな目に変わった。


「これが今年の西門の・・・あら、いつもの風呂敷や扇子じゃ無いのね。こんなのを選ぶなんて意外だわ・・・あの美和子さんがねぇ~」

「あっ、いいえ!これは私と西門さん・・・若宗匠で決めたんです。可愛いでしょ?使用人さん達で業務終了後に手作業したんですよ?」

「えっ?これを作ったの?」
「はい!200個、頑張って作りました。えっと・・・1番最後のが仕上がったのはここに来る5日前かな?
うふふ、間に合って良かったです。リバーシブルなのでひっくり返してもいいんです。中に抹茶のセットがありますから、是非ご自宅で飲んでみて下さいね」

「・・・・・・・・・」


あれ?・・・なんで黙っちゃうの?なんか変な事、言ったっけ?

草薙さんは二種類の巾着袋を手に持って、凄く懐かしそうに眺めていた。
ピンク色の桜流水と黄緑色の花手毬・・・1つを解いて中を見て「くすっ」と笑って抹茶セットを見ていた。

その時はとっても穏やかな顔・・・その表情の方が今日のスーツに似合ってて、凄く綺麗に見えた。


「どうもありがとう。今日は色々なブースでこういうものを貰ったけど、これが1番温かいわね・・・」
「ホントですか?じゃあ良かったです。夜中に頑張った甲斐があります。こちらこそありがとうございました!」

「あなたはどう言う立場でここに来ているの?」
「私ですか?あはは!実は若宗匠の秘書になったのが最近で、その前までは普通の会社員です。だからお茶もまた数回しか点てたことないんです。えへへ、ごめんなさい、草薙様」

「・・・ぷっ!そうだったの?おかしいと思ったわ。あれだけ手が震える亭主は見た事がなかったし、西門に入門してないなんて言うから」
「そういう訳で弟子じゃないんです。でも頑張ったんですよ?いつかまた西門にお立ち寄り下さいね?待ってますから」

「・・・仕方無いわね・・・じゃあ美和子さんに『宜しく』と伝えてちょうだい」
「はい!判りました」


草薙さんは今度は嬉しそうに巾着袋を抱えてタクシーに乗り込んだ。
私はそれを、教えてもらった立礼で見送った。


「あれ?草薙さん、お友達はいいのかしら?お1人で帰ったけど」


まぁ・・・いいか!



**



急いで会場にもどったら、もう3回目のデモンストレーションの準備に入ってて、西門さんは控え室に居るって言われた。
だからそこに戻って今の話をすると「そっか」のひと言。

元はと言えば、この人の悪戯から始まってるのに!
ぷぅっと膨れっ面をしたらクスクス笑って、テーブルの上の珈琲を飲んでた。


「で、そんなに着崩れたのか?」
「はっ!そう言えば思いっきり走ったんだった・・・。階段も一段飛ばしが出来ないからすっごい速さで駆け下りて・・・」

「アホか!着物でそんな事するなって!」
「大丈夫ですって!何処にも西門って書いてないんだから判りゃしませんよ」

「そうじゃねぇよ!また捻挫するだろうが、お前、ドジなんだから!」

「・・・・・・あ、はい・・・」


あぁ、そっちの心配?
それを聞いた瞬間にボッと顔が熱くなって、多分真っ赤になってる・・・!
それに西門さんが着崩れを直すからって私の目の前に立ったから、見上げた瞬間に心臓がバクンッ!っと鳴った!

ヤバいっ・・・またこの前の朝を思い出した!

目の前の漆黒の瞳が近づいてくる・・・まさか、この場で?なんて思った瞬間・・・


「ボケッとすんな。良く見せてみろ」
「ええっ!見せるって、なななな、何を?」

「何考えてんだ?着物の歪みだろうが」
「・・・あぁ、着物ね」


あぁ、驚いた。
良く見せてみろって・・・「脱げ」って言葉かと思った・・・。
いや、よく考えたら仕事中だっつーの!!馬鹿じゃないの?つくしっ・・・しっかりしろっ!


「あ~あ、こんなになるって・・・どんだけ足を広げたんだよっ!」
「そ、そんなには・・・でも、間に合わなかったらイケないと思って。こう言うのも一期一会って言うんでしょ?」

「まぁそうだけどよ・・・こりゃ帯から結び直しだな。時間、どうだ?」
「あと15分で始まります」

「余裕だな。帯解くからそのまま立っとけよ」
「・・・は、はい!」


ヤだな・・・汗かいてるのに西門さんがそんなに近づいてるなんて・・・って考えていたら、触れてもいないのに体温を感じるようでドキドキする。
着物越しに私の身体に当たる手にビクッとしたら「動くな!」って怒られるけど、それすらもバクバク!

チラッと下を見たら、後ろから回ってきた彼の手が帯を整えてる・・・それを触ってみたいって思ったりしたもんだから、妄想を吹き飛ばそうと首をブンブン振ったら「何してんだ?」って耳の真後ろから声が聞こえてゾクッとする。

マジで心臓が保たない・・・早く終わらないかしら。

やっと出てきた「よし、これでいいだろう」・・・その後で、最後に着物のラインを整えてもらった。


「・・・ありがとうございました。にし・・・若宗匠」
「待て、お前なんで今日は若宗匠なんだ?」

「え?だって・・・いや、そろそろ立場ってものをキチンとしなきゃって思っただけです・・・うん、それだけです」

「なんだ、立場って・・・」
「私、ただの秘書ですから」


せっかくドキドキしていたのに・・・私の心臓が大人しくなった。





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Comments 2

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2019/11/12 (Tue) 15:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

うふふ、巾着袋、なかなか役に立っておりますね♡
そしてつくしちゃんのそういう優しさが思わぬ副産物を産むのですよ♡

ただ、アメリカの一流ホテルで着物姿の女性が階段駆け下りたら目立つでしょうねぇ(笑)
きっと脛辺りは見えちゃったんじゃないでしょうか?

まだまだデモンストレーションは続きます!
あの人も来ますからねぇ~!お楽しみに~!

2019/11/12 (Tue) 22:19 | EDIT | REPLY |   

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